表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/283

第五十四話◆

第五十四話

 図書館での地下作業を終えて百合さんたちとともに校門をくぐる。友人と一緒に校門をくぐるとああ、青春だなぁと感じる年頃に僕も成長したようである。

「おい、お前!何してくれてんだよ、俺のダチに!」

 そして、お約束というか、なんと言うか……そこにはどこかで(具体的には洋一郎を撃沈させた男の残り)見かけた二人組の男が立っていた。これも、青春?

 しかし、僕らはそんなに暇ではないのだ。そういうわけで聞こえなかった……そうしてくれないかと無視したのだが相手は僕の肩を掴んできた。てっきり、百合さんに過去ぼこぼこにされた人たちかとも思ったのだがどうやら違うらしい。

 ここでアドバイスだがこういったものは先制攻撃を仕掛けて勢いで乗り切るのが最善であるといっておこう。卑怯?結構結構。拳で語り合うほど僕は腕力が強くない。

 右肩に置かれた相手の手をそのまま左手で掴み、身体ごと相手の後ろに持っていく。すると、相手がそういったことをしてくると想像していない限り対処するのは難しい。ああ、もちろん冗談なんかで友達にしちゃったらその人とは絶好になるかもしれないから気をつけるように。責任、持てませんから。



―――――――――



「霧之助、お前……意外と酷いやつなんだな〜」

「酷いも何も、百合さんより酷くないと思うヨ」

 僕、たまに思うんだけど女の子ってたまに怖いところがあるんだよね。今、僕に絡んできたもう一人の男子生徒は百合さんと雪ちゃんに文字通りぼこぼこに叩かれており、頭を下げている最中である。

「すみませんでしたっ!自分、まだ高校一年生で……」

「ん〜ん〜、わかったわかった。私は大体高校二年生だから年上を敬うように」

「はいっ!今後は気をつけます」

「よし、許してやるからお前のケータイ電話の番号を教えろ。今度また誰かにつるんでいるところを見つけたらかわいがってやるから」

 人はそれを許してやるとは言わないのではないだろうか?そう思いながらも路上で眠っているもう一人をどうしようかと思ったが目の前の坊主君に渡すことにした。

「ごめんね、僕忙しいんだ……それとさ、大体絡まれた理由もわかるから……これ以上僕に絡まないでよ」

「はいっ!先輩によくいっておきます!」

 そういって気絶した自分の先輩を背負って走っていった。意外と体力はあるほうなのかもしれない。



―――――――――



 校門で絡まれるだけでもサプライズなのにさらに家でもサプライズが待っていた。人生は驚きの連続だとか言ったりする人いるけど、そんなにサプライズ、いらないといいたい。両親が離婚してさらに再婚とか言われたらサプライズの連続だろうし。

「あのう、何であなたがここにいるんですか?」

 僕と悠子が住んでいるアパートの一室の前には東結さんが立っていたのである。うっすらとその顔に微笑をたたえながら。

「迷惑かとは思いましたが、お邪魔させていただくことにしました」

 そこまで迷惑ではないのだがこれから夕飯を作らなくてはいけない。

「……後に洋一郎と美月さんが来るかもしれませんがよろしいでしょうか?」

「え、ええ、まぁ……別にかまいませんけど……立ち話もなんですからどうぞ、上がってください」

 いつものように鍵を開ける。午後五時を過ぎたら防犯のため、悠子に鍵を掛けるように言っているのである。

「それでは、失礼しますね」

 制服のままでここまで来ているし、こんなときでも竹刀袋を欠かさず持っている。

 よかった、今日出かけに掃除しておいて……きっと、礼儀に厳しそうな人だから回りくどくそのことを責めたり(下手したら物理的に攻めたり)するに違いない。

 なんとなくだが、悠子がいたら一悶着ありそうな気もしたのだが珍しく悠子の姿はなかった。

「……何を安心なさっているんでしょうか?」

「え?ああ……気にしないでください」

 一瞬だが心を読まれたような気がしたが……そんなことできたらこの世を支配できるかもしれない。

ばかげた考えを捨ててお茶を出すことにするのだが……さて、この場合というか、相手のことを考えねばならない。

まず、和か洋か……これはまぁ、まず和のほうだろう。コーヒーとか紅茶を出しても大丈夫だろうが無難なほうを選ぶべきだ。そして、次は冷たい麦茶か熱い緑茶か……このアパート、暑いんだよねぇ……よって、前者を考慮すべきだとも思ったが暑い緑茶をチョイスすることにした。出すお茶で悩む。そんな、高校一年生の夏、終盤。

「粗茶ですが……」

「そんなに礼儀正しくしなくて結構ですよ。底が知れますから」

「……」

 見た目どおり、厳しい人である。というより、威圧感がありすぎて一緒にいるだけで心身ともに悪くなってしまいそうだ。

 お茶を出したのにお茶菓子がないことに気がついて慌てて探す。そういえば母さんから最中(もなかの漢字はこれでいいらしいが、中にはさいちゅうと読んじゃう人がいるかもしれない)を送られていたのを思い出した。四日ほど前のものだから大丈夫だろう。

 最中を出して様子を伺う……気分的にライオン、もしくは虎と同じ部屋にいて喰われないために一生懸命別の霜降り牛肉などでご機嫌をとっている感じだ。

「お気になさらず」

「……まぁ、お客様ですから」

 僕も熱い緑茶をすすることにする。その前に一つ、聞きたいことがあった。

「それで、今日はどういった用事で来たんですか?」

 緑茶を口に入れる。うん、適当にお茶っ葉を入れただけだが自分では満足できる具合だな……

「わたくし、この部屋の隣に引っ越してきたんです」



 ぶふ〜っ!!!



「………」

「あ、あぁっ!?すみませんっ!!!」

 やっちまった……以前もなんだかこんなコントみたいなことをしてしまった気がしないでもない。いやいや、今はそんなことを言っている場合ではない!急いで拭かねば!



ぴんぽ〜ん♪



 そしてまぁ、なんと間の悪いことだろうか?こんなときにどうやらお客様が追加されたようである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ