第五十二話◆
第五十二話
百合さんの過去の話をしたその後、東結さんから一つ言われた。
「……間山霧之助さんは実に変な人ですね」
「変な人……ですか?」
「ええ、洋一郎の話はすでに兄さんから聞いておりますから」
そういって壁にかけられている時計をちらりと見る。僕もその時計を追ってみたが、約束の時間よりすでに三十分以上経過しており、ケータイにも宮川姉妹からの連絡はない。何かあったのだろうかとそわそわしていると東結さんが立ち上がる。
「……時間に遅れるのはもってのほか、ですよ。間山霧之助さん、今日はもう引き上げてよろしいですよ」
「え、でも……」
有無を言わさぬ鋭い視線が僕へと向けられて、冷や汗が流れてくる。中学時代にいろいろと無茶をしたものだがその中でもトップクラスの危険さを持っていると僕の感が伝えてくる。
「わかりました。僕はもうこれで帰ります」
失礼しますといって出ようとすると、その手をつかまれる。
「……実は洋一郎から御礼をして欲しいと頼まれているのですよ」
「は?洋一郎から?お礼……ですか?」
この人が御礼というとなんだか別の意味を想像してしまう。バットを持って学校に向かったり、鉄パイプを持って学校に向かったり……お世話になった先生を探し回ったそんなの。
「先ほど、変な人といったのにも理由があります」
「どういった理由ですか?」
「……あなたは友人としては少しでしゃばりすぎた行動を取っている気がしてならないのですよ……まぁ、わたくし自体がこのようなことを貴方に言うのもでしゃばりすぎたことなのですけどね……少し、おせっかいなものですみませんね」
そういって頭を下げられるも、別に悪いことを相手がしたわけでもないので対応に困る。
「よく、僕もおせっかいだといわれます」
「……そのおせっかいがいずれ貴方の身に不幸を呼ぶかもしれません……実際、百合とかかわったばかりにわたくしのようなものと知り合いになったのですから」
「はぁ?そうなんですか?僕はそう思いませんけど?」
彼女が言っている意味がよくわからなかった。別に何かをされたわけでもないし、それこそ不幸だと感じたこともない。
東結さんは僕に近づき、何かをそっと握らせた。手を開けてみてみるとそれはメモの切れ端。
「……洋一郎から頼まれましたので仕方ありませんがそれにわたくしの携帯電話の番号とメールアドレスが書かれています」
「え?あの、何で……ですか?」
ふっと淡く笑う。それが何を意味するのかいまだよくわからなかったが……彼女は僕を図書館に残して去っていってしまった。ぼさっとそのメモの切れ端を眺めていると図書館の扉が開く音が聞こえてきて百合さんと雪ちゃんがやってきた。
「霧之助、何か面倒ごとに巻き込まれなかったか?」
百合さんが心配そうにそんなことを言ってくる。
「え?ああ、いや、別に何か面倒ごとには巻き込まれなか……ん〜ちょっとあったけど、それはどっちかというとあの人の面倒ごとかな」
今も校門前で悶絶しているのだろうか?
雪ちゃんも若干だが心配してくれているようだ。
「……まぁ、間山さんも何か言ったらわたしに言ってください。協力できることがあったら手伝いますから」
「ごめんね、ありがとう」
ま、どうせそんなことないはずだよといってみたものの、少しだけ、不安が残った。そして、その不安が見事に適中するのは家に帰ってからであったのだ。
曖昧のまま終わってしまった感が否めない宮川編その二。文章打っていて自分でもあれだった感が否めない宮川編その二。そして、多分この嫌な後味を変えてくれるであろうこの小説始まって最初の番外編。卑屈になっていても仕方がないので鬱蒼としたもやもやを取り除くためにバランスボールでドッジボールをやってみた今日この頃。何かの景品でもらったバランスボールは時として所有者に牙をむいて襲ってくる。どうせボールもらえるならドラゴンボールが欲しかった。小説書いてみようかな?なんて思っているかた、その考えはすばらしいです。何事にもチャレンジ!とかはいいません。基本後ろ向きな雨月ですが今後ともどうかよろしくお願いします。そして、今後の予定としましては悠の話をちょいちょい入れていこうと思っています。感想、評価ありましたらお願いしたいと思います。