第四十六話◆
第四十六話
あれからどのぐらい眠ったのかわからなかったが目を覚ますと着の身着のまま眠っていたことに気がついた。日付はお堂に止まってから帰ってきた次の日だ。そして時刻は夕方。隣では静かな寝息を立てながら丸まって悠子が眠っていた。
ぼーっとしながら立ち上がり、顔を洗ってくる。よし、そろそろ朝ごはんを、いや、晩御飯を作ることにしよう。
そんなときに僕のケータイ電話が鳴り始める。
「あヴぁ〜……ヴぁ……ぶぁ、あぁ〜…よし、寝起きの声じゃないな」
そんな相手のことを考慮しての行動のために四回ほど待たせておいてコールボタンを押す。ディスプレイに表示されていた文字は宮川百合。
ちなみに、百合さんからのコールは五回以内と定められていたりする。非常に短気な性格のために五回目で切れてしまうのだ。その後は嫌がらせか知らないが非通知からのワン切りが横行。相手の気が済むまで謎のワン切り魔はその行為を続けるのである。
「はい、もしもし?」
『霧之助か?明日、学校で掃除あるだろ?午前中だけの』
「ああ、そうだったね」
掃除のことを完璧に忘れていた。天気予報では晴れだといっていた気がするが……できれば雨が降って中止になってくれればいいなと思ったりする。
『それでさ、悪いんだけど終わった後もちょっと図書館のほうを手伝って欲しいんだ』
「図書館?」
そういえば図書館の管理人みたいなことを図書委員長はやらなくてはいけなかったのを思い出した。しかし、その分内申書には影響するために成績が変にアップするといううわさを聞いたことがある。
百合さんの話によるとどうやら地下の蔵書点検と簡単な掃除をしなくてはいけないらしい。午前中は普通にあってその後、委員会の仕事があるそうなのだ。ちなみに、僕はどの委員会にも属していない(じゃんけんで勝利をもぎとったためである)ので午後からは休みのために都合がよかった。
「わかったよ、帰りのHRが終わったら百合さんについていけばいいんだよね?」
『いや、それより先に私は図書館にいかなきゃいけない用事があるから自分で来てくれ。場所はわかってるよな?』
「うん、大丈夫」
じゃあ頼んだといわれてそのまま切られる。
電話が切れた後、晩御飯を作るための材料が冷蔵庫の中にはいっていなことに気づき、近くのスーパーまで行くことにした。
――――――――
スーパーからの帰りに洋一郎が通っている高校の制服を着た一人の女子生徒を見つけた。身長が高くて僕より頭一つ上。制服の上からでも彼女の胸が大きいことがわかるし、足もすらっとしていた。ショートカットの髪が風になびくことなく、こちらのほうに歩いてきていた。
それ以上見ることもなくそのまま横を通り過ぎていく。ふと、足を止めて後ろを振り返る。
「!?」
その人も立ち止まってこっちを見ていた。竹刀袋を肩にかけ、毅然とした態度だったがその瞳は柔和そうなものだ。優しそうだ、それが第一印象だったがその目と僕の目はしっかりと通じ合うように見詰め合っている状況だ。
「……」
「……」
なんだか気まずい雰囲気となってしまったために急いで前を見る。そのまま小走りで僕は逃げるようにして家へと帰り着いた。
今回からとうとう宮川編そのに!久しぶりの新キャラ登場によってどちらかというと宮川編でないような気がしないでもないです。書いていて後半部分から予想と違った展開に作者もあせりを覚えています!ま、実際に登場してくるのはもっと後のほうからなんですけどね。毎回毎回やっていますが今のところ一切感想とかもらえていない恒例のあれを、やりましょう。この宮川編そのにだけの感想をお待ちしております。感想がおありの方がいましたら評価欄、またはメッセージで雨月にお教えください。