第四十四話◆
第四十四話
期末テストも終わり怒涛の一学期もようやく終わりを迎えた。
そんな気の緩みが問題だったのかもしれない。
いつものように、家に帰って明日から夏休みだと浮かれているときに電話があった。
「はい、もしもし間山です」
『間山霧之助さんですね?妹さんが事故にあいました!急いで病院へきてください!』
くぐもった声がそう告げる。僕は携帯電話を落としてしまった。
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「意外と早かったわね、お兄さん」
「悠子……大丈夫だったの?」
病院の一室。相部屋だが六人収容可能な部屋なのに使用されているのは悠子のベットだけだった。そして、病院のベットが似合う悠子は儚げにこっちを見ている。
「まぁ、簡単にいうとひき逃げにあったのよ」
説明が簡単すぎる。
「ひき逃げ?」
「ええ、そう。ま、怪我はこの程度で済んでよかったわ……別に入院する必要もないし、大体あの電話したの私だから」
「え?」
頭の中が混乱しまくってもうめちゃくちゃである。
「もしかして、お兄さんは私が死んだとでも思った?」
「……悠子……あのな、一つだけ言わせてくれ」
「何?」
「そんないたずらしちゃいけませんっ!!!!」
その後、僕が看護師さんに怒られたのはいわずとも知れることだ。病院内では静かにしましょう。
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「はい、悠子口を開けて」
「え?意味わからないから」
悠子と話し合ったのだが帰省はせずにここにいることにした。ちょうど全治一ヶ月ぐらいの骨折でひびが入っている程度だそうだ。大事にならないことは本当によかったのだが早く犯人がつかまって欲しい。
利き手のほうがギブスで動かせないために悠子の世話を只今焼いている途中である。しかし、子ども扱いがされるのが嫌いなのかかたくなに口を開けていない。
「はい、あ〜ん♪」
「……お兄さん、絶対面白がってるよね?」
「んにゃ、そんなことないよ♪」
骨折には卵の殻を粉末にしてご飯にかけるといいと何かで読んだ気がする。そう、カルシウムだ。そういうわけで牛乳で作った杏仁豆腐や栄養満点のバナナと卵の殻をミキサーにかけて牛乳を入れ作ったバナナソフトドリンク(蜂蜜入り)にストローをさして口を開けさせて飲ませる。
「おいしい?」
「……んぐっ、んぐっ……まぁ、おいしいけど」
「そっか、それならよかった」
「あのね、お兄さん……」
「何?」
「そんなに世話を焼かなくてもいいから。スプーンとかを使えば料理も自分で食べられるわよ!」
声を荒げてそんなことを言う。
「ん〜?それならスプーンで掬いやすい奴を作らないといけないね?朝はシリアルにヨーグルト、牛乳にシフトしようか?あ、別にフォークだって大丈夫だよね?フォークだったら肉類とかも最初から切っておけばいけそうだし、パスタもいけるね……」
「……お兄さんの馬鹿」
「え?馬鹿?ん〜?ああ、スープ系もあるって事だね?スープ系、僕も好きだよ」
「何でそっちに思考が、いや、嗜好がいくのよっ!!」
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夏休みは特に何をするということもなく宿題をさっさと終わらせてしまったら本当に何もすることがなくなった。一日中悠子とともにテレビを見るか本を読むかお昼寝するかその程度。
夜はまれにある怖い番組を見てその日は悠子の添い寝をする程度。
意外なことに七月中は一度も猛や百合さん、悠に雪ちゃんそして母さんたちからも連絡なんて一切なかった。せみ時雨を一日部屋の中で聞いて過ごす夏休み。暑さで、ばててそのまま寝ているなんてこともまれにあり、治りが早かったのか、悠子のギブス姿も軽いものとなっていった。
そして八月に突入。リビングにしかクーラーが設置されていないため(地球温暖化防止、ついでに僕の財布冷凍化防止のため)そこで悠子と一緒に寝るという日々が続いていたある日、猛からの連絡が入って僕と悠子は指定され場所へと向かうことになった。
その場所は誰も使っていない御堂であった。そう、みんなが予想しているあれである。
骨折って早い人は本当に治りが早いんですよね。一ヶ月以上ギブスをつけていなければならなかった友人が一ヶ月で完治したと聞いて驚きました。もう一回おってあげようか?そう尋ねたかったのですがやめておきました。雨月はまだ、一度も骨折をしたことがありませんので骨が折れたという言葉を使えません。所詮、想像するしか痛みがわかりません。痛みを想像しても実際は痛くないのでやはり、骨折してみなければ痛みを理解するのは無理でしょうね。どうでもいいことで文字数を稼いでいるのはいつものことだとご勘弁ください。若干悠子より悠がメインヒロインのような扱いになってきていることに危惧しており、このままいったら確実に霧之助と悠が終わりをしめてしまうに違いありません。まぁ、それはそれでいいんですけどね。終わりを誰にするかはともかく、メインとサブの分別をつけておきたいなぁと思います。感想なんかありましたらよろしくお願いします。