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第四十三話◆

第四十三話

 これはあくまで暇な高校生が暇な時間をつぶすためにやっているだけの話である。よって、面白くないよといわれてもしょうがない。そういうことを踏まえたうえで呼んでほしいと僕は思う。by間山霧之助



――――――――



「霧之助、お前絶叫マシンって駄目だったよな?」

 猛がニヤニヤしながらこっちにやってきた。お昼休み、もう昼飯を食べ終えて非常に暇なようだが僕はいまだ食事中だ。あっちに行って欲しい。いや、いっそのこと宇宙のかなたにまで飛んでしまえばいいなとたまに思う自分がいたりする。

「あっち行ってくれ。猛と一緒にご飯なんて食べたくない」

「おいおい、俺はもう食後だぞ」

「僕はまだ食事中だ」

「ちなみに私は食前だ」

 隣の百合さんが親指を立てながらそんなことを言ってきた。

「別にそんなことを言わなくてもいいよ」

「そんなことって言うなよ。私だって寂しいのよ。絡めよ。物理的にも精神的にも」

 最近理解してきたことなのだが百合さんは数種類のスイッチを持っているようで間違って押してしまうと面倒なことになる。

「わかった、わかったからこっちによってこないで!」

 あと、その竹刀の切っ先は無垢で純粋な瞳の僕に向けられていたりする。それでつついちゃ駄目だからね!

「ま、いいや。霧之助、それで結局どうなんだ?」

「何が?」

「絶叫マシンだよ、絶叫マシン!」

「ああ、駄目だよ、あんなの乗ったら死んじゃう」

 何を馬鹿なことを、お前それでも男かよ、へたれの極みとかいいたいやつは勝手に言えばいい。小さいころあれに乗って途中で(しかも落下する途中)とめられ、そのまま一時間、一時間そのままだったのだ。文法として繰り返すほどトラウマである。

「そっか、それならお前これから先彼女ができて一緒に乗ろうって言われたらどうするんだよ?」

「別れるよ」

 百合さんが前につんのめった。

「え?本当?」

「当たり前だよ。それは僕に対して死ねといっているようなものだから。誰が僕を殺そうとする人とつきあおうなんて思うだろうか?思わないよ」

「霧之助、お前は今ものすごく一般人とかけ離れたような話をしていることに気がついてくれ」

「いや、あんなのに乗れるほうがおかしいんだよ」

 猛が困ったようにため息をつく。

「あのな、それなら特訓するのが男ってものだろ?」

「いいかい?男だろうと何だろうと、死なないように訓練をする人がどこにいるんだよ?そんな訓練するようなら人は不老不死の薬を探そうとするね、絶対」

「あ、そりゃそうかも」

「ほら、百合さんだって頷いてる」

 我、他方の意見を得たり!そんな感じで猛を見ていると黒板に近づいていってチョークで何かを書き始める。

「……絶叫マシン、乗れない奴はへたれか否か……ははぁん、多数決で?望むところだよ」

 いや、よくよく考えてみたらこのクラスの連中は殆どが猛の息がかかっている。非常にやりにくい話だ。

「みんな、これから人類の選択をすべきだと思うんだ……だから、どちらかに手を上げてくれっ!!」

 こうして、第一回絶叫マシンの多数決が始まったのだった。



―――――――



「あ〜……絶叫マシンに乗る奴をぼくは絶対Mだと思う!あんな苦痛を何故、そこまでして望むんだ!?世の中には垂直落下なる乗り物だってある始末だ!」

「何を!それなら恐怖を求めて廃墟をうろつく奴もMだと人くくりにするつもりか、お前は!それはおかしいだろ!?」

「異議あり!今は絶叫マシンの話をしている!肯定側は違う話を持ってくるな!」

「はぁ!?それならそっちもMという話を持ってきているではないか!」

 多数決、同票。つまり引き分け。それからなぜか熱を持ったその多数決はディベートへと発展しており和気藹々としていたクラスはどうでもいいことで真っ二つ。まるで親の敵だといわんばかりの視線をお互いぶつけている。

「あれか?絶叫マシン乗るのは自殺する練習か?」

「否否否否!!それは間違っている!RPGの世界を守るゲームは自分が世界を守るための練習じゃないだろ!楽しむためだ」

「それもおかしい。スリルがあるなら紐無しでやるべきだ!」

「馬鹿か?そんなのしたら死ぬだろ」

「運がよかったら生きてるはずだ」

「紐無しがどれだけ危ないか知ってるだろ?お前、海パン紐無しで飛び込み台から飛べる自信があるのかよ?」

「だから、違う話は持ってくるなよっ!!」

 ちなみに、この論争に僕は参加していない。

もはや違うことが出てきている上に異常な熱気、普通の人が見たら絶対にひくような雰囲気だ……穏やかそうな女子たちもにらみがすごい。女性には絶叫マシンが好きな人が多いという話を聞いたことがあるが、どうやら全て賛成側に回っており、つまるところこのクラスの女子は絶叫マシン大好きっ子が多いということだ。

 もはや口にするのもためらうような罵り言葉を平然と口にするあたり我を忘れている。

 そして、試合を終わらせるチャイムが鳴り響く。



 ああ、なんだかとても時間を無駄にした気分。


番外編ってこの小説で一度もやっていないことに気がつきました。いずれ、やりたいと思います。そのときの話がどういったものになるかは未定ですけどね。あと、この小説はきちんとラブコメているのでしょうか?非常に心配で心配で……。そして、次回からはとうとう霧之助たちは夏休みに突入!夏休みの細かいことが終わった後は宮川編その二が始まる予定です。二千九年八月二十六日火曜日。八時四十五分、雨月。

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