第四十二話◆
第四十二話
百合さんはしばし頭の中でまとめているようで、その間に僕は緑色の液体(味はメロンソーダだが、メニュー名は緑茶Mだった)を口に含む。
「ま、ぶっちゃけて言うと霧之助が略奪婚をしたってこと」
飲んでいた飲み物を全て目の前の百合さんに噴出していた。慌てて百合さんの顔をハンカチで拭く。
「ご、ごめん!」
「……大丈夫、私はこの程度で怒るほど短気じゃないから」
「待って、落ち着いて!だから隣の竹刀袋をぐっと力こめて掴まないで!」
なだめすかしてようやく許してもらえた。あやうくファミレスに血まみれの即席地獄ができてしまうところだった。
「それで、略奪婚って……」
「そのまんま。霧之助があの白衣の飛び級天使の結婚式に乗り込んで奪い取ったってさ……で、正直どうなの?」
にやっとしながらそんなことを聞いてくる。もちろん、答えはノーだ。いや、確かにそれっぽいことはやってのけたが略奪婚はしていない。
「冷静に考えてわかるよね?お互い結婚できない年齢だよ」
「そーんなの、わからないわよ。でも、よくよく考えてみたらあのちびと一緒にいる時間が多いわよね?」
百合さんがじっとこちらを見てくる。
「そうかな?百合さんといる時間のほうが長いような気がするんだけど……」
「ん〜まぁ、確かにそうかも。あの悠って子が彼女だったら浮気してるって事だし」
「ヴぇっ?浮気!?」
よかった、口の中にメロンソーダを含んでなくて。
百合さんは運ばれてきた食べたら死にそうなエビチリを口に含みながら(辛いのがすきなのだろう…まったく動じていない)しゃべる。
「人それぞれだけど、私は自分の彼氏が他の女と私よりも長い時間一緒にいたらそこから浮気ってみなすから」
「……百合さんの彼氏になる人、地獄だな」
「何言ってるの♪その分、愛はどこでもあげるわよ♪」
百合さんの彼女ってどんな人が適任なんだろ……どんな人でも絶対尻にひいちゃいそうだ。
――――――――
「おかえり、お兄さん」
「ただいま〜悠子」
家に帰るとエプロン姿の悠子が料理をしていた。最近、料理の勉強をしていたのは知っていたが、エプロンを買ってきたのは驚いた。
「エプロン、似合ってるね。買ってきたんだ?」
「……ついでよ。二つで安かったエプロンがあったから……」
ピンクのエプロン姿である悠子が蒼い色のエプロンを渡してくれた。
「はい、これがお兄さんの分」
「ありがとう、大切にするよ」
「……安物だからすぐに駄目になるわよ」
それだけ言ってそっぽを向く。
ぴんぽーん!
「霧之助っ!!いる?」
がちゃりと扉が開いて悠がやってきていた。悠子の目が細くなっていき、敵対心丸出しの表情へ……
「あんた何しに来たのよ?勝手に入ってきてさ」
「別にいいじゃないのよ!あんたに用事なんてないんだから!」
漫画だったらきっとゴゴゴゴゴゴゴ……なんてエフェクトつきに違いない。まぁ、そんなどうでもいい事を考えているうちにこの二人の間を緩和させるのに努力すべきだろう。なんといっても悠子の兄だし、悠の友人だし。
「まぁまぁ、二人ともおちついて」
「じゃあ、お兄さんはナメクジがこれでもかって言うぐらい入ったつぼの中に裸で入れるの?」
「いや、ちょっと待って……なんでそんなたとえが……」
出てくるの?と聞こうとしたら横槍が。
「あんた、そういう目であたしを見てたの!?霧之助っ、それならあんたは盛りに盛った蟷螂がたくさんのつぼの中にブリーフ一つで入れられても平気なの!?」
「え、あ〜……それはねぇ……ちょっとどうだろう?」
お互いにフンっ!と顔をそらす。
「ま、まぁ、そういった個人的な恨みは別として、悠今日はどうしたの?」
「これ!貴方のために作ってきたのっ!!」
差し出されたそれは鍵だった。
「何これ?」
「鍵」
「いや、そんなのわかってるから」
「え?」
「そんなこともわからないのね。お兄さんはどこの鍵かって聞いてるのよ」
ぐぬぬ……とそんな表情を伊達眼鏡のしたからぐるぐる眼鏡の悠子にメンチを切る。ああ、胃袋が駄目になってしまいそうだ。
「あたしの家の合鍵よ」
「合鍵って……そんなの僕にあげて大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。好きなときに遊びに来ていいから!」
えへへと笑うその表情は純粋そのもの。裏表のなさそうな性格だなと思わせる仕草だった。
「今日はそれだけだからばいばい!」
「え?ああ、うん」
玄関まで見送って、悠が帰って行く。そして、なぜか食塩を持ってきた悠子はそれを僕に渡す。
「何これ?」
「……撒いておかないとまた来るに違いないわ、あの女」
本当に悠のことが嫌いなんだな……いつか、仲良くさせたいものである。
小さいころ、運動がものすごく苦手でした。足、遅いもので運動会のリレー関係とか一回も選手になったことがありません。それでまぁ、運動できない子は運動会がなくればいいのになぁ、雨降ればいいのにって考えるものですが延期にはなっても中止になったりはしないのです。しかし、一度だけ午前中だけで運動会が終わったことがありました。ちょうど二つ三つして、小雨になりそれでも運動会は決行されたんですがお昼休みのときに傘があってもぬれるというほど酷い雨が降ったのです。そうして、中途半端なまま運動会は終わりああ、これならいけるんだなぁと実感しました。ふと、今思ったことなのですがこの小説が初めて投稿されたときから読んでいる方っていますか?ただ、思っただけなので別に教えてくれなくても結構なんですけどこちらの情報によると二十人以下?程度だと思われます。