第三十四話◆
第三十四話
「あなたたち、何が目的?」
両腰に手を添えてそんなことを言われた。心外である。俗に言うメイド服なんて着ておらず、黒の服に白いエプロンだ。そっちのほうが逆に萌えるって言う人もいるかもしれない。
「別に、何も」
「そうだそうだ、俺たちは善意でやってるだけだ」
「はっ!よく言うわよ!そういって何人が洋ちゃんをだましてきたか!」
「他の連中は知らないけど、俺らは違う!」
にらみ合いが続いており、洋一郎はなにやら僕の顔をずっと見ていた。正直、いたたまれないというか、気持ち悪い。
そして、出て行ってよ!と美月ちゃんが言い出したときに洋一郎が声を上げた。
「ああっ!!思い出した!」
「「「はぁ?」」」
三人で洋一郎のほうを見たのだが、彼は美月ちゃんだけに近づいて耳打ち。しばしの間こちらを見ていたが一つせきをした。
「……なるほどね、それなら納得できる」
「え?何が納得できるの?」
「ごめんなさい、これは悠との約束でいえないんです」
頭を下げる洋一郎に僕と猛はため息をついた。
「まぁ、いいけどさ……それで、そのおじさんとはどこで会うことになったの?ここ?」
たずねると首を振ってしばしの間考えるような仕草を見せる。
「……どうしたの?」
「……実は、高校がいいって言ってきたんです」
「お前らの高校か?俺らは別にかまわないぞ」
「そうだね、僕もそこでいいよ」
海に不法投棄し損ねた連中を探しに行くついでにちょうどいいし。
しかし、やる気を出していた僕たち二人とは対照的に元気のなさそうな顔をしてため息をついた。
「……ぼくはこの計画には参加しては駄目だといわれました」
「は?何で?」
洋一郎が言った話をまとめると、洋一郎はもしかしたらぽろりと誰かに話しかねないとの事だそうだ。
「ぼくも混じりたかったなぁ」
「洋一郎、お前は当事者だから十分混じってる」
猛がうなずきながら諭すようにそういう。だが、まだ満足していないようだ。
「……行動するほうがよかったです」
「安心しろ、どんな計画でも最終的にはお前も行動しないといけないだろ?」
「え?本当ですか?」
「ああ、俺がお前のおじさんに洋一郎も何か行動できるようにしてほしいっていっておくから」
「お願いします!」
そのやり取りを美月ちゃんがものすごく不安そうに見ている。うぅん、確かにそうだな。トラブルメーカーっぽいし。
洋一郎のおじさんが指定してきた場所はなんと僕たちの高校の屋上だった。ファミレスとかでもよかったのだがその人が言うにはばれにくいとの理由。
「あのさ、そのおじさんって何歳代?」
「えーと、三十台です」
「おいおい、大丈夫なのかよ……」
三十台のおじさんが高校に侵入してきて誰にもばれずに屋上までいけるのだろうか?ものすごく不安感が襲ってくるのだが……
その旨を伝えたのだが洋一郎は自信たっぷりにうなずく。
「大丈夫ですよ、うまくやる人ですから」
「……ま、洋一郎が言うのなら信じるよ」
話し合いは今週末……そして来月といってもそろそろ衣替えとなる六月だ。ついでに言うのなら来月の終わりには夏休み、そしてその前には期末試験が待っているのである。