第三十三話◆
第三十三話
僕が野々村家に行って首をかしげたこと。そう、それはあんな御堅そうな家なのに悠と一緒の部屋に入れたことだ。何か文句を言われそうだったのだがそれもなかった。
「そ、そりゃまぁ、許婚って決まってるから……」
それが悠の答えだった。その後、悠は自分が食べていたチョコレートパフェをこっちにまわしてあげるとだけ残して出て行った。残すのはもったいないのでそれを食べ終えて会計へと向かう。周りのテーブルがこっちをずっと見ているところをみるとなんだか変な勘違いを起こしていたらしい。
――――――
「猛、行こう」
「……ああ、そうだな……よかったな、霧之助が野々村悠と知り合いで。こうもあっさり住所とか聞き出せるとは思わなかったぜ」
そういう猛にため息をつきながらこういった。
「……知り合い、友人じゃなかったらこんな面倒なことに首を突っ込まないよ」
そりゃそうかとだけ猛はいい、僕ら二人は東洋一郎の家へと向かったのだった。
―――――――
「でかいな」
「でかいね」
門の前でぼーっとそのでかい屋敷を見ていた。野々村家とは違って洋風であり、庭は広くて森のようなものが広がっていた。
「で、どこに呼び鈴があるんだろうな?」
「それじゃない?」
スイッチのようなものを見つけてそれを押す。どうやらマイク機能があるようで声が聞こえてきた。若い女性の声だ。しかもどこかで聞いたことがある。
『……はい?』
「あの、洋一郎君はいますか?」
『洋一郎お坊ちゃまは家にはおりません。お引取りください』
そのままがちゃりと切られてしまい、ぼーぜんと二人で立ち尽くす。
「やれやれ、仕方ないな……電話するか……猛衛門、ケータイ電話出して!」
「てれてれってれ〜!け〜たいでんわぁ〜……のってやったけどよ、なんだか語呂悪くねぇ?江戸時代にいそうだ」
どうだろうか?江戸時代にはいないと思――――――
『えーと、もしもし?』
「あ、洋一郎?僕だよ、僕。この前公園であった奴」
『どなた?』
そういえば名乗っていなかったことを思い出した。それから十分程度自分がどのようにして洋一郎とであったかを話してあげた。
『ああ、あの二人ですね?』
「そうだよ、そう……ところで、今どこにいるの?家にはいないようだけど?」
そういうと驚いた声が返ってきた。
『え?普通にいますよ?』
「だけどさ、なんだかよくわからないけどいないっていわれたから」
『わかりました。今から出てきます』
もしかして住所が間違っているのだろうかとも思ったのだが、住所はここであっているはずだ。
――――――――
「あぁ、この前はどうも」
「はい、落し物」
ハンカチを手渡すと大事そうにそれを抱きしめ、こっちを見て首をかしげた。
「あれ?あのぅ、以前お会いしました?」
「……はぁ?公園でだよね?」
「いえ、それ以前にどこかで……」
「……いや、会ってないよ。それよりさ、僕らの電話番号、あの美月って子に消されたの?」
そういうとうなずいてため息をついた。
「美月、ここで住み込みのお手伝いをしてくれているんです。だから、すぐチェックするし……」
「……うらやましいなぁ」
猛がそういうが、そんなの無視して話を進めよう。
「わかった、消されたんだね?だから、わざわざここまで僕らは来たんだ……で、おじさんには連絡したの?」
たずねると元気よくうなずいた。
「ええ、ばっちりです!連絡手段がなかったのでお伝えできなかったんですけどもしもまたその協力してくれる人たち、つまりあなたたちですね……に連絡できたら電話が欲しいって言ってましたから。計画を話し合いたいって」
「わかった、今から大丈夫かな?」
「はい!あ、それよりも中で話しませんか?中にはぼくと美月しかいませんから」
「え?この馬鹿でかい豪邸に二人だけ?」
「ええ、ここはぼくだけの家なので」
「霧之助、こいつ一度つるそうぜ?」
「全部終わった後でね……あ、自己紹介ものすごく遅れたけど僕の名前は間山霧之助」
「俺は黄銅猛だ」
挨拶をした後、屋敷の中に三人で入ることにした。本館に行き着くまで十分程度の時間がたったきがしたが、気のせいだ、気のせい。