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第三十一話◆

第三十一話

 彼、東洋一郎あずまよういちろうが野々村悠と許婚だというのをしったのは小学生に入りたてのころだそうだ。当初はそれがどういったものなのか、よくわからなかったが今では理解しており、それで悩んでいる。

「実は、ぼく、彼女がいるんです」

「「……」」

 頭をぽりぽりとかいてそんなことを言う。あたりはもう闇に包まれてきていた。

「ええと、実は今の彼女とであったのはちょうど中学のころで……今日のように囲まれていたときに助けてもらって一目ぼれっていうかなんていうか……」

 照れたようにそう続ける。

そんなことはどうだっていい……僕はそんなことを考えており、猛にいたっては眠そうだった。あくびをしているが、それに気がついているのかいないのか……洋一郎はずっとのろけ話をしている。やれ、どこで初めてのキスをしたとか、子どもの名前は何がいいとか……おいおい、いろいろと早すぎじゃないのか?

「もういいから。それで、そのことはその野々村悠には言ったの?」

 なんとなく、なんとなくだが友人だということを知られたくなかったのであえて知らないように振舞ってみた。猛も知っているとはいったが僕が友人だとは言わずにおいてくれた。

「ええ、いいました……死ぬことを覚悟して!」

 両手をグーにしてこっちによってくる。若干ひきつつも黙って話を聞く事にする。

「そうしたら、悠ちゃんも自分にも好きな人ができた、これまで後ろめたさがあったがあんたにもできたのならこれでちゃらだっていって……あ、そういえば悠ちゃんが好きな人の写真も見せてもらいましたよ」

 あの写真のことだろうか?どんな顔か聞こうと思ったのだがやめておいた。

「けどよ、許婚ってよくわからねぇけどお互いの親が決めたって事になるんだろ?お前、どうするんだよ」

 これまたおせっかいかつ、首を突っ込みたがる猛がそんなことを言う。親には逆らえないような顔をしている高校生、洋一郎はがっかりと肩を落とした。そして、これまた高そうなハンカチを取り出して汗を拭いている。

「…実はですね、来月約束って言うか、結婚式のリハーサルみたいなことがあるんですよ」

「「はぁっ!?」」

 僕と猛は一緒にそんな声を出した。洋一郎は高一だそうだ。結婚なんてできないし、悠も一応高一だが飛び級で実際は中学生だ。

「結婚なんてまだできないよね?」

「そ、それはそうですけど、それをしてしまったら最後なんです!異性とはなすことさえ駄目って言われるし、それを守れなかったら転校までしないといけません」

 そういってああ、もう破滅だ〜とかそんなことを言っていた。

「まぁ、そりゃかわいそうだがあの子飛び級の上にひでぇ亭主を持つことになるんだな……かわいそうに。あと一ヶ月ぐらいか。終わったな」

 まるで他人事だといわんばかりの態度である。まぁ、実際猛にとっては他人事だろうが。

 しかし、ここで意外な反応を洋一郎が見せたのだ。

「いえ、実は一つだけ手段があるんです」

「手段?」

「ええ、これは僕のおじがやってのけたことなんですけど……その式っていうか、儀式のときに誰かが割って入ってその主役を連れ出して逃げるんです」

 頭の中で結婚式のときに式場にガン○ムが乱入してきたという映像が再生される。ああ、あれならいけるなぁと馬鹿なことを考えてしまった。

「で、それからどうする?」

「おじのところにかくまってもらいます。同じ境遇の人ならわかってもらえますし!あとは、手伝ってくれる人を探すだけだったので探していたんですよ…それで、実はあの人たちに頼んだんです」

「あの人たち?」

 首をかしげると洋一郎はもう忘れたのかといわんばかりに驚いた。

「あなたたちがぼこぼこにしたっていったあの人たちです」

「……はぁ?」

 なるほど、お金が欲しいよボンボン君といわれていたのではないのか。

「で、どうだったんだ?」

「……正直言って信じられないことをいわれました。いつも俺らのアドレスを消しやがるお前のむかつく女とは別れて許婚と結婚してそいつをこっちにまわせって……」

 その言葉に頭の中が真っ白になってしまった。

「おい、霧之助、そんな怖い顔でどこ行くんだよ」

「海……燃えないごみを不法投棄してくる」

「また警察呼ばれたらどうするんだよ、今度はきちんとつかまるぞ……それに、お前の妹が悲しむ」

「……まぁ、いいや……あいつらにはもういい薬になっただろうし」

 あの写真をばら撒けば外は確実に歩けないはずだ。そんなことよりこっちのことだ。

「洋一郎、僕らに任せてくれないか?」

「え?」

 驚いたような顔をしてこちらを見ていた。驚いているのは猛もそうで嫌そうな顔をしたが口には出さなかった。

「……許婚なんて古い制度で苦しんでいるんなら助けるよ……」

「あ、ありがとうございます!」

「やれやれ、おせっかいめ」

 そんなことを猛が言ったときだった。公園の入り口方面から怒声が聞こえたのだ。


前書きにはいろいろと書き込めないへたれ作者の雨月です。なにやら霧之助と猛の過去を匂わせるような話が出てきましたが、それはまた別の機会で話すことにしてここでは野々村悠編ということでそちらのほうにスポイトではなく、スポットを当てていくことにしましょう。まぁ、当てるといっても悠に当てることなんてないので洋一郎のほうに。名前の由来はそのままですね。東洋の一郎。はい、しょぼい裏設定でした。それなら霧之助って名前は何なんだ!?と夜も眠れなくなる人たちもいるかもしれません。気がついたら霧之助という名前を用いており、この小説の最初のほうでは作者が主人公の名前を忘れてしまいやすかったためにあまり呼ばれていなかったりします。今ではきっと皆様に愛されている主人公となっているんでしょうけどね。今後どういったことになってしまうのか!……ふと、思ったんですけどスナイパーを女の子がやっていてラブレターをだしたら『貴方を遠くから見てます』って絶対つけると思いませんか?うーん、今度かいてみようかな、そんなの。

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