◆◆第二百六十九話◆◆◆:悠と一緒
第二百六十九話
夏祭りといえば頭に浮かんでくるものはそう、多くない。いや、まぁ、夏祭りに行ったことが多い人ならばどういったものがあるとかわかりやすいかもしれないが僕はあいにく、祭りなどには行かなかった。
そういう理由で、悠に期待をしていたのだけれども……
「え?あ、あたしもそんなに行ったことないからよくわからないや」
そういうことなので適当にまわることにしたわけなのだが……人ごみに流されてしまう。とりあえず、今僕に出来ることはしっかりと悠の手を握ってあげることだけだった。
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まさか、このときがやってくるとは思わなかった悠である。言われたときは出来すぎた冗談、もしくは新手の詐欺かなと考えてしまった。
しかし、詐欺でもなんでもなく、それこそ夢でもない……ちゃんとした現実であった。
「……どこ行こうか?」
夏祭りが行われている場所へとついて少し経ち、しっかりと手を握り締めているとそう聞かれた。
頭の中で、いや、実際に女友達を連れて何度も何度も夏祭り、カラオケ、バッティングセンター……他にもさまざまな場所に行って予行練習をしたのだがいざ実践というときはどうすればいいのかさっぱりわからない。
結局、相手に任せることにしてしまった。
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流されるままに、気の向くままに、何周ほどお祭りを無意味にまわったのかはあえて考えてはいないが、ようやく出店の前に立つことができた。上のほうにはくじやと書かれており、ついでに空クジなしとも書かれていた。
「いらっしゃい!」
「くじかぁ……」
つるっぱげのおじさんが頭に鉢巻を巻いている。そして、彼の周りには射的で使われるような銃が置かれている……というか、それ以外はなかったりする。
「あの、ここってくじをするところですよねぇ?」
「そうだよ?」
「商品は全て銃ですか?」
「ああ、えっとだな~この銃を持って射的屋に行けば一発だけ無料でやらせてくれるぜ?で?やるか?」
やる!というべきなのだろうか?
「じーっ」
「ん?何?お譲ちゃんやるの?」
「うん、やる!」
「え?」
隣で見ていた悠がそんなことを言い出した。まぁ、やりたいのならやらせたほうがいいのかな?
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記念すべき一つ目の屋台がくじだとは思いもよらなかったのだがこれも何かの運命であろう…悠は財布を取り出した。
「待って、おじさん、僕が払います」
「え?」
「いいのいいの、僕が誘ったんだから少しぐらいは僕が出すよ」
「……ありがとう」
未だしっかりと手を握っているところを見ると本当にこの夏祭りの間は放すつもりがないらしい……しかし、勇気をもらっている気がしてうれしかった。
「まいど~……じゃ、お譲ちゃん彼氏さんのためにもがんばらないとね」
どれがいいのかさっぱりわからないが……とりあえず、いい奴を当てればいいのである。紙でごった返している箱の中に手を突っ込んで神経を集中させる。
「……これよっ!!!」
漆黒の闇に流れ星でも降り注いだのか……悠は一つの紙を天高く掲げたのだった。
まだまだ続く、というかこのまま終わっちゃいそうな勢いですが……やる、やるしかないんです!野々村悠をメインヒロインにすべきか……否か、いまだに悩んでいる自分がいますがゴールはすぐそこ!一月二十二日金曜、二十一時二十七分雨月。