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◆◆第二百六十七話◆◆◆:果てへと続くいつもの日常

第二百六十七話

「えっと、はい」

「あ、ありがとう」

 手渡された一枚の写真を誰にも見つからないようにかばんの中へと入れる。まぁ、女子トイレの中なので誰かに見られることも無いだろう。一見すると怪しい動きだが……まぁ、実際怪しいやり取りをしているのでフォローは一切出来ない。かばんの中へと滑り込んだ写真は隠し撮りのものだから十分、怪しいものだ。

 怪しい人、怪人の片方である野々村悠は友人に礼を述べて女子トイレを後にしようとしていた……だが、後ろから不思議そうな声が聞こえてきてそれが彼女を引き止めた。

「……あのね、へんなこと聞くけど何で写真が必要なのかな?」

「え?あ~……それは……」

 目標地点……霧之助という男子生徒と運命的な?出会いをしてあれから一ヶ月が経っていた。学校も今日で、いや、すでに春休みへと突入している。白衣を返そうということで探していたわけで、彼が二年六組の生徒だということもすでにわかっていた。一人っ子で、父親は保育園に勤めており、母親のほうは小学校の先生だそうだ。部活には入っておらず、月曜、水曜、金曜は大体、図書館で下校時間になるまで料理の本などを読んでいる。その後は本屋へと向かって結構遅い時間帯まで時間をつぶしているように見えた。そして、火曜と木曜は町をうろついている。これまた遅い時間帯までうろうろしており、稀に喧嘩になって一人で数人をぼこぼこにしている姿を目撃した。相手から殴りかかってきたときのみ、対応をしており挑発されても全て無視している。

「何で?」

「あ……」

 これまでの自分の行動がかなり危ない方向へと走っていっているのが手に取るような回想だった。白衣を返すだけならば別にさっさと渡せばいいはずなのだが、何故かうまくいかない。何度か渡そうとしたのだがそのたびにかき集めた勇気はあっという間に消えてなくなり、最近は考えるだけで顔が熱くなってしまう。

 これが一体全体何なのかさっぱりわからなかった。これまでこんな状態になったことは一度も無い。だが、悪い気持ちはしなかった。

「え、えっとねぇ……その、何と言うか……き、記念かな?」

「記念?」

「そ、そう!記念……というか、忘れないようにしようと思って」

「何を忘れないようにしているの?」

 これ以上しゃべってしまうとわけのわからないことをいいそうになったのでとっさに思いついたことを口に出す。

「…この人にぶつけられてね、恨みを忘れないようにと……」

「それって、たまたまぶつかっただけじゃないの?」

「うぅ、た、確かにそうだけどね、ほら、やったほうは忘れていてもやられたほうは覚えているから……」

「あ~そうなんだ……だけど、あまり酷いことしちゃ駄目だよ?」

「わ、わかってる」

 それからすぐにトイレを後にする。ともかく、写真は手に入れたのだからかまわないだろう……

 いつか白衣を返したときに話す機会はあるはずだ。



―――――――



「で、結局あの白衣は今もあたしの手の中にあるんだもんなぁ……霧之助は忘れているし」

 カーテンの隙間から差し込む月光はほんの少しだけ部屋を照らしている。照らされた月光に触れるかのように少女はそっと、月明かりに手を伸ばした。

「……諦めるのってまだ早いよね?結果がわかってるわけじゃないから」

 誰に言うでもなく、そういって彼女は布団へと戻る。そして、静かに目を瞑る。

「……おやすみ」

 そう言ったものの、静かな夜にこの言葉を聞いたものは居るのであろうか?



――――――――



「ちょーっと悠!早く起きて」

「……ん~?」

 揺らされる感覚を覚えて、目を開ける。目の前には夢の中で好き勝手やってくれた人物が居た。

「……ぇ?」

「ぇ?じゃないよ…ほら、朝食出来たから。冷えちゃうよ?」

「ん~……」

 まぶたをこすり、立ち上がる。

「ほら、顔を洗ってきて!涎の跡が残ってるよ」

「んがっ……霧之助のバカっ!」

「は?」

 何故だか知らないが怒ってしまう。そのまま逃げるように洗面台へと向かう悠であった。そして、それを目撃したのであった。

「ななななな、何よこれっ!!」

 彼女の額には『私は白馬の王子様の写真を持ってます!』と書かれていたのであった。

「……霧之助っ!!これはいったいどういうことよ?」

 エプロンを脱いでいる途中の人物に問いかけると呆れた顔をされる。

「……だってさぁ、『待って!王子様!』とか言って『あの写真立ては貴方だけのものですっ!!』とか言ってるからね。なんだかやるせない気持ちになって書かせてもらったんだよ。早く迎えに来るといいね、王子様」

「あ、あたしは迎えなんて待たないから!王子様を捕まえにいくもん!」

「はははっ、そりゃ勇ましいね。だけど、その前に頬に残ってる涎の跡を何とかしなよ」

「……霧之助のばかーっ!!」

 そういって再び洗面台へと向かうのであった。


まだ、エンディングは書いていませんよ。ええ、書いていませんとも。しかし、もはや終わりが近づいているのは誰の目にも明らかだと思います。しかしまぁ、半年ぐらいでここまでやってくるとは思いませんでした。日々、こつこつ積み重ねてこれたのが功をせいしたのは……コツコツ。あの踊りが頭の中で……コツコツ。小説を終わらせるのってとても勇気がいるんですよ。これ、終わらせちゃったらまた初めからやらないといけませんからね。読んでもらえるような名前をつけて、あらすじも人の目にぱっと入ってくるように考えないといけないし、やっぱり内容が面白くないと本末転倒ですし。夢だけ描いためちゃくちゃな小説もありかもしれません。しかし、それは誰のために書いているのかはちゃんとしておかないといけません。自分のためなのか、他人のためなのか……道半ばで沈んでいく小説をたくさん読んできましたよ。ええ、もうね……続きが気になる上で連載が終わってしまいますのでがっくりくるんです。ああ、またか……そんなことを考えます。以前、小説を真似るということを言ったかと思いますが、あれって実は一つのメッセージでもあるんです。連載がいきなりとまってしまった小説を真似るということはその作者さんが一番わかります。この小説を再び復活させて欲しいと残しておけばもしかしたら再び連載されるかもしれませんからね。ともかく、この小説はそろそろ終わりを迎えます。終わりを迎えたとしても、放置状態になりますけどね。誰かが、この小説を基盤にしてさらにうえの完成状態としていつか披露してくれることを期待しています。一月二十二日金曜、十七時九分雨月。

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