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◆◆第二百六十六話◆◆◆:自前の調査用紙

第二百六十六話

 野々村悠は結局、白衣をどうすればよいのかさっぱりわからずに自宅に持って帰ってきてしまっていた。名前も聞いていないために、何処の誰か……それがわからない。白衣を先生に渡してしまえばよかったのかもしれないがそれをどうしたのかなどと聞かれて時間を割かれるのが嫌だったということもあるのだがもしかしたらあの男子生徒のものなのかもしれないと考えた。確率はかなり低いだろうが、それがないとは言い切れない。

 やはり、探すしかないだろう。

 夕飯に呼ばれるまでに時間は十分あった。とりあえず、現在あの男子生徒の手がかりとなっていることから簡単にまとめていくために白紙を取り出す。

「う~ん……あ、だけど猛って名前は出てた……」

 下の名前で呼んでいるということはそれだけ親しいということなのだろう。

 悠は中心地点に目標人物と書いてすぐ隣に『猛』という文字を書く。とりあえず、この猛という人物を見つければゴールにたどり着いたも同然だ。

 中学生にしては体躯がよかったことを思い出す。もし、本気でぶつかった場合……自分はどうなっていたのだろうかと悠は考える。

 次からは曲がり角に注意しようと自分に言い聞かせるのであった。



―――――――



「……猛?苗字とかは?」

「え、う、う~ん、ちょっとわからない。だけど、二メートルぐらい身長はあったと思うんだけど……知らない?」

 まずは自分のクラスメートに訊ねてみることにした。足元から固めていくのが常道だろう。少し時間はかかるかもしれないが相手がどういった人物であるかを調べるには慎重に調査を行わなくてはいけない。

 ともかく、すぐに結果がわかるとは思っていなかったが知らないといわれると少しだけがっくりとくるが……

「……猛?猛ってあの黄銅猛っていう二年生?」

 近くの席に座っていた友人からそう訊ねられる。

「え?知ってるの?」

「えっと、野々村さんが言っている人かどうかはわからないけど身長が二メートルぐらいある人だよね?」

「うん、そう」

 多分、それ……ではなく、その人物に間違いないだろう。本当の目的地点はそこではないのだが、とても重要な到達地点だ。

「あ、もしかして何かされたとか?」

「え?」

 心配そうな視線が悠へと向けられる。曲がり角でぶつかったのは確かだが、あれは自分にも一応、非がある。面倒なので結局先生には黙っていたのだが、見ていた人でもいるのだろうか……

「黄銅猛って人、不良らしいからね……」

「不良……?」

 悠の頭の中には同学年で髪を染めているうるさい男子生徒たちのことが浮かんでくる……が、あまりじっと見ていないあの猛と言う人物は黒髪で短髪、目標地点の男子生徒の髪も染めたりはしていなかった。

「そう、不良!しかも、髪とか染めてちゃらちゃらしている連中とかよりかなりやばいって。先月も二人ぐらい病院送りにされてるって言ってたじゃん?」

「……」

 そういえば、そんなことがあったのかもしれない……が、想像もつかなかった。

「二年の中でも結構はぐれてる人らしいよ?」

「そ、そうなんだ……」

「やっぱり何かされたの?」

 心の底から心配してくれているだろう……寄られてきたが、別に何もされていないので首を振っておいた。

「ううん、何もされてないから心配しないでいいよ」

「そう、けどね、何かされたときはすぐに先生に言っておいたほうがいいよ」

 素直にお礼を述べてこれからどうしたものだろうかと思案する。



――――――――



 昼休み、紙を取り出して目標地点の近くに『猛』と書かれている欄に『不良?』という文字を筆頭にあまり人聞きのよくない言葉を書き込んだ。一つのクラスを残してやはり、聞く話はどれも不良だというものばかりである。もしかしたら間違った人物の話かもしれないが二メートル近い身長がそうそういるはずがない。

「……う~ん……」

 結論だけを言うならば、不良だという話だが、最後のクラスが残っている。そこには小学生のころから知っている人物が居るのでその子に話しかけてみることにした。昼休みということもあってか、クラスの中にいる生徒の数はかなり少ない。

「……ねぇ」

 探していた少女はいつも机で本を読んでいるために探すのは非常に楽である。今日も同じように本を読んでいた。

「あ、どうしたの悠ちゃん?」

「あのさ、えっと……多分、だけど……黄銅猛っていう名前の人知ってる?老け顔みたいで二メートルぐらいの…先輩」

「猛……先輩のこと?」

 どうやら、知っているらしい。可愛らしく小首を曲げている。

「うん、多分その人。不良って言われたりしてるんだけど?」

「……う~ん不良?」

「そう、不良」

「……」

「……」

 ちょっとした間が、あいた。

「あの人、不良じゃないよ?」

「え?」

「だって、授業もしっかりでてるって言ってたし、私のおばあちゃんも何度か荷物を持ってもらっていたっていっていたもん」

 予想外の答えに戸惑いながらもこれまで集めてきた話をまとめて聞かせた。

「……その猛って人物は『自分の気に食わない相手をぼこぼこにしている』っていわれてるけど?」

「あ、それは本当だよ。先輩、ちょっかいを出してくる相手が大嫌いって言っていたから。それと、弱いものいじめも大嫌いだって」

「ちゃらちゃらしている不良よりも恐いって言うのは?いつもはぐれてるって言われてるよ?」

 そういうと悩んだように友人は眉をひそめる。

「……先輩、『人見知り』だって」

「……」

「あ、だけど一応友達は居るんだよ?私も友達なんだけど霧之助先輩と一緒にいつもいるもん」

「……霧之助?」

「うん、この人」

 手渡された写真を覗きこんで悠は固まった。そこには三人学生が写されており、話に聞く猛という人物と友人、そして白衣をのせて去っていった男子生徒が笑っていた。

「……え、こ、この人が霧之助って先輩?」

「うん、そうだよ?苗字は忘れちゃったけど猛先輩が霧之助って言っていたから間違いないと思う。一回しか会ったことないけどすっごく、いい人だったよ!」

 目の前の少女は人見知りであるが、一回目で好印象を与えるという男子生徒、霧之助という人物は相当ないい奴なのだろう……しかし、自分があったときは微妙だったような……

「あ、え、えっと……答えてくれてありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」

 それから自分のクラスに戻り、紙を取り出して目標地点を消し去る。そして、新たに『霧之助』という文字が記載されたのだった。


……未来は変えることが出来るのか……?今のところ一番新しい話でもどうしても、マルチエンディングに持っていくのは不可能……本筋にあの子が主眼として描かれてしまっているわけなのです。不可避の未来を無理に回避しようとするとなおさら悪い結果、もしくはぐだぐだ感丸出しの底辺小説へと成り下がってしまうわけです。んじゃもう、腹をくくって読む人が恥ずかしくなってディスプレイを閉じてしまうようなエンディングを目指そうじゃないですか。ええ、幸せいっぱいの、そんなやつ。いやいや、どうしても俺は、私はあの子と霧之助のその後が見たいんだ!という方がいるのならば本編終わった後にそっちのほうをいじらせてもらいますので是非、お教えいただけるとうれしいかなと思います。一月二十二日金曜、八時五十七分雨月。

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