◆◆第二百六十四話◆◆◆:帰りが遅いのは仕様です。
休載のお知らせを後書きに掲載しました。詳しくはそちらで。
第二百六十四話
霧之助のアパートで生活を始めて五日目。そろそろ霧之助が帰ってくる時間である……が、まだ帰ってこない。暑い日が相変わらず続いているがここのクーラーは絶好調である。
「……遅いわね……」
料理がうまく出来ないためにカップ麺の生活だったが、今ではもう慣れてしまった。テーブルの上には二つのカップめんが並べられていたりする。
「あ~もう、本当に遅い……」
携帯電話を手にしてメールがきていた事に気がついた。相手はやはりというか、霧之助からであった。
「『ごめん、悠のことを完全に忘れていたよ……すぐ帰ってくる』……って、何処かによっていたってこと?」
なんだか肩透かしを食らった気分である。怒っても仕方がないので霧之助が帰ってくるまでテレビでも見ることにする……
頬杖をついてテレビを見ているとだんだん眠くなってくる……
野々村悠はそのままテーブルに突っ伏して眠ってしまったのだった。
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「んん……ん?」
目を覚まし、自分が眠ってしまっていたことを思い出した。
「あ、気がついた?」
「霧之助……帰ってきたんだ?」
「帰ってきたんだって……僕が帰ってきてもう三時間ぐらい前になるかな?結構遅い夕飯だけど食べる?」
テーブルの上にはラップのかけられたロールキャベツが並べられている。
「これ……霧之助が作ったの?」
「もちろん、それ以外に誰が居るの?」
「でも……まったく気がつかなかった」
調理の音で目を覚ましてもいいはずだが、そういった気配が一切なかった。
「ま、起こさないように音には十分気をつけたからね……」
「……別に、起こしてくれればよかったじゃない?」
首をすくめて霧之助は笑うだけだった。
「で、食べる?」
「……食べるに決まってるじゃない」
――――――――
着ていた白衣にちょっとしたよだれの跡がついているのに悠は気がついた。
「あ~あ、どうしよ……」
この白衣はとても大切な白衣なのである。替えはない特別なものでもうかれこれ……五年以上愛用しているのだ。
「……そっか、もうそんなに経つんだ……」
霧之助はすでに眠っているのだろう。部屋から物音は聞こえてこないし明かりも漏れていない。
この白衣との出会いは……
またもや悠の話。と、言うかまだまだ続いちゃったりします。次は悠の過去編。それが終わってまぁ、うんぬんかんぬんでああなってこうなってそうなって高校終了!といった感じになりますね。ああ、今日から一週間雨月は戦いに赴きますのでその間休載です。これまでを振り返って雨月の粗を探すのに最適な時間かなと思いますのでごゆるりと。一月十九日火曜、八時六分。