◆◆第二百五十七話◆◆◆:もしかしたら僕は彼女の兄になっていたのかもしれない。
第二百五十七話
帰りのバスの中、憔悴しきったルームメイトたち……
変な話かもしれないが、吉野先生が何を話したのかさっぱりわからなかった。思い出せないのである……
「さ、そろそろ学校につくわよ~」
吉野先生が元気いっぱいにそんなことを言う。どんな話を聞いたんだっけ?吉野先生を見ていれば何か思い出すかもしれないと思ったのだが、黒々とした恐怖が鎌首をもたげるだけだった。
思い出すのはやめておこう。
まぁ、いろいろなことがあった勉強合宿だったけど面白かった……かな。
―――――――
満身創痍の状態で学校にて解散。ふらふら歩いていると誰かにぶつかってしまった。
「なんだぁ?フラフラじゃねぇか?」
「……喜一郎!?」
「俺の名前を気安く呼ぶんじゃねぇよ、スカタン野郎が!」
くそ親父が立っており、その脇には夏帆がいた。
「で、お前どうしてそんなにフラフラなんだ?」
「別に……どうだっていいだろ。あんたには関係ない」
「ああ、なるほどねぇ……こりゃ、あれだな、合宿中に女子と密会、その後は一つのお布団でよろしくやりましょうってイベントだな~」
惜しいけど、違う。最後はよろしくやっていない。僕は押入れ内部にて一人で就寝したのである。
「……霧之助はそんなことしないもん」
「ど~だろうな?男って言うものはな、夏帆……総じてスケベでエッチなんだよ」
それ、一緒だろうよ?そう突っ込む気力も呆れで飛んでいってしまった。
「……じゃ、じゃあ、霧之助もエッチなの?」
「おう、きっとスケベでエッチなんだよ」
「……ベッドの下にたくさんの……」
「ああ、きっとあるだろうなぁ?」
アホくさ……
馬鹿らしくなってきたので帰ろうとすると肩に手を置かれる。
「まぁ、待てよ。今日はお前さんをご馳走に招待しようってことですでに手はずが整っているんだよ」
「はぁ?そんなことするぐらいなら記憶を思い出す努力をしろよ」
「あ~安心しろ、とっても大切な記憶なら思い出した……」
「え?」
喜一郎は自信満々に俺を見て頷く。
「嘘……」
「嘘なものか。俺の誕生日を思い出した。一月一日、それが俺の誕生日!」
「………」
馬鹿らしくなってしまったので帰ることにする。
「あ~おい、ちょっと!だから待てって!……あのなぁ、記憶は確かに大切かもしれないがこうやって新しく記憶を作るのに協力してくれたっていいだろう?」
「何で僕が……」
「夏帆の友達なんだろう?俺は子どもの友達と一緒にわいわいやるっていうのも嫌いじゃないんだぜ?」
にやっと笑うが……はぁ、まったく、この親父は大嫌いだ。
――――――――
「んじゃまぁ、とりあえずかんぱ~い!!」
「「かんぱ~い!!」」
「……かんぱーい」
居心地悪くて料理がまずいのかうまいのかさっぱりわからない。僕はそんな日を過ごしたのだった。でもまぁ、なんだろうか?
可能性としては……ここの家族になっていたのかもしれない。
人生の分岐点。もし、間山が乙姫のままだったならば夏帆の兄になっていたのかもしれません。まぁ、あくまでこれは可能性…今現在彼は悠子、そして由美子の兄ですね。さて、次回は三者面談の話のはじまりはじまり……。一月十四日木曜、八時七分雨月。