第二十四話◆
第二十四話
「ただいま〜」
家に帰ると腰に手を当てた悠子がおそろしい顔でこっちを見ていた。
「あのね、遅いなら連絡してくれてもいいんじゃないの?お兄さん」
「あ、ごめん……」
「こんな時間までどこに行ってたんだか……おなかがすいて私つらかったんだから……」
「今すぐ夕飯作るから!」
そういってリビングへと向かうとテーブルの上には若干こげている目玉焼きとうまく切れていない漬物などがおかれていた。
「これは……」
「……練習してみただけよ。料理ぐらいできないと困るし、間違って二人分作っちゃっただけ」
そういって自分の席へとついて食べ始める。
「そっか、それでもありがとう……いただきます」
僕も悠子が始めて作ってくれた夕飯へと手を伸ばすことにした。目玉焼きは十分食べれるものであり、意外とおいしい。
「おいしいよ、これ」
「……そう、それはよかったわ」
特に感情をこめた様子でもない。まぁ、単なる目玉焼きだからだろうか?それ以上は会話をすることなくお互いにあっさりと食べ終えてしまう。
―――――――――
食器を洗おうとしたのだがお気に入りのエプロンがない。あたりをきょろきょろと探してみるが見つからないので結局悠子に聞くことにした。
「悠子、僕のエプロン知らないか?」
「あ、あ〜……エプロンはね」
こっちを見ないで歯切れ悪くそんなことを言う。
「エプロンは?」
「エプロンは……がんばりすぎて燃えちゃったわ」
それが悠子最大のジョークだと気がついてやれなかった。
「え?」
「……ごめん、燃えちゃった」
「燃えちゃった……って、悠子、火傷とかしてないのか?」
エプロンが燃えたらそのままつけているやつにも引火しちゃうだろうに……だが、悠子は首を振った。
「ううん、大丈夫。はずしてて……あ〜っ、その、置いた瞬間に燃えたから」
「ああ、そうなんだ……でも、手とか本当に火傷してないよね?」
「ええ、火傷は大丈夫だから。私、お風呂に入ってくる」
それだけ言っていつものように自室へと入っていく。まぁ、火傷していないならいいだろう。エプロンを失うか、悠子を失うか……どちらを取るかといわれたら僕はもちろん前者を取る。
「しょーがない、今度エプロンを買ってこないといけないな」
そのままさっさと食器を洗う。その後は悠子がお風呂からあがって来るまで能天気にテレビを見ていた。
「お風呂、あいたわよお兄さん」
「ん、わかった」
そのまま浴室へと向かう途中、悠子が僕の前に立ちはだかる。
「ん?」
「……エプロン、今度買ってくるから」
「ああ、気にしないでよ。エプロンぐらい買うお金持ち合わせてるから」
「……いいの!私が絶対に買ってくる!」
それだけ宣言して部屋へと戻ってしまった。はぁ、まぁ、責任感が強いんだろうな。
そう思って僕は一つため息をついた。いい兆候なんだろうな、これは……だって当初は罵倒しかされてなかったから。悠子とは今のところいい関係でもある。そう、悠子とは……いつか普通の兄妹みたいになれるのだろうか?だが、僕には一つだけ問題があるような気がしてならない。そしてそれは実質、次の日に問題として降りかかるのだった。