◆◆第二百三十六話◆◆◆:少女たちの策略
第二百三十六話
「……はぁ」
佐竹一二三は悩んでいた。その悩みとは自分が所属している部活の部長とけんかではないが、微妙に気まずい雰囲気のままここまでやってきているのである。
以前から休み時間ごとにため息をついていたので友人たちも遂に業を煮やしたのか直接聞いてきたりもする。
「お、悩みでもあるの?」
「私たちでいいなら相談のってあげるからさ」
「……あのさ、ちょっと部活の部長と気まずくて…仲良くなるにはどうしたらいいかな?」
その後はとんとん拍子に話が進み、とりあえず一緒になれる空間を作るべきだと決定付けされた。
「で、どういった場所で二人きりにさせようか?」
「体育館の倉庫は?」
「あ~あそこは以前部長が友達と閉じ込められて大怪我した後、閉じ込められないような工夫がされてるらしいよ?」
「そっか、それなら体育館倉庫はあきらめよう」
「じゃ、図書館の管理人室みたいなところは?」
「いいね、あそこだったらめったに人も来ないし……」
「二人っきりになれるし!」
きゃ~なんて言っている二人を見て佐竹一二三は大丈夫だろうかと少しだけ疑問を持ったわけだがこの二人を信用してみることにしたのだった。
――――――――
「……」
「……」
ちょうど、友人の乙姫夏帆が学校を休んでくれて助かった。夏帆だけ最初に帰らせるというステップを自動的にクリアしたことになるのだからほっとする。失敗する確率が減ったのだ。
時折ちらりと自分の部の部長を盗み見るのだがまったく気がつかない。じーっと見ていても参考書を見るのがそんなに楽しいのかそっちばかり見ていた。
何で気がついていないのだろうか?こんなに鈍いのではいろいろと面倒なことに巻き込まれるのではないのだろうか……そんな考えが頭の中を駆け巡り、いつもより集中できない。
―――――――――
「あ、一二三~」
「今帰り?」
図書館の曲がり角付近で待機していた二人の友人がやってくる。部長が先に帰らないように進路方向に身体を動かし、二人と目配せをする。
「あのさ、悪いんだけどこの鍵を図書館の管理人室においてきてくれないかな?」
一応、怪しまれないために否定をしておく。
「え?何で?」
「私たち、この後すぐに先生のところに行かないといけないんだ……だから、お願い」
「う~ん、それなら仕方ないかな」
そしてもう一度目配せ。今度は二人組が隣で手持ち無沙汰に立っていた部長をじっと見る。
「……」
居心地悪そうに何度か首を動かして隣にいた一二三へと視線を移す。
「じゃ、じゃあ置きに行こうか?」
「……はい」
あくまでここはまだ不機嫌そうに対応すると決めていたので一人でつかつかと歩き出す。ちゃんと部長も後ろからついてきたようである。
―――――――
予定通り閉じ込められ、ソファーの上に二人で腰掛けている。しかし、よくよく考えてみたら別に閉じ込められなくても仲直りぐらい出来たのではないかといまさらながら佐竹一二三は考えるのだった。
男と、女が密室に二人……
この前友人から借りてきた本を読んでつい、どきどきしてしまう。
「一二三ちゃん、何かいい案思いついた?」
「はひっ!?」
思ったよりもかなり近いところから声が聞こえてきたために変な声が出てしまう。そのことと、先ほどまで考えていたことが交じり合って顔の温度が急激に上がってくるような錯覚を覚えた。
「どうしたの?顔、赤いよ?」
「え?」
自分でもはや何を言っているのかはわからないが、自然な流れで会話が成立していた。よくよく考えてみれば自分が部長のそばから離れていただけであって部長の対応は今までどおりだった気がしてきたのだった。
仲直りなんてする必要もなかったのかもしれない……そう考える。
そして、その後も以前のように会話しているともよおしてしまった。
「……ううっ」
すぐさま携帯電話を取り出して友人二人に扉を開けてくれるよう頼もうと考えたのだがそれをしたら部長に電池が切れていないことがばれてしまう。隙を突こうにもどうしようもない距離だ……すぐにばれてしまうだろう。
我慢するために足をもじもじしていると部長の視線に気づく。
「どうかした?」
「べ、別に……どうもしていません」
ごまかしてみたものの、どうやら気づかれてしまったらしい。あっという間に真剣な表情になり、いつもの緩んだ表情とはまったくの別人、いつもは癒されるような感じだがこういうときは頼れそうな感じだった。
部長は普通にドアノブを回して軽く押した後、部屋の端から助走した後に扉にとび蹴り。しかし、扉は壊れず部長が床で悶絶するだけだった。
「……う、ううっ」
もうそろそろやばい……携帯電話を取り出していつでも電話をかけることが出来るようにしておく。
部長のほうを見ると立ち直ったのか再び、ドアノブをまわしていた。今度は身体全身で開けるような感じで押している。
「ふぬぉ、ぬぉぉぉぉっ……!」
徐々に扉が開いていき、その隙間が楽園へとつながる細い道のような気さえ思えてくる。
部長が少しだけ開けてくれた隙間から何とか抜け出し、女子トイレへと佐竹一二三は急ぐのだった。
――――――――
「いやぁ、まさか閉じ込められるとは思わなかったね」
「そ、そうでしたね」
「一二三ちゃんも大丈夫だったようだしよかったよかった」
まさか自分が黒幕ですとも言えず、冷や汗をかきながらの下校。夏が近づいてきているためかまだ完全な暗闇ではないために足元をちゃんと確認できる。
「……あの、部長は閉じ込められていたときどんなことを考えていました?」
「僕?僕は……そりゃ、大変だな~って、それで、次は……まぁ、一人じゃなかったからそんなにあせらなかったね」
「え?」
つい、聞き返してしまった。
「一緒に閉じ込められたのが一二三ちゃんだし、結果的に一二三ちゃんのおかげで脱出できたようなものだし……いやぁ、人間ってすごいね~。誰かのためにならがんばれるっていうのを今日は学んだ気がするよ」
「誰かのために?……じゃあ、部長は一二三のために頑張れたってことですか?」
そう訊ねてみると普通に頷かれてしまった。
「そりゃまぁ、そうでしょ?だって、緊急事態だったんだからさ」
「……」
今、思い出しても恥ずかしい。確かに、緊急事態だった。あれ以上の緊急事態はなかなかないだろう。
隣の部長は何処を見るでもなく、歩いている。
「ああ、それと久しぶりにゆっくり話が出来てよかったと思ってるよ。一二三ちゃんとなんだかギクシャクしてたからさ」
「……え?あ、はい……」
「じゃ、また明日ね」
「え?」
気がついてみたら分岐点。部長である間山霧之助はすでにその方向へと歩を進めていた。
「あの……また明日」
「うん、じゃあね」
たまには、閉じ込められるのも悪くないかもしれない……次、閉じ込められるときはちゃんとトイレに行っておこう。そう決心を固める一二三だった。
幼稚園の最後、つまり卒園式の日に『消防士になりたいです』といったのは間違いなくあれは急場しのぎの嘘でした。思えば、嘘ついてばっかりの人生のような気がしてなりません。嘘、つきまくりっ!!年に一回は嘘をついています、そんな雨月でごめんなさい。さて、前も言ったかもしれませんが、軽トラに乗ったおじいちゃん、おばあちゃんは危ないですね。雨月が田舎に住んでいるかもしれないので都会のほうはわかりませんがとりあえずお年寄りの運転している車がものすごく、恐い。こっちが優先のはずで自転車をこいでいるといきなり曲がり角から軽トラが……一日、一回ぐらいは本当に撥ねられそうになります。悪質なものになると撥ねそうになっているのに、気がついていない、そっちが悪いのになぜかにらまれるなどなど。凶器を運転していることをもう一度考え直して欲しいと思います。飲酒運転なんてもってのほかです。酒飲んで一本の綱の上を渡れるはずがありません。みなさんも飲酒運転はいけないですよ?ああ、もちろん自転車も使っちゃ駄目です。セグウェイだったらいい……かもしれませんね。それでは、アンケートなどまだ待っています!十二月二十八日月曜、二十時三十一分雨月。