第二十三話◆
第二十三話
問答無用というか、悠のお父さんと悠に連行されるような形で応接間へと連れて行かれた。天井は高く、畳のいいにおいがしておりお茶(きっと高級だろうな)が湯気をたてている。ああ、飲むのがもったいないお茶だ。
「しかしまぁ、驚いたな。君が悠の友達だなんてさぁ」
「え?ああ、そうですね」
「思えば学生服を着ていたのだから悠に特徴を教えて探してもらえばよかったよ」
「特徴ないのが特徴ですから」
「何言ってるの、優しいじゃない」
それ、多分特徴じゃないからね。そう思うが父親と母親が同じ場所にいては突っ込めない。母親のほうは先ほどからニコニコ笑っておりものすごく居心地が悪いというかなんと言うか……どうしよう?遊びに来たんだから体感三十分程度で帰るわけにも行かない。ちらりと時計を見るとまだ十分も経っていない事に気がついた。
「悠が飛び級だって知ったときは驚いたが一番は友人ができることが心配だったな」
「そうですね……霧之助さん、どうやってうちの悠と出会ったのでしょうか?よろしければ教えていただけませんか?」
「ああ、それはですね……」
階段から降って来たんですよと言おうとして悠が首を振っていることに気がついた。しかし、嘘をつくのも憚れる。
「……悠がちょうど困っていたところを偶然通りかかって助けてあげたらよく話すようになったんです」
悠が親指をぐっとたてているところを見るとこれが最善の方法だったのだろう。よしよし、なんとか危機は去ったな。
「あ、それとこの前他の友人とごたごたが起こったとき悠が助けてくれたんです……そのときは本当に友人のありがたさを痛感しました……」
しみじみとそんなことを言っていると顔を真っ赤に染めている悠が僕の隣に座っている。しかし、両親は驚いたような顔をしていた。
「ほぉ、悠がそのようなことを?」
「興味深い話ですね」
「え?そうなんですか?」
「ええ、悠は……」
「霧之助、あたしの部屋で話そうよ。じゃあね、お父さん、母上」
そういって座っていた僕を引っ張ってその部屋を後にしたのだった。
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「へぇ、意外と整頓されているんだね」
「そりゃそうでしょ。綺麗じゃないと勉強なんてする気が起きないし……まぁ、友達が来るなら普通は掃除するだろうし」
きょろきょろと部屋を見渡してみると、写真たてが倒されていることに気がついた。近づいて起こそうとするとものすごい勢いでやってきた悠が僕と写真たての間に収まる。
「ここここここれはぜぇったいに見ちゃ駄目だからね!」
「え?何で?」
「駄目ったら駄目だから!」
ははぁん、なるほどな。
「わかった、それに写ってるのは悠が好きな男子の写真だな」
「うぐぅっ……そ、そう。だ、だから絶対に見ちゃ駄目だから」
「わかったよ、悠が見ちゃ駄目だって言うのなら見ないって約束する」
「約束よ!やぶったら末代までたたってやるんだから!」
びしっと人差し指を突きつけられてたじたじとなってしまう。倒れた写真たて中の人を知りたいのだが、知ったら末代までたたってしまう……これってあれか?保健体育でならったジレンマってやつだろうか?
「見ないって約束するけどそれが誰かっていつか教えてくれる?」
「えぇっ!?何で!」
だろうね、そういわれるとわかっていたから僕は驚かない。まぁ、絶対に教えてもらえるとは思わないだろうし。
「ん〜……強いて言うなら友達だから?あんな行動力を持ち合わせてる子が好きになった男って誰か知りたいからかな」
「……」
しばしの間沈黙している悠だったが少しだけ顔を染めて、僕から顔を背けてうなずいた。
「わかった、いつか教えてあげるわ……」
「ごめんね、無理言っちゃって」
「ううん、気にしないで……」
その後は特に何をするでもなく、暗くなるまで神経衰弱をやりまくった。当初は面白くもなかったが絶対に一勝はしてやろうと思ってやってみたものの数十回したのに勝てなかった。
気がついたら二十話を突破していましたね……三話後に気がつくなんて遅すぎた気もしますが……これでとりあえず悠のはなしは終わりです。感想などありましたらぜひともよろしくお願いします。