表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/283

◆◆第二百二十九話◆◆◆:3本足の生命体

第二百二十九話

 午前の部もほぼ、終わりのほうへと向かっていた。特にこれといって重大な問題が起こったわけでもなく(ぶっつけ本番の百足競技にてまったく息のあっていない連中がいたりしたが)体育祭は滞りなく進み(そういえばさきほど、クラスメートの野中君が運ばれていった)今行われている障害物競走ももう、そろそろ終わる。次の競技は二人三脚である。

 グラウンドをうろうろしているとなにやら困った表情の早乙女さんを発見した。さきほどもトイレを探してうろうろしている保護者の型を見つけたわけだけども、この学校の早乙女さんがトイレの場所を忘れたとかそういったオチではないだろう。

「どうしたの?」

「……見つからないのよ」

 え?マジでトイレが見つからないの?と、普段の僕だったら考えていただろうが体育祭実行委員の神様でもいるのだろう。今日の僕は冴えていたりする。

「……わかった、競技の相手がいないんだね?」

「ええ……というより、野中君が何処にいったか知らない?」

「さっき、救護テントに運ばれていったよ」

 多分、貧血であろう。彼のガッツは一部の人がきちんと賞賛してくれるに違いない。

「…どうしよう」

「まかせて、こういうときこそ実行委員は力を見せるときだからね!」

 普通、実行委員は協議に参加することが出来ないわけだけども……こういった補欠要員としてはいいのである。一人が参加できる種目数に限りがあるために運動神経抜群の奴が他の競技に参加できないように補欠は実行委員がやるというのがこの学校の伝統?らしい。

「で、何の競技に出ればいいの?」

「……二人三脚」

「わかった!行こうか?」

 けんかをしている状態の(ただし、一方的)二人が二人三脚とは実に皮肉なものだが……まぁ、そんなことはどうでもいい。

 委員の人が僕を見たとき『ああ、珍しく呼ばれたんだな』といった表情を見せてがんばれよといってくれたりもしたわけで……作戦会議を始めることにした。

 二人三脚は一年生、二年生、三年生にバトンを渡していくのである。つまり、必然的に三年生の僕たちはアンカーとなるわけだ。

「じゃ、早乙女さん……最初は外側から出そうか?」

 一年生が一周、回ってくる。どこも練習に余念がなかったのか、あまり差はついていなかったりする。

「……わ、わかったわ」

 一年生第二走者から二年がスタートして二年第二走者がスタンバイ。早乙女さんが所属しているブロックの二年生と他のブロックの人が火花を散らしながら大体同じぐらいのスピードである。

「三年生、次準備をお願いします」

 委員の人に言われて準備する。二人三脚って二人の溝が深いほど、転倒率が上がり、スピードが下がる……そんなわけで、僕はぴったりと早乙女さんに引っ付いた。

「え?ちょ、ちょっと?」

「……ごめん、だけど離れてたらこけるから。しっかり僕の腰に手をまわしていてよ?」

「わ、わかったわ……」

 密着状態でバトンが来るのを待つ。そして、バトンが手渡されて……僕らはグラウンドを誰よりも早く駆け抜けるために外側の足を踏み出したのだった。



――――――――



「ってええっ!?あの女は誰よ!?」

 観客席、ああ、二人三脚出てみたいなと思っていた野々村悠は競技に出ないといっていた友人が出ていたことに気づいてそんなことを口走っていた。駅で申し合わせるように一緒になったほかの女の子たちも驚いていたりする。

「……里香、あれ誰?」

 宮川雪が偶然近くにいた友人に話しかけると、里香は微妙な表情で口を開く。

「えっと……早乙女桜って子かなぁ……霧之助とは結構因縁があったりするって噂よく聞くよ?」

「……」

「……」

 悠子も由美子も、黙りこくってじっと走っている兄の姿を見つめているが、口元ではなにやらぶつぶつつぶやいていたりする。

「「こけろ…こけろ……」」

 そして、その願い(呪文?)が届いたのかどうかは知らないが……早乙女桜の足はもつれ、隣の間山霧之助を巻き込むようにして転倒したのであった。



――――――――



「あいたたた……」

 何があったのかはわからないが、こけてしまった。目の前には早乙女さんの顔がある。

「だ、大丈夫?」

「……え、ええ……ごめん、こけちゃった」

「いいよ、もう。一着でゴールしたあとにこけたんだからさ」

「え?そ、そうなの?私たちが……一位?」

「そうなるね」

「…はぁ~」

 アナウンスが『三年生一凹凸コンビといわれる早乙女、間山ペアがなんと、ダークホースとして現れました!』というのが非常に恥ずかしかった。早乙女さんも怒るかな?そう思っていたのだがどうやら一生懸命走っていたために聞こえなかったようでほっとしたりする。

「あのさ、そろそろ……どいてくれるとうれしいんだけどな?」

 僕の上にいる状態だし、何より他の人が見ていて非常に恥ずかしい。いや、ね、周りの人がいなかったらよかったのかといわれると非常に困る。

 遠くのほうでは聞き覚えのある声が『あんた何押し倒してるのよっ!』と叫んでいる気がしてならなかったりする。

「え?あ……ごめん」

 慌ててたって離れようともするが足首が固定されているために彼女は見事に転んでしまった。会場から笑い声が聞こえてくる。その間に足首をつないでいた紐をはずしておくとしよう。

「あいたた……」

「はい、立てる?」

 右手を差し出しておくとその手に彼女の右手がおかれる。

「え、ええ……」

 立ち上がらせて委員から渡されたタオルを早乙女さんに渡す。

『美しい友情です!皆様~、間山、早乙女ペアに拍手をお願いしますっ!!』

 おいおいと思いながら放送席のほうを見ると親指を立てていたりする。い、要らない演出を……

 会場から拍手が鳴り響き、恥ずかしかった僕は早乙女さんを連れてとりあえず、救護テントのほうへ向かった。ちょっと嫌な音が彼女の足からしてきたからである。

「……捻挫しているようだね。大事をとって今日はもうここでおとなしくしていなさい」

「……はい」

 なんだか黙りこくってしまった早乙女さんを一人で残すのは(テントの隅のほうに倒れている?野中君を発見した)どうかと思ったけども、そろそろ僕は仕事がある。

「じゃ、そこでおとなしくみててよ」

「あ、間山……」

「何?」

 振り返るとそっぽを向いている早乙女さんが映った。

「ちょ、ちょっとだけかっこよかった」

「……そう?ありがとう」

 仲直り……出来たよね?


後書きでやりたいほうだい書き放題……きっと、やってもいいと思うんですよ。殆ど誰も読んでいないようですからね。さて、今回の話はどうだったでしょうか?いつもより若干長い(そうでもないか)話のような気がします。しっかし、もう年末ですよ。何かクリスマスに特別な話でも投稿したいものですね。『サンタVSメカサンタ』……ってのはどうでしょう?冗談ですよ、冗談。それはともかく、贅沢かもしれませんが感想とか欲しいものですね。昔は起爆剤が欲しいと書いていたらくれた方がいたのですが……まぁ、面白い小説を書いている方のところにはきっと感想がざっくざっくあるに違いありません!わけてもらえるよう交渉を……無理でしょうね、やっぱり。気の利いたフレーズを残せば感想をいただけるはず!そういうわけで即興で考えてみました!『貴方の感想が、路頭に迷った作者を救います』って普通ですね。『感想欠乏症にかかった作者を救えるのはワクチン(感想)を持っている読者の方々のみです』ってのはどうでしょう?いいフレーズがありましたらどうぞ、教えてください。まだまだ、アンケートのほうは待っていますのでお気軽に教えてくれると作者のお尻に火がついたりします。十二月二十三日水曜、八時十九分雨月。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ