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◆◆第二百二十五話◆◆◆:里香の心意気

第二百二十五話

 商店街の中で一番繁盛しているであろう、魚屋に連れて行かれてそのまま奥座敷へ……気がついたらちゃぶ台を囲んで三者面談(僕、里香、おじさん)が行われていたりする。ああ、そういえば学校の三者面談も夏休みに入るか、入らないかのところであると聞いた気がする。

「……で、だ……お前は里香の何なんだ?」

「そういわれましても……」

 この人の顔を見せることが出来たならば恐怖を分かち合えたことだろう……だが、世の中には見なければよかった、聞かなければよかった、言わなければよかったという……三つの後悔があるのである。

 三位一体トリニティとは言ったもので、テレビの上におかれている見ざる、聞かざる、言わざるの合体した置物が置いてあったりする。

「……里香、こいつは一体全体なんだ?」

「友達だよ……父ちゃん、それより恥ずかしいからこういうのはやめてって」

「大切な娘に悪い虫がついたら大変だろうがっ!!」

「……その気持ちはうれしいんだけど……霧之助はそんな悪い人じゃないから」

「……本当かぁ?」

 里香に聞いたのではなく、僕のほうを見てくる。ここは頷いておかねば何をされるかわからない。

「本当です」

「……どのぐらいの友達だ?同じ釜の飯を食う仲か?」

「ま、まぁ、それはあるかと……」

 里香のほうを見ると頷いている。うん、このぐらいの友情はあるようだ。

「……裸の付き合いもできる仲か?」

「それは……」

 どう答えればいいのかさっぱりわからないので里香のほうを見る……と、彼女は頬を染めて下を向いている。きっと、きっとノーだ!そんなのイエスなんていったらどうなるか想像するだけでも恐ろしい!

「ノーです」

「……正解だな」

「何がですか……」

「今、お前がイエスと答えていたら今頃お前は高畑という苗字に変えなきゃいけなかったからな」

「……ほっ」

 胸をなでおろしたのだが、それがいけなかったらしい。

「んだと?こら?お前、高畑って苗字を継ぐのが嫌なのか?」

「え?いや、そういうわけじゃ……」

「え~と、嫌だった?」

 そして、何処か、深く傷ついた感じの里香がそこにいたりする。相乗効果で……

「お前、里香を……許せん!」

 おじさんが凶暴化!?

「失礼しましたっ!!」

 身の危険を感じた僕はトンズラを開始する。もう、この商店街にはこれないな……



―――――――



 命からがら、公園まで逃げてきた。

「さぁて、どうしたらいいんだろう……」

 なんだか、里香と仲直りしようと思っていたんだけどうまくいかないな……このまま気まずい感じで残りの高校生活終わらせちゃったらお互い嫌だろうし……

 ブランコをこぐことなく、頭を回転させる。

 悩め、悩んだらそのまま大きくなるぞ、少年!そういう人もいるだろう。しかし、悩んでいるこっちは誰でもいいから助けが欲しかったりする。勿論、適当に登場して場を引っ掻き回して逃げるという最低な人物は願い下げであるが……

 いきなり、視界が暗転した。

「だ~れだっ」

「……」

 この声……やれやれ、この程度で僕を欺こうなんてなめられたものだな……

「雪ちゃんだっ!!」

「父ちゃ~ん!!ここにいたよ~!!」

「嘘!嘘!!嘘だから!!!里香だよね?高畑里香!!」

「せ~かいっ!もうっ!!素直に答えればいいのに」

「……ちょっとね、悪戯を…」

 隣のブランコに腰掛けて里香は笑っている。お、このタイミングなら謝ることもできるかもしれない。

「……あのさ、無神経なことを言ってごめん……」

「……ああ、屋上のこと?」

「うん」

 里香はブランコをこぎ始める。

「……気にしてないから、言われて考えた……思えば大会で白黒つければいいんだもん。市民プールで偶然出会ってそれで対決しただけだからね」

「……し、市民プールで?」

 市民プールという単語を聞くだけでなんだか抜けた炭酸のようなイメージをうけてしまう。そんな場所で対決したのかよ……

「うん、今から練習して、いつか絶対にリベンジ果たして見せるからね!」

 気がつけば立ちこぎへと移行していた。そしてブランコから飛び降り、里香は綺麗に着地、パイロットを失ったブランコはいまだに振り子運動を続けていた。

「一回、負けたぐらいであきらめるなんてあたしらしくない……だからさ、しっかり見ててね?」

 親指を突き立てて僕に笑顔を見せてくれる、いつもの里香だ。

「……じゃ、あたしもう帰るから」

「……送っていこうか?」

「いいよ、送っていってもらったら霧之助が襲われるし」

「……」

 そうでしたね……

「じゃ、また学校で」

「うん、ばいばい」

 夕焼けに消え行く里香を見送って、僕も家に帰ることにした。ともかく、これで里香のことで気兼ねする必要はなくなったわけである。


まぁ、気がつけば第三章のヒロイン全てが登場したわけです。一期、二期、三期の中で今のところ人気なのは百合、結ってところでしょうか?他のヒロインにもがんばってもらいたいものですが(特にメインヒロイン達)こればっかりは無理でしょうね。さて、これでようやく里香の話が一区切りしたというわけで……体育祭の話を続行……というわけでもなく、まだ残っていたりします。ええ、そうです。霧之助が怒らせてしまっているのは里香だけではなかったりしますからね。仲直りするのはいつになることやら……それではまた次回、さようなら!十二月二十日日曜、二十一時一分雨月。

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