◆◆第二百二十四話◆◆◆:追いかけっこ(里香)
第二百二十四話
悠子が帰るのを見送って以降の時間は暇だったわけで……たまには町を歩くかと考える。どうも、最近調子が悪いというか運が悪いというか……それなら、おとなしく家にいたほうがいいと思うかもしれないが僕は台風の日とかに外を歩きたくなる人間である。
そんなわけでうろうろしていたけだが……商店街へと続く曲がり角を曲がったところでとある人物とであった。
「あ、里香~!!」
「……ぷいっ」
すぐさま回れ右をして走り出す。
「え?何で……逃げるの?」
そうつぶやいてぼさっとしていたのだが魚屋のおっちゃんがタコのような顔を僕に向けていた。
「何ぼさっとしてるんだっ!!さっさと追いかけやがれ馬鹿ヤロー!!」
「は、はいっ!!」
こうして、僕対里香の理由がよくわからない追いかけっこが始まったのであった。しかし、よくよく考えてみたら相手は運動部でこっちは文化部である。勝てるはずがない、というよりはすでに追いかけようとした時点で里香は彼方に消えていたりする。なぜか、文化部の僕のほうにハンデがついていたりするのだ。
「ぜぇ、ぜぇ……げほっ、げほげほ……」
もはや、限界だ……立ち止まろうとすると後ろから声が聞こえてきた。
「こんなところであきらめるのかっ!!」
「……ええっ!?魚屋のおじさんっ!?」
後ろから魚を持って追いかけてきている。その顔が百年生きて妖怪となったたこ又のようだったために気合を入れて僕は走ることにした。
きっと、つかまったら三枚におろされてしまうに違いない。
「男は気合、根性、努力だろうっ!!根性さえあれば何でも出来るっ!!」
「こ、根性論……」
なんだかわからないがおっさんが怖い。そういうわけでさっさと走る。目標は里香ではなく、里香を超えることに脳内にてシフトする。
幸か不幸か、里香は足を止めていた。もう、僕が見えなかったからとめていたのだろう。それは僕にとって非常に都合がよかったわけなのだが、後ろのおじさんの声が大きい。
「おらおらおらおら!!走りやがれっ!!」
そんな声が里香の耳に届いてしまったのだろう。後ろを振り返った。
「え?父ちゃん?」
「と、父ちゃん?」
あの化け物が!?……失礼、あのデビルフィッシュ的な顔の持ち主が?里香とぜんぜん顔が違う気がするんだけど……ああ、お母さんに似たのかな?
「里香ぁっ、こいつに追いつかれるなよっ!」
「は?はぁっ?」
しかし、里香の身体はすでにアスファルトを疾駆していたりする。
「さぁ、お前も走れ!男は女を追いかけるもんだろっ?」
「いえ、そういわれましても……」
状況がまったく把握できない僕に理解できることは一つだけ。ともかく、あの夕日ではなく里香に向かって走ればいいのである。
「ぬぉぉぉぉぉっ!!!」
気合と根性によってかはわからないが(多分、彼のお父さんの影響だろう)里香にもうちょいで触れることが出来るという距離までやってきた。
「そうだ、そしてそのまま捕まえる!」
「わかりましたっ!!」
肩に触れようとすると後ろからおっさんが激突してきた。
「気安く俺の娘に触るんじゃねぇっ!!」
「ええっ!?」
り、理不尽すぎるぅぅっ!そんな僕の叫びは五月晴れの中、ゴミ箱激突音によってかき消されてしまったのだった。
「だ、大丈夫っ?」
「……」
ああ、目の前には、触れることが出来る範囲には、里香が…里香がいるけど……もう、怖くて触れない。
かすんでゆく視界に慌てて駆け寄ってくれる里香だけの存在が映り……直後に首根っこを掴まれる感触を覚える。
「おら、お前ちょっとこいっ!!」
「……」
視界がかすむこともなく、まるで僕はお魚をくわえて魚屋から逃げ出そうとした猫のような扱いを受けた状態で連行されていったのだった。
一匹狼を貫くにはどうしたらいいか?孤高な男になるにはどうしたらいいか?クールな印象を与えればいいのです!しかし、その結果……あの人、いつも一人でいるけど友達いないのかな~?とかうわっ!根暗だ~……そんなことを言われる可能性大です。所詮、世の中顔ですよ。さて、また話は変わりますが歴史のあるとあるギャルゲーをやりました。一人目クリアして二人目……幼馴染にしましたが……怖いですね~。ヤンデレって奴だそうです。ぬふぉっ!?っとそんな感じでやってましたよ。っと、またゲームの話をだらだら話しそうになりました。まぁ、それはいいんですよ?置いておきましょう。そして、思うんです。あのゲームどんだけファイナルやるんだよっ!!と。あのゲームのキャッチコピーって何ですかね~……『終わらないファイナル』?まぁ、これを読んでくれている方(多分、少ないだろうけど)の中にはいるかもしれませんが雨月は王道的ゲームはあまり好きじゃありません。だいぶ、話が長くなってしまいましたが……今後の予定として里香の話を永遠やっていきたいかと……それは無理ですけどね。ともかく、絡まった状態の紐を霧之助が一生懸命解こうとするハートフルな未来を予想しているのならばそれは見事に外れてしまうでしょう。どこか抜けてしまっている鈍感な主人公、間山霧之助(旧姓?乙姫霧之助)をよろしくお願いします。十二月二十日日曜、八時四十九分雨月。