◆◆第二百二十三話◆◆◆:悠子 in room
第二百二十三話
家に帰って基本的にすることは留守電のチェック、部屋やお風呂の掃除、冷蔵庫の確認と今日の献立を決定する。無論、足りなければ買出しに行かなくてはいけないわけだが……アパートの扉が開いていることに気がついた。
「……」
ま、まさか……僕の王国に泥棒が?盗られて困るものなんて……ああ、そういえば猛から借りていた本がちょっと大切かもしれない。眼鏡で長髪の子の写真集だ。エッチなものじゃなくて、普通のやつね。
なんだか結構高かったそうなのだが貸してやるといわれたのである。まぁ、僕だって男の子なのだ。女の子に興味がないというわけじゃないし……
そんなことよりも今は泥棒が入ったかどうか確認しないといけない。
「……」
静かに、一切の音を消したかのように廊下に靴下に包まれた足を載せる。そして、そのまま歩いていくと台所がある場所に……
「ゆ、悠子!?」
「やっぱり驚いたわね」
そんなものはあなたが生まれる前からわかってましたといった感じの顔で悠子が席についていた。その手には猛の本が握られており、めくられている。
「……ふ~ん、お兄さんってこういう娘が趣味なんだ……」
「いや、趣味って言うか……」
「……眼鏡は……いいか。けど、背、足りないな……牛乳飲まなきゃ」
「え?何かいった?」
「ううん、何も……」
いまだに悠子の手の中に握られている兄としては非常に恥ずかしいそれをどうやって奪還しようかと考えていたのだが思考がとまる。
「え?何で悠子がいるの?」
「いちゃまずかった?」
「いや、そうじゃないけど……もしかしてこっちに住むことになったとか?」
それだったらうれしい。帰ってきてただいまといっても誰も反応してくれないのだから。電話でも声を聞いたりするがやっぱり面と向かって話すことが出来る。純粋に楽しいと感じることが出来るし、なんだか悠子が成長したようで……にわか兄貴だけど本当にうれしい。
「……そうだったら私としてもよかったんだけど……違う」
「そっか、残念……で、どうして来たの?」
「一ヶ月に一回は言って欲しいっていわれたから来ただけ。いっそ、こっちに住んじゃおうかなって思ったけどね…私にはあの子がいるから」
「そっか……」
由美子も相変わらず元気なんだろうな……凹凸姉妹がどんな生活しているか一度見てみたい気もするんだけど……今度聞いておくことにしよう。
「あとね、お母さんがお兄さんに『会ってくれてありがとう』だってさ」
「……悠子、そのことについて何か聞いてる?」
きっと、あの(元)親父のことをいっているのだろう。思えば、僕より母さんが会ったほうが記憶を戻すのに役に立ったのではないのだろうか?
「……ううん、私は何も聞いてない。もちろん、その意味もね……」
「……あの、実は……」
しゃべろうとした僕の口に悠子が手を当てる。
「ううん、言わなくていい。私が聞いたところでどうしようもないっていうか、蚊帳の外の話なんでしょ?つながりはあるかもしれないけど、殆ど無意味」
「……そうだね、それより今日は泊っていくの?明日休みだよね?」
「本当はどうしようかなって思ったけど……まず、布団とかあるの?」
「大丈夫、この前悠がきてたから買ってきた……」
そういうと胸ぐらつかまれていた。
「え?今、何ていったかな?ちょっと聞こえなかった」
「悠が来たんだよ、GWに」
「布団がどうとか……っていってたけどもしかして泊まっていった?」
「うん、泊まっていったよ?僕、風邪ひいててどうしようもなかったから追い出せなかったし」
「……風邪、ああ、それなら大丈夫か……」
「何が大丈夫?」
「気にしないで、ああ、だからあの時あの子はにやにやしてたのか」
一人ぶつぶつ言っている悠子を放っておいて冷蔵庫の確認をしようとしてやめた。
「よし、じゃあ、これから買い物にでも行こうか?ハンバーグを作ろうかなって思ってるから」
「……そう、ありがとう……私もついていくわ」
「じゃ、二人で行こうか……」
「うん」
その後、僕と悠子は久しぶりに二人きりで長い時間を過ごした……といったらなんだか誤解されるがまぁ、高校一年生のときの思い出話をしながら時間を多く過ごした。
先ほどサブタイトルと話数がぜんぜん合っていない部分を発見しました。大幅な修正を行ってみましたがうまくいっているかどうか……自信がありませんがそうであると信じることにしましょう。さて、徹夜をしてみましたが……きついですね。ちょっと寝ようと思って気がついたら夜になっていました。徹夜、意味ないじゃん!叫んでみたものの寒さが身にしみるだけ!そういうわけで今日はさっさと寝ることにしましょう。夜寝るのが遅い人はたまには身体をゆっくり休ませて上げましょう。では、感想まってます!十二月十九日土曜、二十時十二分雨月。