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第二十二話◆

第二十二話

「ごめんね、霧之助。わざわざ手伝ってもらって」

「ははは……いいよいいよ。別に気にしないでいいから」

 五月中旬、夕方といえど暑くて袖をまくっている。家に帰る途中、年下だが同級生(彼女は飛び級である)の野々村悠とであった。そのとき彼女はものすごく重たそうな箱を持っていたので代わりに持っていてあげたのである。もっとも、そうするように仕向けられたというかなんと言うか……

「へぇ、霧之助って困っている人を助けるよりも妹のご飯を作ってあげることのほうが大切なんだ」

 その言葉はきっと今後も応用されたりして僕に使用されることなのだろう……。

 まぁ、そんな経緯があって悠の家までそれを持っていくことになったのだが悠の家に着いたとき唖然としてしまった。

「こ、ここ?」

「うん、ここ」

 そこには日本家屋というか、まるで高そうな料亭のような建物が建っていたのだ。玄関の前に簡単な門があるような感じで、門と玄関の間には石畳があって庭は左右に広がっており、鯉が泳いでいるような池まであった。

「ただいまっ!!母上っ!!」

「……」

 かてぇ、超堅そうなところにきちゃったよ悠子……僕、これからどうしたらいいんだろう?

 帰るか、残るか迷っているとどうやらタイムアップのようだ。若草の着物を着た一人の女性がやってくる。その容姿はまさしく野々村悠が成長したらこんな風になるんじゃないのかなぁって感じの綺麗な女性だった。まぁ、うるさい……じゃなかった、ものすごく明るい悠とは違って穏やかそうな女性でもある。

「母上、ただいまっ!!」

「お帰りなさい、悠…あら、こちらの方は?」

「友達。これわざわざ届けてもらったんだ」

「あらあら、それならお礼をしなくてはいけませんね」

「いえ、結構です……妹の夕食を作らなければならないので」

 冷や汗が流れているのは何故だろう?ううん、やっぱり僕はこういった御堅いところは肌に合わないってことなんだろうな。

 悠子を逃げ出すための言い訳として使ったわけだが別に問題なんてないだろう。そう思っていると悠のお母さんは残念そうにうなずいた。

「妹さん?そうでしたか……後日また改めていらしてください」

「え〜っ、もう帰っちゃうの!?」

 悠は隣で騒いでいる。母親がいる手前、いつもみたいに馬鹿をやっていられない。

「あはは……まぁ、しょうがないよ。また今度来るからさ……」

 もちろんこれは口約束。多分、二度とここにはこないだろう。

「ちぇ、じゃあ絶対に来てよ?約束だから、指きりげんまん」

「うん、多分来るよ」

「絶対!」

 そういって小指を絡めてくる。

「う、うん……ゆ〜びきりげ〜んまん」

「嘘ついたら針死ぬまでの〜ますっ!!」

 昏い笑顔でこちらに微笑みかけてくる。うわっ、おそろしい子だな……そんな娘をほほえましそうに笑う母親。

「……指切った」

 よし、帰ろう。悠母に頭を下げて悠に手をふり多分来るからと告げてさっさと走り出す。うぅん、時間を食ってしまったから冷凍物のコロッケを買って帰ることにしよう。




 これが二日前のこと。そして、一日前、一つ面倒なことに自ら首を突っ込んでしまった。




 一人で帰宅途中、スーツを着込んだものすごく大柄の男性が絶望的な表情をして立ちすくんでいた。鬼の目にも涙って感じだろうか?いやいや、あれってこういうときに使う言葉じゃなかったな。

「どうしたんですか?」

「ん?ああ、コンタクトを落としてしまってな……探しているところなんだよ」

 そうなんですか、がんばってくださいなんていって放っておけるほど僕は酷い人間ではない。

そう、たとえ相手がヤから始まる職業の人が相手だったとしてもだ。どこで因縁を吹っかけられるかわからない……あの時こいつはコンタクトを探してくれなかったからコンクリートを抱いて沈んでも文句はないはずだとか言われる可能性がないでもない。未来の僕を生かすのも殺すのも今の僕の選択肢、探すか探さないかにかかっているはずだ。

「手伝います」

「おお、それはありがたい……予備の眼鏡もないためによくわからないのだ」

 そういうわけで四つんばいになって歩道を探す。近くの排水溝なんかに落ちてしまっていないだろうかと思いながら十分ほど探していると目的のものは見つかった。

「ありましたよ!」

「おおっ、ありがとう……君、名前は?お礼をしたいから」

「いえ、お礼だ何て……これで失礼します」

 何か態度が気に喰わなかったとかそういったことがあったりしたら大変である。そうしたら砂浜に埋められて満潮になりぶくぶくって……そんなことになったらいやである。普通の生活を送りたがったために僕はさっさと走り去った。




 そして、今日、約束を果たせと悠に言われてそのまま野々村家に引っ張られていった。さらに、感がいい人はわかるかもしれないがあのおっさんが、コンタクトのおっさんが、もしかしたら未来で僕のことを海に落とすかもしれないおっさんがちょうどいたのである。

「おや、君は……」

「あ、え……?」

「あれ?お父さん、霧之助の事知ってるの?」

 おとうさんおとうさんおとうさん……あれ?母上って呼んでるんだよね?父上じゃないの?


この小説で一番自慢できるところ……更新スピードの速さ、それだけです。画面の前で受けてくれた君、ありがとう。とにもかくにも、今回は悠のはなしになっていますね。次回も悠のはなしなので楽しんでくれたら幸いです。結局あれから宮川編の感想がきていないところを見ると百合ファンはそんなにいない、または終わりがめちゃくちゃだったってことでしょうか?けどまぁ、リアルに考えてあの程度しか霧之助にはできないんですよ。万能じゃないんです、霧之助は。霧之助なんて立派な名前のくせしてまったく立派じゃありませんし。悠子のほうが立派ですね。悠子主人公にすりゃよかった……さて、主人公批判はその程度にして、感想、個人的な意見お待ちしております。しつこいと思われる肩もいるかもしれませんが、すみません、挨拶みたいなものなんです。シメのラーメンのようなものなんです、ご了承ください。

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