◆◆第二百十二話◆◆◆:日常のぶれ具合
第二百十二話
明日から中間試験であると数学の先生がそういって今日の授業は殆どが自習。中にはお互いにちょっかいを出し合って遊んでいる生徒もいるが大抵の生徒たちが参考書を見ながら一生懸命自習に励んでいた。
「……」
しかし、僕は昨日であった人が一体全体誰なのか考えているためにまったく手がつけられない。どうも、僕と無関係というわけではないようなのだ。大体、無関係ならば僕の名前自体知っているはずがないし。
ぷすっ
「……ぷすっ?」
そんな音が聞こえたので音のしたほう……僕の左手を見るとシャーペンが刺さっていた。刺した本人はもちろん早乙女さんである。
「ぼーっとしてるわ」
「……うん」
「さっさと手を動かさないと私に負けちゃうわよ」
「……それは、わかってるんだけどね。ちょっと、気になることがあってさ」
「気になること?」
「うん」
はてさて、ここでごまかしたほうがよかったのか今のように素直に言ってしまってよかったのか……どっちなのか僕にはわからないし、今となってはもはやしゃべるしかない。どんな風に説明したものかと考えたが率直に言ったほうがよさそうだった。現に、早乙女さんは僕の言葉の続きを待っている。
「……昨日、家に帰ろうとしたら僕の住んでいるアパートに見知らぬ綺麗な女の人がいたんだ」
ぴくっと眉が動いた。あれ?なんだか説明間違えたのかな……
「……間違えただけじゃない?」
「僕の名前だって知ってたよ」
「……ああ、そう、わかったわ。ほら、話してすっきりしたでしょ?さっさと手を動かしなさいよ」
「……」
相談する相手を間違えたのかもしれない。
「返事は?」
「……はーい」
まぁ、けど、一人で考えるよりもこうやって誰かに話したほうがいいのかもしれないな。ちょっとはすっきりしたから早乙女さんにちょっとは感謝してあげてもいいかも。
しかし、このとき気がつくべきだったのかもしれない。
「……」
彼女の何か思うところありそうな表情を読み取れば……あんなことにはならなかったかもしれない。
――――――――
「で、何で早乙女さんが僕の隣にいるんだろう?」
「……だって、怖いんでしょ?誰だって見知らぬ相手が家の前にいたとき怖いに決まっているわ。だから、クラスメートの私がこうやって一緒に帰ってあげてるのよ」
「……無理しなくてもいいのに」
「無理なんてしてない!」
打てばそれ相応に響く人だったことを忘れていた。火に油を注ぐだけだ。燃える早乙女さんを(萌える早乙女さんだったらどれほどよかったことか)アパート前まで連れて行きはいさようならで終わるはずがない。
「……」
「……」
「何か話しなさいよ」
「え?あ、あ~……そういえば今日の晩御飯は何?」
「何で私にそんなこと聞くの?」
「……いや、早乙女さんの家の夕飯事情はどうなのかな~って……参考にしようかと思ってね」
「間山は……そっか、一人暮らしか……料理とか、洗濯とか……全部一人でしてるってことよね?」
「うん、まぁ……そうなるかな。こっちに転校してくる前もそういったことはしていたからなれてるよ」
「……そっか」
「……」
「……」
「何か話しなさいよ」
「え?あ~……」
もう、ネタがつきました。そんな感じの視線を送ると一つため息をつかれた。
「……」
「……」
沈黙を守ったまま、僕のアパートが見えてきた。
「あ、あの人だよ」
「あれが……」
二人で見る先には昨日の人がまたもやそこにいたのだった。
天気予報をみることなく、レインコートを装着。霧が発生しており、これでふったら最悪だな…そう思っていたら晴れました。レインコートは雨を通さず、ついでに湿気も通しません。片道一時間なので雨も降っていないのに服が濡れているこの状況……脱げばいいじゃん?時間ギリギリなのでそんな暇がなかったのです。時間がなくなったのは朝着る服が昨日降った雨で乾かなかったので乾かしていたからです。雨は好きですよ?そりゃ、雨月なんて名前つけてますから大好きです!十二月十一日金曜八時五十三分雨月。