第二十一話◆
第二十一話
「霧之助、ツンデレって知ってるか?」
「ツンデレ……うん、知ってるよ」
休み時間そんなことを猛が言ってきた。怖いのはこいつが真面目であること。まじめなときはいつもろくな事がおきず、一騒動を起こすのである。
「たしか、いつもはツンツンしているけどふとした拍子にデレってするんでしょ?」
「まぁ、大体そんなところだな……そして俺はお前の妹にもツンデレになってもらいたい」
「はぁ?」
そういうしかなかった。ツンツンな妹である悠子が出てくれるはずがないだろう……。
そう説明したところ一冊の本を手渡された。
「これ、ためしにやってみてくれ」
「はぁ?何で?」
「レポート提出してくれたら何かおごるからさ」
頼んだよとそういわれてさっさとどこかにいってしまう。引き裂いてゴミ箱にぽいしようかとおもったのだがさすがに酷すぎるだろう。そういうわけで僕はその謎の手帳を預かることにしたのだった。
――――――――
家に帰って手帳を眺めてみる。中にはよく理解できないことが書かれていたのだが……一応僕にも実践できそうだ。
「ただいま」
「お帰り悠子」
「お兄さん、今日は珍しく早かったのね。いつもは亀みたいに遅いのに」
そういわれて手帳の中を見る。なじられた後に心配されるような言葉をかけられればOKのようだな。
「悠子、ちょっと慰めるような言葉言ってくれ。ゆっくり構えてるお兄さんが大好き!とかさ」
「はぁ?何言ってるの?お兄さん、帰ってくる途中で頭打った?救急車呼んであげようか?」
ん〜……これがデレ?心配してもらっているようだし。これでいいのだろうか?何か違うような気がしているんだけど……
「やっぱり今のなし。もっとなじってみて」
「はぁ?」
ひかれた。気持ち悪そうな目でこちらを見ている。
「どうしたの?本当に病院連れて行ってあげようか?」
救急車呼ぼうか?よりもデレが上がってきているような気がしないでもない。
「いや、友達からこれ借りたって言うかなんというか……ともかく、悠子で試してみてって言われてね」
「貸してよ……」
手帳を勝手に読み進み、その表情は呆れというか、馬鹿にしたような感じだ。だが、とあるページで止まる。顔が見る見る真っ赤に染まっていってこちらをにらんでいた。
「ど、どうしたの?」
「これ、全部読んだのお兄さん?」
「読むわけないじゃん。そんな文字がびっしりあるやつ……ああっ!!何してるの!」
悠子は手帳をずたずたに引き裂いてゴミ箱へと放り込まずにコンロで焼却。灰が上に舞って塵へと変わる。
「これ、書いたの誰?」
「あ、知っているかな?黄銅猛ってやつだけど……」
「なるほど、お兄さんの近くにいつもいるあの男か……」
苦々しそうにそういう悠子に尋ねる。
「ねぇ、何が書いてたの?」
「お、お兄さんは知らなくていいこと!」
それだけ言って自室へと引っ込んでしまった。やれやれ、知ろうにも手帳はないし……ちょっと本人に電話してみようかな?そう思って猛の番号をプッシュする。
「あ、猛か?」
『おう、霧之助……もう試したか?』
「いくつか試してみたけどあの手帳燃やされちゃったよ。一回(救急車呼ぼうか?)ぐらいしかでれなかったよ」
『ほほう、まぁ、デレたんならいいけどな……』
「それよりさ、悠子がいきなり怒っちゃって……あの手帳の中に悠子が怒るようなことを書いてたの?」
『書くわけないだろ』
「そうだよね……じゃ、なんで悠子のやつ怒ったんだろ?」
知るかよといわれてそのまま切られてしまう。やれやれ、悠子七不思議のひとつに数えておこう。




