◆◆第二百五話◆◆◆:春の麗らかな……
第二百五話
よくよく考えてみたら彼女は自転車であり、僕は徒歩だ。逆に家に帰る時間が遅くなると気がついたのは校門出た後すぐだった。
しかし、まぁ、もうなんだか引き返せないために二人で徒歩で帰ることにした。
「あれから佐竹さん……」
「あ、あのっ!一二三って呼び捨てでかまいませんから」
「そっか、一二三ちゃんのほうには吉野先生から何か言われたかな?」
先生は予想以上に熱血だった。警察に言うことなく、独自の捜査を展開しているようである。実際、おとといの朝には事故が起こった時間帯に事故現場に立っていた。それだけ熱心なのだ。ぎこちない表情で挨拶したところ先生の瞳は真っ赤に燃えていた。
「大丈夫、間山君をひき逃げした奴は絶対に見つけるからね」
「は、はぁ、よろしくお願いします……」
あれは嘘なんです……とは言えなかった。
「え、えーっと、あれから一二三のところには別に何も……特に言われていません」
「そっか、それならいいんだけど……ばれたら怒られるよ、僕たち」
「そうですよね……嘘、ついちゃいましたし」
「これからどうしようか……」
二人してああでもない、こうでもないと話していると事故現場に到着。
「あ、一二三の家はこっちだから……」
「そっか、じゃあね、一二三ちゃん」
「はい!また明日!」
手を振って去っていった一二三ちゃんとは別の道を歩き始める。ともかく、残り少ない四月中に先生がこの話題のことを忘れる、またはぬるい結末についてもらわないと面倒なことになりそうだ。
――――――――
放課後間近となってグラウンドのほうからは運動部の元気な声が聞こえてくる。ぼけっとグラウンドのほうを見ていると肩を軽く叩かれた。
「間山、廊下で可愛い一年生がお前を呼んでるぜ」
「え?ああ、ありがとう」
四月の中盤だったのだが、早乙女さんのおかげでこのクラス全員の誤解を全て解くことができた。
「二股かよぉ?」
「……二股も何もかけてる股なんてないよ」
そういえば、隣のクラスに『七つの女を股にかける男』がいるらしい。ついでに、言うならさらにその隣のクラスには『九つの尻尾(男という意味らしい)を持つ女』がいるそうだ。この前、公開私刑を喰らっているやつを見かけたが……あの人がまるで海賊のような異名を持つ男なのだろう。女のほうはみたことがないが……いつも九人の男が彼女の後ろを歩いているそうだ。
しっかし、もてる男はうらやましいね。僕はまったくそういったことがない高校生活だったからなぁ……
「おまたせ、どうしたの?」
廊下に待っていたのはやはり、一二三ちゃんだった。顔を真っ赤にして廊下をきょろきょろと見渡している。
「あ、あのっ、今日もやっぱり図書館であるんですよね?」
「え?ああ、そうだね。他の文化部と違って毎日あるから……何か用事があったときは……そっか、ケータイのアドレスとか教えておいたほうが良いね」
「すすす、すみません……」
アドレスを交換すると回れ右してまるでロボットのように……去っていってしまった。
「なんだったんだろ?」
「……間山、次は移動教室よ」
そんな声が後ろから聞こえてきたので振り返るとそこには不機嫌を絵にしたようなクラスメートが立っていた。
「え?ああ……」
二年最後にあったときは腰まであった髪の毛だが、今は肩に届く程度まで……早乙女桜さんがそこにはいたのだった。
鋭き眼光、頭脳明晰、クールフェイス……といううたい文句を彼女につけてあげたらきっと知名度が上がるんじゃなかろうか?
「……何馬鹿みたいな顔をしてぼさっとしてるの?」
「え?ああ、いや、なんでもない」
「ほら、教科書も持ってきてあげたし、筆箱も!」
ああ、何でこう世話を焼かれてしまうのだろうか?
「……ほら、ぼさっとしない!」
「え?う、うん……」
右手を引っ張られて廊下を進む。廊下に立っていた生徒たちがこっちをみて噂をし始める。人はどれだけ噂がすきなのだろうか?
しかし、どの噂も僕が不良だとかそういった類のものではない。
「みて、また早乙女さんに振り回されてるわ」
「名ばかりって言うか、やっぱり噂なんて尾ひれとか胸鰭がついてくるものなのね」
「びびって損したぁ~」
そんなものばかりだ。もはや僕は恐怖の転校生ではなく見掛け倒しのへたれと噂されてしまっている。
しかし、別に悪くないかもしれない。早乙女さんのおかげでこんな風に普通の毎日を送ることが出来ているのだから。
「早乙女さん」
「ん?」
「ありがとう」
「……はぁ?」
ものすっごく意味がわからないといった顔をされてしまった。ま、仕方がないさ。
ふと、思うんですよ。雨月が絵をうまくかけたらなぁと。きっと、今頃を絵を描いていたんだろうなぁ、そう思うんです。しかし、天は二物を与えてくれません。雨月には一つもくれませんでした……とまぁ、ひねくれていたって始まりません。誰か絵を書いてくれる人いませんかねぇ……ああ、そういえばいまだエンディングは誰も送ってきてくれてはいません。みんな忙しいのだから仕方がありませんね。さて、愚痴っぽくなっちゃいましたが後書きを続けたいと思います。一年ぐらい前だったかどうか、もう覚えていませんがとあるギャルゲーをしました。今思えばあれが生まれて初めて全クリしたギャルゲーだったと思います。あんまりそういったゲームはしませんからね。それで、とある一つのエンディングを迎えたわけですが……いや、別にあそこで無理して別れなくてもよかったんじゃないのか?そう思いました。最初っからまた卒業してから付き合おうとかいっときゃよかったのになぁ……そんな気持ちでやるもんだからまったくもう、面白くない。一番最初に終わらせたキャラのエンディングには泣きそうになりましたが……ありゃないわ~そう思ってしまいましたね。今年のいつだったかな……賛否両論の後日談的な奴も発売されたそうですが興味ない人には興味なかったのでスルーです。っと、だらだら後書き書いていたんでここまで読んでくれている方がいたらうれしいです。今回の後書きのテーマは『アリとキリギリス』でした。知っている方はいるかと思いますがオリジナルは『アリとセミ』です。なんでも、外国の何処かにはセミがいないためキリギリスにかえたそうです。あれって一般的には怠けていたキリギリスが悪かったという話というのはわかっているかもしれません。最後にはアリは結局キリギリスに餌をあげなかったという結末ですね。最近は子どもの成長に影響があるかどうかはわかりませんがアリさんがキリギリスさんを助けるといういいお話に変わっています。先ほども述べましたがアリは地道に働いていなかったキリギリスを罵るという最後です。それもどうかと思いますけどね。地道に働いていない人がどうなっても地道にがんばってきた自分には関係ない……そんな考えをアリたちはしていたんだと思います。少々、まじめにやりすぎましたかね?では、また次回お会いしましょう。十二月四日金曜、十四時三十三分雨月。