第二話◆
第二話
「おぅ、霧之助……お前、その面どうしたんだ?」
どっからどう見ても高校生ではなくおっさんのような風体に態度、それが僕の友人である黄銅猛だ。
ちゃんとかな振りをしておかないと、きどうもうとかおうどうもうとか呼ばれかねないから友人としての配慮である。話している場所は新クラス……というより、配属されたクラスで中学が同じだったのがこの猛だけだったためにこいつ以外と話せないのである。人見知りなんだ、僕。決しておっさんのようなやつに話しかけるタイミングをずらされたわけではない。
「その面って何のことさ?」
「その右頬、あっかい手形がついてるぜぇ?どうした、女でも泣かせたか?」
いやらしそうにニヤニヤ笑っていやがる。ちぇ、こういうときはいちいち聞いてくるから面倒なんだよなぁ……。ほら、変なことを言うから周りの視線が痛いよ。
―――――――
一時間ほど前の話である。
「しんじられないっ!!!何でお兄さんのパンツと私の下着を一緒に洗うのよっ!!」
お相撲さん顔負けのハリ手が僕の右頬に炸裂し、衝撃が脳内を上へ下へと忙しく移動。世界がぶれ、ついでに言うなら整っている悠子の顔もめっちゃぶれて面白人間へと変貌したのだが次の瞬間には元の悠子の顔に戻っていた。
「ったいなぁ!!何するんだよ!」
「うるさいわねっ!あなたが悪いのよっ!」
もう一発、張り手。しかも連続して同じ場所に的確に当てたのだからやられた僕も感心してしまうほどだった……んな馬鹿なことが起こったおかげで危うく遅刻しそうになったのだ。
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そんなことがあったのである。
「ったく、本当にあの子は……」
「へぇ、妹さんのパンツと一緒に洗っちまったのか……そらぁ、お前が悪い」
「はぁ!?何故だよ!?いいか?洗濯機は一台しかないんだぞ?時間だってなかったし、僕には洗濯板を使えって言ってるのか!?」
それならば貧乳であろう悠子の胸を使ってやる。どうせペタン娘だろうからな、あいつは。
憤る僕の肩に手を置いて優しく話しかける猛。いちいち面倒なやつだ。
「落ち着けって、お前があれだけいやいやしていたら相手さんもツンツンした態度をとりたくなるだろうて」
「ヴっ……だけどね、それとこれとは話が違うだろ?」
ゆっくりと首を振ってきらきらした目になりやがる。
「そんなわけないだろう?一つのことでいらいらしたら他のことに対してもいらいらとなる。きっとお前の妹ははらわたが煮えくり返るような思いでお前と同居しているんだ。きっとお前がいなければよかった、出て行けばよかった、いっそのこと行方不明になってしまえと思っているかもしれない……だが、そこで怒ったらお前の負けだ。お前はお前の心の広さ(どうせ制服のポケット程度だろうけどな)を見せてやれ」
なんだか途中ものすごくけなされた上に結局のところ慰められてねぇ気がするのは僕だけだろうか?
チャイムが鳴ったために文句を言えなかったのが悔やまれるがおとなしく席につくことにする。ちなみに席順は男女男女の出席番号で座っているために必然的に両隣は女子になるため、うはうはだと思ったのだが……
右手……
おそろしいほどの眼光をぎらぎら光らせている容姿はかわいいが性格がやばそうな少女。目が合っただけで不安と恐怖を相手に与えさせるぐらい目つきがやばい。殺人ビームがほとばしっている。機嫌が悪そうだ。
左手……
めちゃくちゃかわいくて胸も大きい彼女……その代わり札束を数えまくっている。ついでに言うならあいつとあいつとあいつからそれぞれ一万円ずつ♪とか何とかいっている気がする。腹黒そう。
何?やっぱり現実ってそんなものか?いや、損な物か!?
そしてセクスィ〜ダイナマイトな女教師を期待していたのだが入ってきた担任はものすごくよぼよぼのおじいさんで白い眉毛で目が隠れている。まるでサンタクロースのようにひげを長く伸ばしていて赤い服を着れば定年を迎えたサンタに見えなくもない。
「んっん〜……じゃあ出席をとろうかのう?」
出席を取った後は入学式があり、簡単なHRだけが行われて解散となった。その後はさっさと家に帰ろうかと考えたがどうせ家にはあの冷酷非道な妹しかいない。猛と遊びに行こうかとも思ったのだが面倒なことが起こりそうだ。よって、隣の人に話しかけてみることにした。
さてと、どちらに話しかけようか……
霧之助は少しだけ臆病なんだけど過激なことをまれに考え付くやつです。あなた方の周りにもいませんか?そんな人が。いたら注意しましょう。ものすごく過激なことをたくらんでいるかもしれませんよ。