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◆第百九十六話◆◆

第百九十六話

「……」

「……」

 気まずいですとも、何処の誰がやったか知らないけどさ、これほど気まずいことはない。

「……」

「……」

 早乙女桜、それが今現在、僕の仲間となっている高飛車な女子生徒の名前である。今のところ、会話はないし、お互い顔も見てない……というより、暗くて顔が見えなかったりする。

 人生とは上ったり下ったりするそうだ。死ぬ前の老人が孫に言い聞かせるならわかるが今を生きている人から言われてもいまいち説得力に欠ける気がする……いや、まったく関係ないですけどね。

 お分かりの人にはお分かりかもしれないがお分かりじゃない人にはお分かりじゃないこの状況、僕と早乙女桜さんは一緒に体育館用具室に閉じ込められてしまっているのだ。何でこうなったのかはさっぱりわからない。用具をここに戻しにやってきて、早乙女さんがいたのでさっさと出ようとしたら扉が閉まってあかなくなった。早乙女さんが僕を突き飛ばし、その後チャレンジしたが結果は一緒だ。

「……」

 あかない扉に話したことのないクラスメート……気まずい、気まずすぎる……。お?いや、よくよく考え見たらこれはこれで面白いことかもしれない。どうせ、あと二時間ほどすれば部活する生徒がここにやってきて扉を開けていくだろうし、一日ずっと閉じ込められるってわけじゃないはずだ。

 そう考えるだけで心が晴れて、ちょっと早乙女さんに仕返ししてやろうと……いや、まぁ、あっかんべーするだけだけどね。

「……」

 もちろん、無言だ。ここで声を出すほど僕は馬鹿ではない。扉のほうにいるだろうと思ってそっちに向かってあっかんべー……やってて無性に自分が悲しい人間に見えてきた。

 もはや何もすることがないので寝ることにした。幸い、体育館倉庫ということでマットが置かれている。そこに背を向けて静かに目を閉じ……



どんがらがっしゃーん!!



 そんな音が聞こえてきた。きっと、早乙女さんが転んだに違いない……

「ぷっ……」

 笑ったのが間違いだったのだろうか?僕の額に何か強烈な一撃がぶちかまされ、僕の意識はいつかのように真っ暗闇へと放り出されたのであった。



―――――――



「っは…!?」

 目が覚め、あたりを見渡す。そこは保健室で、誰もいなかった。僕は体操服のままでベットに寝かされており、夕焼け、というよりもグラウンドの光が窓から差し込んでいたりする。

「……」

 頭に鈍痛を感じながらもなんとかベッドからおりて身体を動かしてみる。はて?何で僕はここにいるのだろうか?

「?」

 思い出せないのだが、そろそろ家に帰ったほうが良いだろう。保健室に置かれている時計を確認するも午前八時を針は示しており、電池切れだということは一発でわかった。ケータイもかばんの中に入っているため正確な時間はわからないが下校時間はとっくに過ぎているだろう。

 保健室から廊下につながる扉を開けるも、やはり生徒の姿なんて見えなかった。こりゃ、結構な時間が経ってしまっているのかもしれない。

 廊下を歩いていると体育館のほうが騒がしかった。部活をしている生徒が一生懸命がんばっているというわけでもなさそうで野次馬のにおいがする。そちらのほうに向かうと体育館倉庫付近で何かをしている。

 野次馬となっている一人の生徒に近づき、訊ねてみることにした。暗がりのため、僕の顔がよく見えないのだろう……びっくりしたような顔はしていない。

「何かあったんですか?」

「ああ、体育館倉庫で生き埋めになってた奴がさっき運び出されていったんだよ」

「へぇ、そんなことが……」

「一人は怪我とかしてなかったそうだがもう一人のほうが頭を強く打って今、救急車を読んでる最中だと……確か名前は……」

 そこまでその生徒がしゃべってくれた後に先生が野次馬たちへと近づいてきた。

「ほら!今日はもうお開きだ!帰ってよし!」

 しゃべってくれていた生徒はもうしゃべることもなく、僕は帰ることにしたのだった。まぁ、帰る前に教室によらなくてはいけないわけだけども。

 もちろん、教室内には誰も残っておらず、僕のかばんだけがぽつんと残されていた。さっさと制服に着替えてサブバックの中に体操服を放り込む。汗臭い、家に帰って洗濯をしておかなければ冬場といえどもしかしたらカビが繁殖するかもしれない。

 体操服に繁殖しているカビの映像をはっつけながら身震いして廊下へと歩き出す。

「いたか?」

「いや、そっちは?」

 そんな声が進行方向とは逆のほうから聞こえてきたりする。何か大騒ぎが起こっているようだが何かあったのだろうか?しばしの間考えてみるも、皆目見当もつきませんな。明日、里香に聞いてみれば何かわかるかもしれないとあっさり考えるという人類最高の行動を放棄。

 脇を走っていく教師にさよならっすと声をかけて僕は階段を降りていったのだった。


家に帰ってくるとき、妙に明るいなぁと思ったらお月様が煌々と照らしてくれていました。そして、その結果としてわき道逸れて危うく田んぼにどぼん!しそうになりましたよ。危ない危ない。さて、霧之助二年目もそろそろ幕を閉じそうです。今後の方針としてはとりあえず二年生を終わらせるぞと意気込んでおきましょう。いまだに昨日のあれを引きずっている所存ですがまぁ、いつまでも引きずっていてはやってられません。過去にももっとぼろくそ言われたのでそれに比べたらちょろいものですとか言ったら怒られてしまうので何もいいません。そろそろ十二月です。十二月に入ったら真っ先に頭に浮かぶのが……クリスマス。普通ですね。けど、普通が一番いいんです!十一時二十六分、木曜二十時五十四分雨月。

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