◆第百九十五話◆◆
第百九十五話
「あ~そっかそっか、テストで百点採っても霧之助のクラスじゃそうそううまくいかないかぁ……」
「うん、あれからなんていうのかなぁ?姑が嫁をいじめるみたいな感じ?ああいったのが続くんだよ」
「へぇ、どんな?」
場所はテスト期間中に一緒に行った喫茶店だ。二人ともコーヒーしか頼んでいない。しかし、いやな顔をまったくされないというのはお金がない高校生にとってはいいたまり場所である。
「……授業中に先生がさて、誰を当てましょうかね?なぁんて言うとあの人が率先して手をあげるんだ」
「それは……別にいいことじゃないかな?」
「うん、僕も最初はそう思ってたけど手をあげた後に『間山さんがいいと思います……前回、テストでオール百点採ったそうですから』なぁんて言うんだよ」
「……」
里香も驚いているようできょとんとしていた。
「ああ、それいい手だね?あたしも今度使おうっと!」
「いや、ね?ちょっとは真剣に考えてよ……間違えたときもすごいんだよ?『あら、これでは偶然百点だったということかしら?』って言うし……何かいい方法はないかな?」
「……うーん……」
しばしの間考え込んだが首をすくめた。
「そろそろ修学旅行があるし、そのときにでも仲良くなれるんじゃないかな?」
はたして、なれるだろうか……?ああ、そういえば前の高校もそろそろ修学旅行だったかなぁ?積立金が全部こっちに回されてるから無事に僕もついていくことが出来るのである。
「仲良くなるのが嫌ならここは勇気を持って女王様に挑んでみたら?」
「挑む?」
人差し指を一本立てて里香は頷いた。
「そう、挑むの!授業中にまたそういったことを言われたら売り言葉に買い言葉で逆襲するんだよ!」
「おおっ、その手があったか……」
「けど、それで悪い方向にむかったとしてもあたしは責任取れないけどね……おっと、もうこんな時間か……じゃあ、出ようか?」
「うん、そうだね」
―――――――――
「えーと、じゃあここを誰かに解いてもらおうか?誰がいいかな……」
「はい、先生!間山君がいいと思います」
早乙女さんが手をあげ発言する。僕は腹をくくった……周りの男子生徒たちが気の毒そうにこっちを見ているが任せてくれ、今回やられてばっかりで撃沈したりはしないから。
「先生、僕は別にかまいませんけど勉強が早乙女さんはたくさんしたいと思いますんで早乙女さんに問題お願いします!僕がいっつも解いていたんじゃ僕ばっかりが頭がよくなってしまったりする可能性大です!」
「なっ……」
「「「おおっ!?」」」
クラスからそんな反応。まさか、切り返されるとは思っていなかったのか唖然とした調子で僕を見ていた。先生は僕と早乙女さんを見比べた後にしばしふむふむ頷いて一つ、くしゃみをした。
「ああ、そうですね、今回は早乙女さんにお願いしましょうか」
「わ、わたしは別にかまいません」
「早乙女さんのお力、ぜひともクラスメート一同に見せていただけたらうれしいなという所存でございます」
深々と頭を下げる。どうせ、クラスで浮いてる存在だ。これ以上浮いたところで浮きようがない。海面で浮上行動は基本終わるのだ。それ以上浮くには今度は空に羽ばたかなくてはいけないのである。さすがにそれは無理だろう……まぁ、リーゼントにして長い学ラン纏って学校に来ればさらに浮き続けることが可能かもしれないが。
「やるなぁ、あの人」
「一矢報いましたって顔してるもん」
「あの人に近づくと早乙女さんのとばっちりを受けかねんな」
「うん、やっぱり今後も草葉の陰から応援していよう」
「「「がんばれー、転校生」」」
ま、まぁ、前よりよくなったほうかもしれないな。すっごく、微妙だけどさ。
コメディー……ですよね?この小説は。前回の後書きで大暴れしまくったので精も根も疲れ果てました。今の雨月は赤子の手によって雑巾のようにひねることが可能でしょう。さて、そろそろ第二百話目です。記念すべき二百話目。何をしようか、誰にしようか……悩みに悩んだ末、あの人物にしました。楽しみにしていただけると光栄です。次回は、あの人とともに霧之助が閉じ込められます。