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◆第百九十三話◆◆

第百九十三話

 試験前になるとやっぱり何処の高校も少し浮かれた気分、一生懸命勉強をする空気が混ざり合って流れたりするらしい。

「俺、今回のテスト自信ないんだよなぁ、勉強してねぇから」

「そんなこといってさぁ、本当はしてるんでしょ?」

 そんな友情を感じさせる会話もしばしば耳に入ってくる。以前だったら僕もそんなことを口走っていた一人だし、冗談を言っていた友人に対して突っ込んでいたことだろう。

 だが、いまやクラスで独立してしまった僕がやるべきことは一生懸命、授業で配布されたプリント、ノートと(もちろん、これらは高畑さんのご好意である)、友達となっている。



「今度のテストでいい点数採れれば少しはみんな見直してくれるんじゃないかな?だって、不良って結構頭が悪いイメージがあるからね」



 不良の人たちには失礼だが、なるほど、それなら今度のテストでいい点数採ってやれば誰かに“意外と”やるんだねぇ的な姿を見せることが出来るかもしれないというわけだ。何が何でも僕はいい成績を採らなくてはいけないのである。失くして気がついた、大切なものが友人だ何ておかしな話かもしれない。

 友人なんて別に要らないって思っていた時期もあったけど一人になってはじめてわかった。僕は常に誰かに頼って生きているってことを。

 馬鹿らしいことを考えながらもノートの中身をさっさと暗記していく。ノートの端に謎の生命体が書かれていたりするが(タコとパンダを合体させたような生命体)もちろん、二年で習ったことが出てくるために復習だって怠ってはいけない。

 クラスでずっと勉強をしているために周りの人はもちろん小声で僕のことをうわさしていたりする。『勉強をしている姿かっこいい!』とかそういったうわさではなく、なんとなく馬鹿にしたような感じで……

「おい、きっと勉強してなかったからいまさら慌ててしてるんだぜ?」

「ケンカは強くても頭悪くちゃかっこ悪いもんなぁ……あのなりふり構ってない姿ってのが滑稽だ」

 高校生が滑稽だなぁんて言葉を使うほうがよほど滑稽だといわせていただこう。そして、何とでも言うがいいさ。尻に火をつけらた者は前に進むしかないのである。全焼する前にプールに飛び込み鎮火出来ればそれでいいのだ。



――――――――



「で、どう?勉強のほうははかどってる?」

「うん、高畑さんのおかげでばっちりだよ!」

 偶然校門前で高畑さんに出会い、そのまま近くの喫茶店へとやってきた。数組の学生が中にいて、どこも学年末試験の勉強をしているらしい。

「本当はいろいろと校内とか街中を案内してあげたいんだけどあんまりあたしも成績よくないからさ、ごめんね?」

「いいよいいよ、気にしないで……終わったら案内してもらうからさ」

「あ、結局あたしを所望してるわけか」

 そんな雑談をしているとしばしの間高畑さんは首をかしげて手のひらをぽんっと打った。

「ああ、そういえば間山君のクラスには女王様がいるね」

「女王様?」

 はて?女王様が僕の新しいクラスにいただろうか?そういえば、まだ誰一人としてクラスメートの名前を僕は知らなかったりする。隣の人が野中なんとかという名前だということは知ってはいるが……あれから顔を会わせた事がない。うわさじゃ、保健室でテストを受けるそうだ。

 ところで、女王様かぁ……クレオパトラみたいなのが頭の中に浮かんだがちょっと違うだろう。

「苗字がじょおで名前がうさまとか?」

「違う違う、そんな名前じゃないよ。名前は……なぁんて言ってたかなぁ?」

 あははと笑う高畑さんだがまぁ、仇名でずっと呼んでいては本名を忘れてしまっていたりよくするのだろう。いや、しないか。

「男子とか普通にあごで使ってるんだよ。知らない?」

「知らないなぁ……ともかく、今は学年末試験でいい成績を採らないとね!手伝ってくれた高畑さんに申し訳がつかないよ」

「あ、そういえばさぁ……あたしのこと高畑さんって言ってるじゃん?」

 そりゃ、呼んでいる。高畑さんは高畑さんなのだから田中さんとか佐藤さんとかそういった名前で呼べるわけがないだろう、というより、田中さんとか佐藤さんの知り合いなんて僕にはいない。

「うん、呼んでるね」

「そんな他人行儀じゃなくて友達なんだから里香って呼んでくれていいよ。あたしも今度から霧之助って呼ばせてもらうからさ」



――――――――



「ただいま……って言っても誰もいないか」

 以前だったら由美子がお帰りって言ってくれたり、コタツの中に結さんがいたりしたのだがあいにくそういった僕にとって都合のいいことなんてなかったりする。今の僕には勉強という大切なことが残ってる。

 コタツに入り、僕は教科書を開く前に……

「悠子と由美子、仲良くやってるかな……」

 そうおもってケータイを開いたのだった。


ちなみに第三章は201話から始める予定です。ま、それは置いておくとしましょう。今回は、いや、今回も緊急アンケートを実施します。ずばり、主人公はこのままでいいか否か!十一月二十五日八時五十八分雨月。

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