◆第百八十八話◆◆
第百八十八話
今日は終業式であり、冬休みは正確に言うならば明日からだが実質、帰宅部にとっては今日の昼からといっていい。後日三者面談の後に成績表が配られるために自分の成績に謎興味のない我がクラスは明日からの冬休みを天に感謝していた。
ああ、そういえば去年何かやった気がした。あれをやられると地味に時間をとられてしまうのでいやだったが一応このクラスのまとめ役である猛に話をしてみる。
「去年やったあれ、今年もやるの?」
「いいや、あれってめっち面倒だったからなぁ……他はどうだ?」
「あ~俺はパス」
「俺もパスだ」
「ぼくにパスだ」
「オクトパスだ」
「置くとパスだな」
「遠くにパスだな?」
「いや、トークにパスだ」
「え?トークはパスだろ」
「とっくにパスだ?意味がわからん」
「パスだよ、パス!」
「パスの場合で……」
「パスケース!」
「バスを入れるケースは?」
「バスケース」
「ケースバイバスケース」
「バイバイ」
「キーン……」
結局、最後は全員が意味不明なことをして締めくくってしまった。微妙な空気が流れてそれぞれがばらばらに解散し始める。外では雪が降っている……夜には雨になるそうだ。
「やれやれ、今年もこれでみんなと面を会わせるのは終わりだな」
「そうだね、ちょっとだけ寂しいかな……」
首をすくめる僕に猛はため息をついていた。
「よく言うぜ、どうせ心の中じゃ後一年間はこいつらときっついなって思ってるんだろ?」
「どうだろうね?別に面白いクラスでいいじゃないか……interestingだよ」
そういうと首をすくめられてしまった。ま、今年もいろいろあったけど来年もまたいろいろあるんだろうな……。
「霧之助、俺は瑠璃とよろしくやるからまた来年な」
「うん、ばいばい」
手を振って去っていった。いつからいたのだろう?矢田さんが猛の隣に立っていたことにまったく気がつかなかった。
話が終わったと思ってきたのだろうか?百合ちゃんが鞄を持って僕のところにやってきた。
「霧之助、今日はどこかによって帰ろうな」
「いつも寄ってる気がするけどね」
「そうかぁ?」
一週間に一回は立ち読みに連れて行かれるんだけど……気がついていないのだろうか?
―――――――
「じゃあまた来年だな~」
「うん、またね!」
手を振る百合ちゃんが小さくなるまで見送って、曲がり道を曲がる。
「いたっ!」
「あいたた……」
どうやらちょうど誰かが出てこようとしていたところだったようでその人とぶつかってしまった。
「すいません、間山さん」
「え?雪ちゃん?」
そこには尻餅をついている雪ちゃんがいた。何かに気がついたようであわててアスファルトの上で正座になる……いや、ね、気がついてなかったよ?パンツが丸見え状態だったなんて知らなかった。知ってたらちゃんと確認していたさ……って、何考えてるんだろ。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です。ちょっと転んだだけですから……あの、よかったらこれからどこかにいきませんか?遊び納めということで」
「……じゃあ、何処に行こうか?」
百合ちゃんには付き合って雪ちゃんには付き合わないってなんだか不公平に思えてついついそんな言葉を出していた。
「じゃあ、あのゲームセンターに行きましょう!」
――――――――
「間山さん、今日は本当に楽しかった……ありがとうございます」
「いやいやそんな……またぬいぐるみ貰っちゃったし」
今度、誰か友達が僕の部屋にやってきたらなんと言うだろうか?とってもファンシーなあのお部屋。ああ、間山ってぬいぐるみが好きなんだなぁ……いや、イレギュラーな存在で謎の像もあるぞう……
「……さぶっ!今日は冷えるな…」
雪ちゃんと別れた後はもちろん、スーパーによって夕飯のお買い物……会う予定なんてないはずなのにここに来ちゃったら八割の確率で出会う一切年下の後輩。
「せんぱーい!!」
千切れんばかりに手を振る名古ちゃんに手を振り替えしながら(あの子には恥ずかしいという気持ちがないのだろうか?)急いで近寄る。
「ここにくれば会えると思ってましたよ」
「そ、そっか……それでどうかしたの?」
「本当は今日学校で会って話をしたかったんですけど昨日作った肉じゃがが初めてお母さんにおいしいって言ってもらったんです!!」
へぇ、それはいいことじゃないか。
――――――――
「じゃ、先輩気をつけて帰ってください!」
「それはこっちの台詞だよ」
「残念ですけどあたしは先輩の先輩じゃありませんよ?」
「……」
相変わらずあの子は一言多い子だな……嬉しそうに去っていく後姿が曲がり角に消えるまでみておく。うん、まぁ、元気が出るね。
雪がどうやら雨になったようで頭上からは霙のような雨が降り注いでいた。ああ、風流だな……
「っと、ぼけっとしてたら何言われるかわからないや」
急いで帰らねばならないな。今日は結さんと再び鍋パーティーをする約束だったのだ。二日連続鍋パーティー……作るのが簡単だからとは由美子にはいえない。
今年ももう残りわずか。もうちょっとしたら久しぶりに悠や悠子に会えると思うとなんだか怖くもあるようで……不安が九割、希望が一割。
とにもかくにも、今年はもう終わる……そんなことを思っていたのが間違いだったのだろうか?
行き過ぎたエロはもはや下ネタであると……偉い人は言いました。いや、確か、言っていたような気がします。本当か?誰だそいつは?そう訊ねられてしまったらどうだったかなぁというしかありませんけどね。さて、今回の話はどうだったでしょうか?実質的には今回の話で一区切りなんですよ。次回はつなぎ的役割を担わせたつもりですがうまくやれたという満足感がいまいちです。これでよかったんだろうな……感想、待ってます。十一月二十一日土曜、二十時二十三分雨月。