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◆第百八十四話◆◆

第百八十四話

 図書館からは中庭へと続く扉があり、ちょっとした休憩する場所がある。図書館自体人が来ないし、それに輪をかけて中庭に用事がある人など用務員さんだけなので昼食時のみカップルがそこで愛を語らうのである。今現在だって結構いたりする。

 もっとも、彼女などおらず、後輩のためにお弁当を作ってきてしまうという僕は必死に料理の基本を名古ちゃんに教えていた。

 理想と……

「間山君のために今日は朝からがんばったんだよ?」

「うわぁ!ありがとう」

 現実は……

「先輩、この出し巻き玉子おいしいですね…もがもが」

「……せめて食べ終わってからしゃべろうね?」

 違うのである。

「……こ、後輩ってやっぱりあの子……お兄ちゃん、私今度からお弁当がんばって作るわ!」

「霧之助、私だってこう見えても料理を作れるぞ?」

「間山さん、今度お弁当を作ってきてあげますね」

「……いや、さすがに三食分は胃の中に入らないと思うんだけど」

 じゃあ、じゃんけんで作ってくる順番を決めようとあっちはあっちで白熱しているようである。そこまでして人に食べてもらいたいのかねぇ?まぁ、確かにおいしそうに食べてくれている名古ちゃんとかの顔を見るのは良いかもしれないけどさ。

「何かついてますか?」

「え?ああ、いや……気にしないで。で、出し巻き玉子の作り方だっけ?」

「そうです!」

「これはね、作り手によって味が変わってくるからね一概には……」

「つまり、あたしが一度作って先輩に食べさせてあげればいいんですね?」

「君の情熱とやる気はもう十分だって言うほど、それこそおなかいっぱい理解しているつもりだからちょっと落ち着こうね?」

「なるほど、まずはあたしのやる気を弱火にしろということですよね?」

「うまいこと言わなくて良いからね?」

「料理だけに?」

「……」

 この先、うまく教えることが出来るかどうかものすごく不安です。



――――――



「じゃあ今日はハンバーグを作ってみようか?」

「そうですね、ハンバーグなら以前家庭科の時間で作りました。五人中二人がおなかの調子が悪いといって午後の授業を休んだと思います」

「きっと半生だったんだろうね……しっかりと火を通さないといけないよ?」

「了解です!」

 敬礼をしてたまねぎを切り始める。素人にしては包丁捌きがまぁまぁいけている。自分の指を切ることもなく、僕のほうに包丁を向けることもなく……今回使用する予定のたまねぎを切り刻んだ。

「刻みました!刻みすぎて涙が流れます…」

「よし、じゃあ次はそのたまねぎをフライパンでいためようか」

「りょーかいです!」

 油をすべるようにフライパンへと入れ込み、その後、たまねぎも投入。塩少々入れた後に色がつくまでいためる。

「じゃ、色がついてきたからそのたまねぎは冷やしておこうか?」

「先輩、そのまま合いびき肉と混ぜちゃって良いんじゃないんですか?」

「うん、名古ちゃんがそのものすごく熱いたまねぎを素手で握りつぶせる剛拳の持ち主だって言うのなら僕はかまわないけど?」

「……おとなしく冷やしますね」

「じゃあ次は合いびき肉のほうに取り掛かろうか?確か、牛が七で豚が三割だったと思うけど……って、もう適当に入れちゃってるね」

「はい、もう入れちゃいました」

「……しょうがないから玉子と牛乳で浸してたパン粉…入れた後で一生懸命ごまかそうとしないでね?」

「……胃の中に入ってしまえば一緒ですよ、先輩」

「まだ悲観しないようにしようね?」

 その後も、様々な難題にぶち当たりながら何とかハンバーグ?は完成したのであった。



―――――――



「先輩、今日ご飯うちで食べていってくださいよ!」

「……責任は僕が取るよ」

「お父さんはまだ帰ってきませんからくつろいでいってください」

 目の前には謎のダブルハンバーグ。和風ということでおろしポン酢でいただきます。勇気と無謀は違うものだとえらい人はいいました……実に正しいことですが自分の尻は自分で拭かないといけません、けじめはちゃんとつけましょう!

「いただきます!」

「死する時は一緒だね、名古ちゃん……」

「何か言いました?」

「何も……ちょっと十分後を想像すると涙が出ちゃうって思っただけさ」

 結論から言おう……悪くはなかった…だが、まぁ、なぁんていうのだろうか?“うまし!”とか“まいう~”や“まずごぱぁっ”といった美辞麗句を並べ立てるには詐欺師になるしかないようである。素人が作ったハンバーグという味がした。僕が手伝っていなかったらどうなっていただろうか?非常に気になるところである。

「ど、どうですか?」

 何気に手をつけていない名古ちゃん。この子、大きくなったら強かな子に育つことだろうな…僕にだけ味見させてやんの。

「まぁ、改善の余地ありだけど大丈夫、おいしいとまではいかないけどそれなりに個性が出てていける味だよ」

「じゃあ、おいしいってことですね?」

 結構大き目のハンバーグなのに二つに切って半分を一気に口の中に放り込む。意外と豪快に食べるんだねぇ。ワニがシマウマ襲うシーンを創造しちゃったよ。

「って、食べるところをみないでくださいよ!恥ずかしいじゃないですか!」

「照れない照れない、大自然の摂理を僕に思い出させてくれてありがとう」

「……ほめてませんよね?」

「ほめてるよ?ほめているとも!」

 料理のことは今後ちょくちょく教えてあげたほうがよさそうだ。それに、意外と教えるのって楽しいし……これから結構放課後は忙しくなりそうである。


寒いと眠くなるのは人間の、いや、生物の性でしょう。体温がなかなか上昇しないこの季節…人はコタツという要塞にこもり、カイロで武装すること間違いなし。しかし、それは部屋にコタツがあり、カイロをもったいなく使う方法であり、もったいない精神をもっているものは室内なのにマフラーつけて、運動をして自分の体温と室温をあげるというまさに一石二鳥の行動をとるのです。適度に疲れてぐっすりと眠ることが出来ますよ……ってあれ?なんだか一周しているような…。まぁ、いいか。それでは感想待ってます。十一月十九日木曜、九時二十七分雨月。

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