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◆第百八十三話◆◆

第百八十三話

 名古ちゃんは日に日にやつれていった……というわけでもなく、一生懸命勉強しているようである。ただ、問題点をあげるとするならば彼女はレシピ本通り作ろうとせず、自分なりに工夫をする。素人だって工夫したいという気持ちはわからなくもないし、そこまで酷くはないと思っていたのだが…弱火のところを強火でやったりするのである。失敗するわけだ。しかし、彼女は努力の人のようで一生懸命その後も勉強した。僕は一切手を出していない。手を出していたら運命は変わっていたか?そう訊ねられても答えはきっとNOだろう。どの道、運命なんて変わりはしないのである。

 あれから約一週間……もう少しで学校も冬休みに入るというときに名古ちゃんが廊下に立っていた。

「先輩、明日あたしにその……お弁当を作ってきてもらえませんか?」

「な……」

 なぜか隣にいた百合ちゃんが固まっていた。

「まぁ、いいけど……」

「いつものあの場所で待ってますから」

 用件はそれだけだったようでさようならとも言わずに去っていってしまった。よほど慌てているようで途中でこけた。

「じゃ、帰ろうか百合ちゃん……?って、おーい!もしもし?」

 目の前で手を振ってみても無反応。どうやら突発的夢渡り症候群にかかってしまったようだ。

 復活するまで待っていると一分程度で復活したようで鋭いおめめが僕を射抜く。

「霧之助ぇ、あ、あんな小娘がいいのかぁ?」

「小娘って……そんなに歳は離れてないよね?」

「くぅ、年上の自分が恨めしい!今日から先輩って呼んでいいか?」

「呼んでもいいけどそうしたらさ……」

 二年留年しちゃったってことにならないのかね?よくわからないがヒートアップする百合ちゃんをどうにかこうにかなだめすかして帰路に着く。沸点がよくわからない人だ。



―――――――



「あれ?今日はお弁当三つも作ってるの?」

 学校に行く前にテーブルの上におかれている弁当箱を由美子は見ている。いつもの光景とはちょっと違ってみえていることだろう。

「ああ、うん。ちょっといろいろとあってね」

「誰かにあげるの?」

「うん、後輩がお願いしてきたから作ったんだよ。きっと、どのぐらいうまく作れるか知りたいんだろうね」

 それなりにうまく出来ていると僕は思っている。

「ふ~ん?まぁ、お兄ちゃんのお弁当ならまずいって言われることないだろうけどね」

「由美子はどう思ってる?」

「私?私は……」

 そっぽを向いた理由はどうやら恥ずかしいかららしい。

「……おいしいから悔しいって思ってる…じゃ、行ってきます!」

 そこはおいしいといって欲しかった。ところで、悔しいって何で思うのだろうか?おいしいから悔しいっておかしいよ?



―――――――



 四時間目を終わらせるチャイムが鳴り響き、僕は自分の分と名古ちゃんの分のお弁当を持っていつもの場所、最近ではスーパーと同じぐらい出会うであろう図書館へと行こうとする。

「待った」

「何?」

「私も……その、ついていくよ。一緒にお弁当ぐらいいいよな?」

 どうかしたのだろうか?その手にはしっかりとお弁当が握り締められている。駄目といってもついてきそうな雰囲気だし、却下する理由が見つからないので首を縦に振っておいた。

「じゃ、行こうか」

「お~」

 二人して教室の外へと向かうと、由美子が立っていた。

「あ……お兄ちゃん」

「どうかしたの?」

「いや、ね、ちょっとたまには……そっちの百合先輩と一緒にご飯でも食べようかなぁ、なぁんて思って、ね……」

「え?私とか?」

 目をぱちくりしながら自分のことを指差している。うーん、百合ちゃんのその存在感は下の学年にも伝わっていたんだなぁ……

「あ、も、もちろんお兄ちゃんが一緒に百合先輩と食べるって言うなら私もそっちについていくからさ……別に、後輩にお弁当をあげるなんていってたのが気になったわけじゃないからね?」

「じゃ、由美子も来れば?」

 これで三人……雪ちゃんのクラス前を通ろうとすると窓際の席に陣取っていた雪ちゃんが廊下側の窓を開けてタクシーを止めるように手を止めた。

「何処に向かっているんですか?」

「えっと、約束の場所……雪ちゃんも来る?」

 ちらりと後ろの二人を一瞥した後に彼女は頷いた。

「ええ、ちょうど姉さんと間山さんの妹さんと話したいなと思っていたころですから」

 立ち上がり、かわいらしいお弁当箱を掴んでやってくる。

「じゃ、いきましょうか」

 二人でお弁当を食べようかななんて思ってたけど人生って予想通りの展開にはならないんだね。まぁ、かまわないけどさ。


雨月短編集やるっていったからにはやるしかないじゃないか!!何処が誤字で脱字かはご自分の目でお確かめください。


ーーーーーーーー


獄潰し ~後書き特別編~



一発目


「うるさいわよ~?みんな、死語はやめなさい!」

「そんなの関係ねぇ!」


ーーーーーーー


二発目


「……なぁ、あそこいつになったら『パ』を付け足すんだろうな?」

「え?しらねぇよ。従業員とか店長に聞けよ」

「あれじゃ今日はパチンコ行ってくるっていえねぇわ」



ーーーーーーー


三発目


「ダーリン、今日のお弁当には魔心たっくさんはいっているからね♪」

「ヒ素入り弁当?」


ーーーーーーー


四発目


「各自、変体を汲んで広場に集合!」

「トレンチコートのしたが素っ裸の奴をバケツに入れてくればいいんですね?」


ーーーーーー


誤発目


「お憑かれさまです」

「何か憑きましたか?」


~終わり~



ーーーーーーー


ええ、もう、ね、温かい目で見守ってやってくださいよ。そういうわけで、今回はここらで逃げさせてもらいます。十一月十八日水曜、二十二時十二分雨月。

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