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第十八話◆

第十八話

「霧之助、お前は宮川百合に近づきすぎたんだ」

「は?」

「ここの三人は宮川百合に近づきすぎて番犬にかみつかれた哀れな犠牲者だ」

 別に辛そうでもなくそんなことを言う。いわれた三人は頭をかきながらあははと笑っていた。一人がさらに前へと歩き出す。

「俺は中学のころ先輩と付き合ってたんだが妹のほうがかわいいなぁってことで狙ったらお前と同じ手口でやられた」

 あんた、妹がかわいいって理由として生々しすぎだろ。

「ぼくは生徒会で百合先輩と一緒で仲良かったんだけど……その当事から僕には彼女がいてね、あの妹、ぼくと百合先輩が付き合ってるって勝手に思い込んでたんだよ。それで毒牙にかかった」

 この人は普通に被害者だ。うん、一番目のやつは酷いやつだな。

 最後の人はダンディーな顔つきでこういった。

「俺は元剣道部でな。中学のころ宮川百合先輩殿のお世話をさせてもらっていたものだ。あのような卑劣な妹がいるとはすでに知っていたから録音機を常にポケットに忍ばせていて同じく勘違いされて被害にあった……だが、現場はきっちり押さえ込み、妹には黙って先生たちに教えた。これから先、あの妹によって犠牲者が増えないためにも……」

 猛がぱんと手を叩いていった。

「まぁ、その噂が広まったために宮川百合、宮川雪……つまり宮川姉妹に近づくものはほぼ皆無となった。もちろん、去年の先輩方の中に宮川百合と仲がいいものは殆どいない……大体、ここの高校に来るのは比較的近いB中学校だからな」

「……まるでテレビか本の話だね」

 笑うに笑えない話だ。きっとこれを本か何かにしたら売れるんじゃないかなと思った。

「とにもかくにも、お前のことを犯罪者だとは思いはしない。みんなお前のことを宮川百合に触れた哀れな被害者だと認識してるからな」

「うっわ、そりゃ酷い」

 なるほど、誰もが知っていたから百合さんに積極的に話しかけたりしなかったのである。百合さんも怖いが、あの妹のほうが怖かったのだろう。

「けどさ、さすがに百合さんも酷いんじゃない?すぐに僕の話なんて聞かなくなったし」

「そりゃ、そうだろうな……宮川百合は幼少のころ自身の所為で妹である宮川雪を怪我させてしまってる。あの子の右肩辺りにある傷はそのときの名残だそうだ」

 僕は思う……なんでお前が違う中学の宮川雪のことを知ってるんだ!

「好奇心は地球を動かす……霧之助、この言葉は覚えておけよ」

「いや、即効で忘れるよ」

 結局、最後に何か黒い箱を渡されそれをあけたら幸運が逃げ出すとまでいわれた。ポケットに突っ込んでそのまままっすぐ家に帰ることにしたのだが帰り道の途中で百合さんを見かけた。声をかけようかとも思ったのだが、今の彼女に何を言っても無駄だと考え直して家へと帰ることにする。帰り道、ガムを踏んでしまい、何か不吉なことが起こる気がしてならなかった。


――――――――



「おかえりお兄さん」

「ただいま、悠子」

「お兄さん、お友達が来てるわよ」

 ものすごく冷たい瞳が僕に突き刺さる。え?誰だろうか?この視線はもしかして悠?と考えていると実際は違ってなんと宮川雪だった。不幸、起こっちゃいました。

「お邪魔してるわよ」

「何しにきたの?」

「ここじゃ妹さんがいるから……けどまぁ、もう知ってるわよね?妹さんも。これから先の話を聞きたくなかったらおとなしく出てってくれる?」

 馬鹿にしたような調子で悠子を見るが、悠子は返事もせずに無視して家を出て行ってしまった。家を出て行く前に僕を一度だけにらみつける……え、一人にするの?また何かやらかされたら助けてくれる人なんていないんだけど……家を出て行ったことに満足そうにうなずいて宮川雪は立ち上がり、僕のほうに歩いてきた。

「どう?家族にも見捨てられた気分は」

 うれしそうな表情。うわ、下劣な人間がここにいる……。

「あのさ、僕の家の住所を誰に聞いたの?」

「あの子、あなたの妹さん」

 おいおい悠子よ……相変わらず兄貴が嫌いなのか?被害者ぶった悪魔を家の中に引き入れるなんて……。

「それでね、あなたに止めをさそうと思うの」

「止めって……何さ?」

「こうすることよ!」

 再び今日くらったあの技。抵抗することもできずにそのまま組み強いてしまう形となり、それから逃げようと、立ち上がろうとしても、宮川雪はほっそりとしてくるくせに馬鹿みたいに力が強い。離れることもできずに組み敷いた形が続いてしまう。

 そして、玄関の開く音が……

「霧之助ぇぇぇぇぇっ!!!」

「百合さ……ん!?」

 大声を出しながら入ってくる百合さん。ご近所のことも考えていないということは怒り心頭だということだろう。


評価よりも感想がものすごく欲しい作者、雨月です。宮川編もそろそろ終盤へと突っ走ってますね。それと、気がついているというか、覚えている人がいるかどうかはわかりませんが、第一話でとある可能性がいまだ残っています。次と次の次で宮川編は終わりを告げると思われますのでそのときできましたら感想をお願いしたいと思います。

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