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◆第百七十九話◆◆

第百七十九話

 この人を探していますという少し色の薄くなったチラシを名古時羽はじっと見ていた。それが誰なのか知っているし、結構親しいというより先輩である。変な先輩だが最近スーパーにいても話しかけてきてくれることはない。まぁ、そこで話しかけられたらきっと名古時羽は泣いていたかもしれない。

 行方不明となって一週間。比較的平和な場所だが、警察が一生懸命捜していることだろう。雨ざらしとなっているチラシにはなんとも、のほほーんとしている感じの男子高校生が写っている。

 いつ撮ったものだろうかと思うとどうやら海に行ったときに撮った写真らしい。家出したのではないかとうわさを聞いたのだがあの人が家出なんてするだろうか?と名古時羽は思っている。

「……」

 一週間がこれほど長いということを知らなかった。やはり、親しい人が行方不明になってしまうなんていまだに嘘だと思いたい、思いたいのだが現実はそうではなく行方不明の先輩は相変わらず行方不明だった。

「先輩、今頃どうしてるんでしょうか……」

 気がついたらため息をついていた。ため息をついたら幸せが逃げると聞いたことがあるのだが幸せが逃げてしまったからため息をついているのである。

 きっと、先輩からみたら自分は取るに足りない後輩の中の一人かもしれないだろうが、自分の中では最高の先輩であり、友人でもあるのだ。三日に一回はスーパーであっているし、昼休みもよく話していたりする。

 どういった経緯かはわからないがクラスの人たちとも話せるようになっていた。もちろん、自分の趣味を隠した状態だがいたって普通に話せている。たまに、話題が出てきて『名古はすごいね』とか言われたりするのだ。あんな恐い先輩と一緒にいるのだからと、よく言われるたびにあの人はいい人だとよく言っているので勘違いされたこともある。

 一体全体、あの先輩は何処に行ってしまったのだろうか?もしかして、もう逢えないのではないか……そんな不安が襲ってくる。

 最後にあったのは文化祭の二日目、誘ってくれたのか、自分から誘ったのかはもう思い出せなくなったけれども、楽しい、幸せだったといっても良いかもしれない。

「くしゅん!」

 最近ずっと外を歩きっぱなしである。街中を歩いていればもしかしたら先輩を見つけることが出来るかも知れないとそんなことを考えているのだが、今日も無駄だったようだ。きっと、今頃警察だって血眼に、いや、義務で捜しているだけだろう。それなら自分が自分の意思で先輩を見つけ出したいと思っているほうが幾分かマシのはずだ。

 ともかく、身体を壊してしまっては探しようがない。名古時羽は自宅へと向かって歩き始めた。



――――――――



「悠子、あんたに電話」

「誰?」

「東結って言ってるよ」

「……結さんが?」

 少々いぶかしげに思いながらも受話器を手に取る。

『お久しぶりです』

なるほど、確かに受話器越しからは懐かしい声が聞こえてくる。懐かしい、とはいってもまだ二年も経っていないわけだが。

「珍しいですね?」

 隣人だったがあまり話したことはない。しかし、似ているところでもあるのかわからなかったが兄とともに信用できる人だと悠子は考えていた。

『ええ、まぁ……実は貴女のお兄さんが行方不明になりました』

「……本当ですか?」

 嘘をつく人だとは思っていないが、念のために聞いてみる。

『本当です』

 足元が崩れるような感覚に襲われる。

「ええっ!?霧之助が誘拐されたっ!?」

 そして、鼓膜が破れるのではないかという雑音が耳に入ってくる。隣で悠が叫んでいるのだ。うるさいことこの上ないだろう。騒ぐ役は悠に任せておいて悠子は再び受話器に語りかける。

「詳細をお願いできますか?」

 しばらくの間受話器の向こうの相手は沈黙していた。

『……わたくしの所為でこうなってしまったということを先に申し上げておきましょう』

 その言葉を聞いて自分なりに考えてみる。真っ先に不良たちのことが頭に浮かぶのだが違うだろう。そこまで自分の兄がへたれていないことぐらいは知っている。それならば、もっと違うこと…口調からすると彼女ではどうしようもなかったことに違いない。

「……東家に関係することですか?」

『ええ、相変わらず的確ですね』

「お兄さんは大丈夫なんですか?」

『わたくしがどうやってでも助けだして見せるとここで誓います』

「わかりました、気をつけて……行って来てください」

 ありがとうございます…その言葉だけを残して電話が切れた。切羽詰ったような状況ではないだろう……楽観しているわけではないが話し相手のあの口調からするとまだどうしようもない状況ではないようである。

「ああっ……何がどうなって霧之助が行方不明にぃぃ?悠子、あんたは心配じゃないの?」

「心配じゃないっていったら嘘になるかもしれないけど大丈夫、お兄ちゃんは大丈夫。あんたがそんなに騒いでいたらおにいちゃんがあんたの心配をしなきゃいけなくなるから平静で居なさいよ」

 それだけいって先ほどまでやっていた作業を再開する。まったく帰ってこない手紙だがあっちに帰ったときにたっぷりといやみを言ってやれば心が晴れるだろう。

 そう思うと自分の心が静まっていくのを悠子は実感していた。


次で百八十話です。さて、なんだかばらばらな感じの二週間。今回であえて最後にさせていただきます。なぜか?小出しにしていくことにいたしました。もちろん、今後もしかしたらこのようなことが再びあるかもしれませんが……そのときはそのときまた考えてかくことにいたしましょう。前回、後書きを今回に延ばしたのには理由があります。とあるレンタルビデオ屋にいっていたからです。ちなみに、何も借りてはいませんよ?子どものときぐらいです、ああいったところで何かを借りるのは…。ホラー系のところでみてましたがいろいろと突っ込みどころ満載なタイトル名がありましたよ。笑っちまいます、あははは……。恐いのは大丈夫なんですけど血がびゃーって噴出しちゃう映画とか駄目なんですよ。つまり、外国のホラーとスプラッタが混ざった奴は微妙です。みていて気持ち悪くなっていきます。ちょっと話しすぎましたね。次回からは楽しい雰囲気でいきましょう。十一月十六日月曜八時八分雨月。

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