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◆第百七十四話◆◆

第百七十四話

 傘をさしての登校は面倒である。降り注ぐ雨は歩道、車道へと分け隔てない……車がアスファルトの上の雨水を跳ね飛ばし霧へと変身させて再び空中へ……時折、歩道へ津波となって押し寄せる。歩道へと降り注いだ雨は僕の靴のつま先から前方へと飛ばされ続ける。きっと、僕が学校につくまで続くであろう現象。

「雨、やまないね」

「そうだね~」

 アパートから一緒に歩いている由美子はまるで子どものようにくるくると傘を回してはこれで何度目かの台詞を口にするのだった。雨は嫌いだ……言外にそんなことをにおわせている。

「あのさ、お兄ちゃんっていまさらだけど鈍いよね」

「鈍い?」

「うん、激鈍!」

 まったく、面と向かって失礼なことを言う妹だ。

「ふっふっふ、そう思う奴が結構いるけど実は昨日だって百合ちゃんにアタックされたんだよ?」

「え?」

 驚いている驚いている……ところで、百合ちゃんの身体能力が化け物であるということを由美子は知っていただろうか?男子だって物怖じするほどの鋭いサーブ、アタックは昨日のうちに五人ほどの被害者を出した。顔面からの出血……鼻血を流した戦友たちはもう二度と百合ちゃんと一緒にバレーをしたくないと思っているだろう。

「もちろん、それを僕はブロックした……顔面でブロックしたんだよ?すごくない?」

 一気に何かを理解したという表情に早変わり。まるで馬鹿でも見るかのような視線を僕に向けてくれていた。

「……だから鈍いんだよ!アタックとか使うからびっくりしたじゃん!」

「じゃあ何ていえばいいんだよ?」

「火の玉アタック!」

 アタック、使ってるじゃん……



――――――――



 昨日のことが気になって猛が学校に来るのを待っていたわけだけども、先に来たのは百合ちゃんだった。

「おはよ~」

「おはよう霧之助」

「昨日、あれからどうなったの?」

 百合ちゃんが指南したのなら誰かが血を見ているかもしれないなぁ……そんな失礼なことを考えつつも(だって、なんといっても演劇の中とはいえ僕を殺したし)恐る恐る聞いてみた。

「まぁ、万事解決だな」

「またまた~……事実を曲げてまでハッピーエンドなんてありえないよ。あれからのことを簡単にいうなら図書館、告白、玉砕、行方不明……なんじゃないの?」

 今頃裏山で泣いているか空き地の三つある土管のどれかにはいって泣きじゃくっているに違いない。何だかんだいって矢田さんのこと好きだったようだし、好きな人にふられるってつらいことだと思うしなぁ……ま、高嶺の花と雑草じゃつりあわないかもね。結婚詐欺に発展してヒ素でも盛られて保険金目当てでやられちゃうかも。

「そんなわけあるか……いいか、霧之助…」

 百合ちゃんが僕に何かを諭そうとしたとき猛の声が聞こえてきた。

「おっはよう!」

 クラスメートたちと何度か挨拶を交わしながら僕らのところまでやってくる。そして、猛は直角に頭を下げてこういったのであった。

「百合様、百合様のおかげで私めは非常に幸せな日常を送れそうであります!」

「苦しゅうない」

「以後、何か入用でしたら私めを道具としてお使いください」

「よし、何かあったらお願いいたそう……カッカッカ!」

 もう一度頭を下げて自分の席へと向かっていく猛……え?何?何か身体に……特に脳みそに悪いものでも拾って喰ったか怪しいクスリに走ったのだろうか?それとも、改造手術でも受けて絶対服従になったとか?

 百合ちゃんに尋ねようとしたのだがそれはまたしても突然の来訪が邪魔をしていく。

「宮川先輩!」

 そういってはいってきたのは矢田瑠璃さん。猛に微笑み、猛は恥ずかしそうに後頭部を掻きながら(キャラじゃねーっての!っと突っ込んでおこう)そっぽを向く。何?このいやな空間は?幸せを基盤とした『いちゃップル』のにおいがするんだけど?

「……何か私の力が必要になったらいってください。私、なんでもしますから!」

「気にしない気にしない!私は恋する乙女の味方だから」

 うわ、そんな台詞百合ちゃんが死んでも口にしそうにないな……とか考えたらきっと怒られるんだろうな。墜とす女……墜女のほうが似合っているかもしれない。

「あの、是非式を挙げるときはスピーチをお願いします」

「そこまで?そこまで話はすすんでるの?」

 なんだかものすごく置いてけぼりを食らった気分だけど……

「なんだかわからないけど百合さんすげぇ!」

「百合さんすげー!」

「すげー!!」

「間山はすごくねぇ!」

 クラスメートたちもそんなわけのわからないことを言い出した。お祭り状態みたいにうるさくなり、百合ちゃんは胴上げされていたりする。日本一にでもなったのだろうか?なんだか最近、このクラスは僕のクラスじゃないと思っていたりするわけだけども……

「猛、ともかく丸く収まったみたいでよかったね」

「ああ、百合さんがこの世に生を受けていなかったら今の俺はこうしていなかっただろうな……今度百合さんのお母さんに菓子折りの一つでも、生んでくれてありがとうっていってこようと思う」

 またわけのわからないことを……

 しきりにふっていた雨は気がついてみれば快晴。日光に当たってグラウンドが照り返していたり、遠くに見える山がいつもより綺麗に見えた。

「瑠璃、俺はもう迷わないよ」

「ありがとう」

 片方は胴上げ、もう片方はいちゃいちゃってねぇ、平和なクラスなものだよまったく。ま、友人として猛のことをおめでとうと言ってやらなくもない。



――――――――



ハッピーエンドは何処ですか? ~不幸不幸も幸の内~


~STAFF ROLL~


間山 霧之助


間山 悠子


間山 由美子


宮川 百合


野々村 悠


宮川 雪


東 結


名古 時羽


黄銅 猛


矢田 瑠璃


東 洋一郎


美月


東 公彦


高畑 里香


霧之助のクラスメート


間山家夫妻


野々村家の人々


東家の人々


etc・・・・君は鈴木 宏太を覚えているか!?


 そして、黄銅猛と矢田瑠璃のサクセスストーリーを読んでくれたあなた……




~THE END~



――――――――



「何不自然に終わらせようとしているんだろうか?」

 いやぁ、終わった終わったとか言いながら去っていくクラスメートに一つため息つくももはや誰も聞いてやしなかった。相変わらずわが道を爆走していくクラスメートたちだ。


いやぁ、終わった終わった……今思えば長かった。猛の話もそういやあったなぁと誰かひとりでも思ってくれればそれでいいです。彼も完璧超人ではありませんからね。ここが今度どうなっていくかはわかりませんが生暖かい目で見てやってください。さて、不定期次回予告と行きましょうか?次回、忍び寄る悠子の影……って嘘ですけどね。当分は悠子は帰ってきません。そのとき、霧之助がまだいるとも限りませんからね。ネガティブ思考なのでひょっとすると霧之助が『ヴァァアァ』や『ヴォオオオオ』ってな状況になってしまうかもしれません。不幸不幸も幸の内……ってな状況に今後もなるのかどうなのか、その真相は皆さんの目でお確かめください。十一月十二日木曜、八時五十四分雨月。

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