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◆第百七十三話◆◆

第百七十三話

 自宅に帰り着くと外がどれだけ寒かったかわかった。途中から由美子がくっついて離れてくれないのにもちゃんと理由があったのである。寒いのが苦手なのだろう。

「……ふぅ、やっとついたね」

「寒かった……」

 暖冬だって言われているけど今年はどうやら寒波ががんばっているらしい。あまり風は吹かなかったのだがちょっとした風が吹くだけで身を凍えさせたのである。

家に帰り着くまで話しかけてくる由美子に適当に答えながら何を作ろうか考えたのだが結論は出なかった。結局、冷蔵庫の中身を確認して鍋にすることにする。ああ、トマト鍋というものが食べみたいな……

「今日結さんは来ないっていってたよね?」

「うん、今日は用事があるから夕飯はいいっていってたよ」

 由美子も覚えているのなら間違いないだろう。今日は先日の事件のことをどう処理するか東家で会合があるそうである。誘われたのだが、丁重にお断りした。向こう半年、いや、一年ぐらいはあのくまみたいな人物に逢いたくないというのが本音である。そんなことを考えながら鍋がしまわれている場所から鍋を取り出して、否、引っ張り出してコンロにセットする。

 そんな最中、由美子の声が耳に入ってきた。

「……あのさ、さっき一緒に帰りたくなった理由を聞こうとしたよね?」

「うん、聞こうとしたね?」

 あ~……久しぶりに使うからからちょっと汚れちゃってるな。水で洗おうかな……いや、ちゃんと洗剤をつけて洗ったほうが良いかもしれない。けど、この程度の汚れなら水洗いでもオッケーだと思うけど……

「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

「うん、ちゃんと聞いてるって……おわっと!危ない危ない……危うく鍋が足に落ちるところだったよ……で、何だっけ?」



――――――――



 あれだね、心霊スポットで痛い目を見たものたちはあそこはマジでやばいから行かないほうがいいというわけだけどもいっちゃう馬鹿はいるもんだ。人のいうことを聞かないと馬鹿をみる。

 ほっぺに赤い手形を残した状態で僕はテーブルについていた。

「…ちゃんと私の話聞いてよ!」

 おーいてて……手鏡でみてみるとこれまた見事な赤い手形だ。姉に負けず劣らず貴女の右手は輝いているんですね?っと、また疑惑のまなざしが……ここは謝らなくては生きて行けないかもしれないな。

「うん、ごめんね……」

「真剣な話なの」

「わかってるよ……けどね、人間は食べていかないと生きては……ごめん、僕が悪かったよ」

 左から右へチャックを移動させるような仕草を口の真似でして黙っておくことにした。口は禍の門とはよく言ったものだ。きっと鬼門なのだろう。

「……お兄ちゃん、ちょっとおかしいよ」

「おかしい?……って、何処が?」

 頭か?顔か?いや、自分を客観的に見て何処がおかしいかって言われてもわからないぞ?別にそこまで頭おかしくないし……顔はまぁ、由美子がおかしいというのなら相当おかしな顔をしているのだろう。けど、生まれて今現在にいたるまでお前の顔おかしいYO!WAHAHAHA!なぁんて言われたことはないんだけど?もしかして、周りのみんなが配慮してくれてあえて言わないようにしてくれているのかもしれないな……僕の周りの連中優しすぎだな。けど、それっていってみれば生殺し状態だから。悪いところはきちんと悪いといってくれなきゃ踏ん切りというものがつかないわけで……いや、どっちみちへこむんだけどね。

「あのさ、何か間違っていることを一生懸命考えてるところ悪いけど……おにいちゃんはついこの間まで行方不明だったんだよ?」

「あ~……う~……そうだね、確かにそうだったよ」

 実際そうなのだがふたを開けてみてびっくり……殺人ウイルスだという兵器だと聞いていたものが実は殺人ウイルスじゃないから平気だったと言われるみたいなことだったからなぁ……自分でいっててよくわからないたとえ話だな。ともかく、手に持っているのが火薬だ!と叫ばれて実はカップラーメンに入っているほうだったりそんな感じ。

「私は……本当に心配だった……家に帰ってきたら返事だってないし……結さんのとこにいるって思ってたけど聞いてみたら知らないっていわれる……それから警察に連絡して大騒ぎになって……」

「……」

 きっと、心細かったんだろうな。由美子は一生懸命涙をこらえていたがダムは決壊。泣き始めてしまった。近寄って頭をなでてあげると座ったまま僕に抱きついてくる。短い、本当に血のつながっている兄と妹からみたら鼻で笑われてしまうような短い期間しか一緒にいなかったけど由美子は僕のことを兄だと思ってくれている……そのことが心にしっかりと刻み込まれた……そんな気がしてならない。

「死んだって……死んだって思ってた!もう帰ってきてくれないって思ってたんだよ……けど、認めたくないからずっと一人でここで待ってた……うあぁぁぁぁぁ」

 低くうなるように泣き続ける。シリアスな展開だけども……空気をぶち壊すようで悪いが命の危険にさらされるようなことなんて殆どなかった気がする。一番緊張したのは空港だろうか?パスポートを見せるときと……小銭でブザーが鳴ったときだ。すみませんね、空気読めないどころかぶち壊しなお兄ちゃんで。

 由美子の頭に手を置いてよしよししていたわけだがさらに僕の背中に腕を回してしっかりと抱きしめられた。

「………それでね、私……今回のことでおにいちゃんがどれほど自分の中で大きな存在だか思い知らされたんだよ。笑っちゃうよね、普段はどうでもいいっておもってたのにいざなくなっちゃうとものすごく不安で不安で仕方ない……」

「……それは……ありがとうね」

 死んでも絶対に由美子に真相は言わないと今ここで誓うことにしよう。穴があったらはいりたい、今抱きしめられていなかったら懺悔しながらそこのベランダから飛び降りていたかもしれないな。

「お兄ちゃんが私のお兄ちゃんでよかった」

 しっかりと抱きしめられているわけだけども……いや、これがまぁ、九死に一生だったら絵になったかもしれないけどどうでもいいことで誘拐されちゃってる(これはこれで結さんが聞いたら間違いなく憤慨し、夜通し説教食らうこと間違いないだろうな)僕としては由美子に要らぬ心配をかけてしまったことに恥ずかしいと感じていたりする。

「……お兄ちゃんは……私のお兄ちゃんになれて……よかったと思ってる?」

 泣きはらした顔を僕に見せたくないのだろうか?顔を上げることなく僕の胸に顔をうずめたままそんなことを聞いてくる。

 そんなこと聞かれるまでもない。僕は間山霧之助だ。間山由美子、そして間山悠子の情けないかもしれないが……兄である。

「……そうだね、ここまで妹に心配してもらえるなんて思ってなかったよ…だから、妹でいてくれてありがとう、由美子」

 頭の中に結さんの顔がちらついて仕方がない。交わした約束は絶対に守らなくちゃいけないないのだ……

「霧之助さん、わかってるとは思いますけど今回の馬鹿みたいな誘拐事件のこと他言しないようにお願いします」

「わかってます、僕もこんな馬鹿らしい話を他人に伝えたりしませんから」

 約束は約束である。だから、僕は嘘をつき続けるだろう。きっと、真実がばれた日には魔王がこの世に現れるんだろうな。

「もう一度言うよ、ありがとう、由美子……君が僕の妹でよかったよ本当……」

 これは心の底からの言葉だ。嘘ではないし、嘘をつくつもりもない。未だ抱きついている由美子の頭に手を置いて僕はずっとなで続けてあげたのだった。それが僕のせめてもの罪滅ぼしだと思って。


一つここで昔話でもしましょうか……二年ぐらい前ですかね?いや、三年ぐらい前?ちょうど雨月がここではじめての小説を投稿したときのことです。そのとき、とある死神系小説を読んだんですよ。そして思いましたね。ああ、評価はいまいちでも連載数はここを超えたいと!ちっさな野望ですけどね。それから数年、いまだに超えられていません。毎日二話更新して五十日で百話分。正直言って一日に十話更新しても読者のほうが疲れます。いや、昔はばかばか投稿しまくっていた時期がありましたけどね。反省してますよ。多くて朝、昼、晩の三回がちょうどいいと思っているんですけどどうなんでしょう?まるでクスリの処方時間みたいな感じですけど結構バランスいいかなっておもってます。さて、前置きが長くなってしまいましたが今回の話はどうだったでしょうか?会心出来だとはいいませんが結構いい線いったんじゃないんですかね?こればっかりは手ごたえ感じる方法が限られちゃってますからね。では、次回も誤字脱字に注意して安全点検忘れずに更新しますのでお目にかかったときはどうぞお一つ宜しくお願いいたします。十一月十一日水曜、二十二時三十五分雨月。

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