◆第百七十一話◆◆
第百七十一話
アパートへと帰ってきたとき家族に抱きしめられて警察に連れて行かれた挙句にこの二週間どうしていたかを訊ねられ、一緒にいた結さんが変わりにいろいろと伝えてくれた。警察は犯人を追ってくれるらしいし、テレビには行方不明だった間山霧之助さんが発見されたとか小さかったが取り上げられたりもした。
教師もほっと胸をなでおろしたりクラスメートたちがお前は大丈夫だと信じていたなぁんて言ってくれたりするが何でこんなことになったかを知っている僕としては非常に心苦しいというか……知らないって幸せなんだなって実感した。百合さんに抱きしめられたり、猛に頭を叩かれたりとまるで祝賀会だったが、もう遠慮してくれよと……心の底で思ったりもしたのだが無碍にもできない。
もう十一月も半ばを超えている。失った二週過分の欠席を心配したのだが学校にいっていない間は欠席状態にはなってないのがほっとしたところだった。そして、校長先生や教頭先生から呼び出されたりもした。以上のようないろいろなことが起こったりもしたわけである。
「じゃあ、これを書いておくように」
「はい、わかりました」
手渡されたものは進路希望調査で今後自分の進路を決めていくための重要なものである。こういったものは三年生でもらうものだとてっきり思っていたが一応、この学校では早めに配っているらしい。
すでに提出期限は終わっているのだがこの二週間行方不明となっていたためか大目に……というより当然だが提出期限が延ばしてもらえた。……完全巻き込まれ型の事件で大目に見てもらえなかったらどれだけ厳しい学校なんだと叫んでいたころだろう。
家に帰ってどうかとも思ったが一応両親に話をしておくことにする。しかし、結果としては自分の進路ぐらい自分で決めろといわれてしまったのである。
「……はぁ」
「お兄ちゃんも大変だね。行方不明だったのに……」
行方不明という偽りの言葉に心がぐさりときてしまう。何も悪いことはしていないのに嘘をつかなくてはいけないというこの状況……
「そうですね、心のケアもしなくてはいけないのに……学校の配慮を感じられません」
夕食後のことだったので結さんもいたりする。何か僕が余計なことをしゃべろうとしてしまうときは口を閉ざしたりする。閉ざしたりするのが間に合わないときは押し倒してこようとしたり、自分がその場で転んだりと……隠蔽工作に一生懸命なのである。
「お兄ちゃんは将来何になりたいの?」
「僕?僕は……そうだね、教師がいいかなぁ」
「霧之助さんが教師ですかぁ……」
何か思うところでもあるのだろうか?しばしの間結さんは考えた後に僕に笑いかけた。
「結構いいかもしれませんね」
「けど、きっと大変だよ?」
「まぁ、今の時代何をしたって大変だろうけど教師だったら収入も安定してそうだし」
「「……」」
なんだか夢見てないな、こいつは……といった視線が送られてくる。夢を見るためにはお金が必要なのである。お金で夢を見るためのチケットを手に入れて中に入ったのちにきぐるみの中身が実はむさいおっさんだったなぁんてよくある話だというより現実である。夢って言うのは現実をオブラートで包んだ状態なのだ。
「これは第三希望までありますね?第二希望は何ですか?」
「お嫁……とか?」
「いや、お婿でしょ?」
「霧之助さん……お嫁に来ませんか?」
目がマジだったのでそのままスルー。
「保母さんがいいや」
「保父さんだと思うけど?」
「この間違いは大きいですよ」
そんなやり取りをしながら進路希望は終わりを告げたのだった。もちろん、教師になるためには大学にいかなくてはならないので進学希望に丸をつけるのを忘れたりはしなかった。
―――――――
「霧之助、助けてくれ」
進路希望の紙を担任に出し終え教室に戻ってくると非常に困った顔の猛が待っていた。こいつが僕に助けを求めてくること自体が珍しいのに顔が真っ青だ。健康優良児がそんな顔をしていたら全世界の猛ファンが(いないだろうな……一人を除いて)悲しむに違いない。
「何?どうかしたの?」
「矢田絡みだ……」
ひそひそとそういっているのだが……何故、ひそひそなのだろうか?このクラスの全員が知っていることだろうしいまさら聞かれても困らないだろう。
「ともかく、こっちにきてくれ」
近くの男子トイレに引っ張られていき、中に誰もいないことを確認すると一枚の紙を手渡された。てっきり進路希望調査の紙か?と思うと予想は当たっていた。ただ、それは猛のものではなくかわいらしい女の子が書くような字だった。名前の欄に矢田瑠璃と書かれている。
「第一進路……黄銅君の嫁……うらやましいねぇ」
これがバカップル特有のあれだとわかったときはいらいらしかしなかったりする。腹部に軽くパンチをいれているとさらに別の紙を手渡された。
「……婚姻…届け?ってまたまたぁ、冗談……」
それが本物かどうか……いや、それが偽物であったにせよ矢田さんの名前と印が押されていることには間違いなかった。
「まぁ、なんというか……うらやましいよ」
「そういうならその引いた顔はやめろ!」
ヘッドロックをかけられるもこればっかりは……ちょっと早すぎるんじゃない?
「けどさ、約一年前に一年後に告白するっていってたじゃないか?」
まず第一にあの子は黄銅猛の彼女ではないはずである。しかし、黄銅猛が告白すれば彼女である。
「そう、そうなんだよなぁ……明日がその日だ。俺はお前が帰ってきたとき心のそこからうれしかったぞ……」
「でもあいにく、僕じゃ力になれないよ……告白すれば良いじゃないか」
「それはわかってる……だけどよ、どういった風に告白すればいいかさっぱりわからねぇよ」
今日ほど猛が情けなく見えたことはない。
「放課後、図書館に来てくれ。そこでどうしたらいいか聞くからな」
ため息を一つだけ吐いて元気のない猛は僕に情けない背中を見せて去っていった。あんまりおちょくるとどんな行動をとるかわからないのでここは真剣に考えておくとしよう。
今はやっているかどうかわかりませんがヤンデレというものがはやっていますね。当初、雨月はヤンデレのことをヤンキーがでれでれしていると思い込んでいましたが……ふたを開けてみてびっくり。違いますね、病んでるって意味だそうです。いやぁ、本当にびっくりしましたよ。イメージ的にやりすぎた愛情表現というのがヤンデレってところなんでしょうかね?コメディーでヤンデレは無理でしょうし……だって『今日はね、私の血を料理に混ぜてるからおいしいよ!』ってな感じがヤンデレではないかというよりそのぐらいやらなきゃ駄目だろうと思ってますから。普通にR15指定決定ですね。ともかく、愛するが故の猟奇的行動と置き換えたほうが認識早いんですかね?けど、そこまで愛されるなんてある意味うらやましい……。ツンデレの意味も以前間違えてましたよ。ツンツンしているけどふとした拍子にデレるのがツンデレですが雨月はどうしようもない状況のことをツンデレって思ってました。積むって意味からの派生かと……間違いばっかりですね。『あの子はツンデレ……あの子はもはやどうしようもない状況に陥っている』自分弁護しますが誰からも教えてもらえなかったらこんな反応するんじゃないんですかね?ではまた次回会いましょう……感想とか、いただけると雨月が飛びます。十一月十日火曜、二十時十二分雨月。