第十七話◆
第十七話
先ほど、タイミングが悪いことに屋上と校舎をつなぐ扉が開いて、そこには鬼のようなユリさんが立っているそんな状況だ。
「…………霧之助、これは何だ?」
「違う、百合さんこれはこの子が……」
急いで立ち上がって下にしていた宮川雪を立たせる。するとこちらにだけ、にやっとした表情を見せて百合さんへと飛びついた。百合さんはしっかりと抱きしめる。
「あぁん!百合姉さん!怖かった!」
「そうか……霧之助、お前はまだましなやつだって思ってた……所詮こんなやつだったか」
「違うんだ、違うんだよ百合さん」
「……がっかりだ」
「百合姉さん、急いで先生を呼んできて!」
「わかった、雪、一緒にいこう?」
「わたしはこの人見てるから」
じろりと百合さんはこちらをにらむ。
「お前、今度雪に何かしてみろ……たたじゃおかないからな」
その目つきの本領発揮。にらまれるだけで殺されそうな勢いである。そして僕もそんなことを考えている場合ではない。
「……何もしません!というより何も僕はしてませんから!」
僕の言葉に耳を貸そうとせず、百合さんは宮川雪にすぐに戻ってくるからとだけ告げて去っていった。
屋上に残された僕と宮川雪。怒りを通り越して呆れの境地を初体験。
「……ねぇ、こんなことをする目的は?」
「決まってるじゃない。あなたみたいな百合姉さんをからかおうとする人なんて百合姉さんには必要ない。わたしは身体を張ってでも阻止するわ」
「なるほど……ね」
文字通り身体を張っての茶番劇である。巻き込まれた僕が悪いのか……
「信じようとした人から裏切られるのがどれだけきついかあなたも実感すればいいわ」
「ははっ、残念ながらその程度……屁でもないね」
それはどういうことだと宮川雪が質問する前に担任登場。なんだかものすごく疲れたような調子でその場で事情聴取をされる。
「わたし、あの人にいきなり押し倒されて……」
「あ〜なるほどなぁ」
犯人にされている側なのだが担任教師のやる気のなさはものすごく目に見えていた。しかも、百合さんはいまだおそろしい顔でこちらをにらんでいる。
その後、僕だけ、生徒指導室へと連れて行かれてしまった。
―――――――
退学を覚悟していたのだが意外なことに僕の耳に飛び込んできた言葉は慰めの言葉だった。
「まさかなぁ、やはりというか、なんというかやられるとは思っていた」
「え?」
「あの子以前の中学でも何回かやらかしたそうだ」
やれやれ困ったものだとおじいちゃん先生はため息をついている。それはどういうことだろうかとたずねようとするが、それより先に廊下のほうからばんばんばんという音がして扉が開いた。
そこには悠子と悠が立っていた。
「先生、宮川雪が悪いやつなの!お兄さんは悪くないわ!」
「そうよ、あのシスコン女、霧之助のやつを落としいれようとしているのよ!」
僕の担任教師に詰め寄ってそういっている。落ち着き払っている先生は二人をなだめすかしていた。
「おーおー、わかっとるわかっとる。その話は有名だから」
時間をかけて先生は二人を説得し、僕だけ首をかしげていると二人はほっとしたようだ。僕と目をあわすと悠子は回れ右してすぐに出て行き、悠はこっちに笑いかけてくれた。
「大丈夫、あたしの友達を犯罪者扱いしようとするやつは絶対に許さないから」
その笑いが若干昏い物だったのが不安要素だったが……僕ができることなど何もなかった。
――――――――
結局、無罪放免となった僕だったが、百合さんは納得していないのかどうやら怒っている様だった……放課後百合さんがいなくなってからクラスメートたちが僕を取り囲む。無理に帰ろうとすると数人の男子生徒が僕の前へと現れて壁を作った。もはや何が起こっているのかさっぱりわからない状況でもある。
「……な、何?」
猛が一歩近づいて神妙な表情をしており、少しだけ緊張してしまった。
新キャラの登場により霧之助は誤解を受けてしまっています……そして、最悪の展開に発展しそうですがさて、どうなることやら。