表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/283

◆第百六十九話◆◆

第百六十九話

 救世主を誰かにお願いしたい……そんな時あなたはどうしていますか?今、この状況を説明できる方がいましたらぜひともご連絡ください……

 僕の目の前にはとても体躯のよろしいおっさんが一人座っていた。まるで尋問室のような室内には窓ひとつもなくてセメントの地肌が露出している。十月半ばを過ぎたためだろうか?ここは寒くて床に直接足をつけているととても冷たい。窓がないために今現在が何時なのかさっぱりわからないのである。ケータイや時計などの荷物は取り上げられているために正確な時間がわからない。

「……何で僕はここにいるのでしょうか?」

 監獄か何処かか?そう思ったのだがそれもどうやら違うらしい。まるでクマのような顔のおっさんは一枚の紙を僕へ手渡した。

「……」

 それには東結とかかれておりこれまでの学歴、年齢など……たとえて言うのならば履歴賞のようなものである。若い(今より若い……というより幼い)写真ながら底知れぬ恐ろしさを見たものへと振りまいていた。

「えーと、これをどうしろと?」

「目を通せ」

 恐い人にお願いされれば誰だって頷くしかないでしょ。ここで素直に言うこと聞くわけないだろ馬鹿ヤロー!なぁんて言える人がいたらそいつは空気を読めないおばかさんである。僕はそこまで場の空気を読めない男ではない。

 ざっと目を通して書類を差し出す。

「目を通しました」

「そうか……今日からおれのことを義父さんと呼ぶように」

「え?」

 それは何かのジョークか間違いですよね?しかし、おそろしいぐらい馬鹿でかい(二メートル多分超えてる)人が言うジョークにしては重すぎるものだった。

 大体何故、こんなことになったのだろうか?ちょっとばかり回想してみよう。



――――――



 文化祭が終わって二日たったある日。いつものように夕飯の買い物をするためにスーパーへと向かっていた。最近、黒塗りの車が町をよくうろついている気がするのだが多分、悠のところだろうと思っていたわけである。そして、横付けされて扉が開いたかと思うとあっという間に車内に連れ込まれたのだ。僕の記憶によると連れさらわれるときに目撃者はいないんじゃないかなぁ……人攫いとしては百点、人としては零点であるけどね。車内で暴れればよかったのかもしれないが僕の左と右にはごついおじさんが座り、身動きすら取れなかった。目隠しを手渡され、自分でそれをつけろと指示されたためにその後どこをどう通ったのかわからない……その後は担がれたりしたためにここが何処なのかさっぱりである。更には何かクスリを嗅がされて目が覚めたらこの部屋の隅に転がされていたというわけである。つまり、今が本当に十月なのかは不明なのだ。半年後とかに目を覚ましているかもしれない……



――――――――



 はい、現実逃避をかねた回想終わり。

「いつになったら僕は解放されるんでしょうか?」

「お前次第だ」

「どうすればいいんでしょう?」

「お義父さんと呼べばいい、それだけだ」

 なぁんだ、それを言えば良いのかぁ……って本当にこの人を信じることができるか?いやいや、初めて会った人をほいほい信用していたらいけないだろうけどね。ここは男らしく嫌だと選択するべきだ!ええと、今ある選択肢は……


一:お義父さん!

二:命だけは勘弁してください!

三:パパ!


 なんだかどれも情けない……この状況を打開するためにはやはり従うしかないようである。

「……お義父さん」

「誰がお義父さんだっ!!!」

 手刀が目の前の机に突き刺さった。机がしょぼいのか、おっさんがすごいのかわからないが机がへこんでしまっている。素直に従ったらこうなった……

「動くな、手を挙げろ!」

「はい!挙げました!」

「誰がうごけっつった!」

 ドキュン!そんな感じである。

 そして、そんな馬鹿なことを考えていた僕が現実に引き戻されたときにはすでに胸倉をつかまれていた。

「い、言ってることとやってることが違いますよ!」

「黙れ!貴様うちの娘に手を出しておいてそんな口を叩くかぁっ!!」

「な、何のことだか……」

 うちの娘って……大体予想はつくけど誰のことを言ってるんだか……ああ、なんだかだんだん目の前が真っ白になってきてる……

「ほら、この写真は何だ?うちの娘と一緒に布団の中に入ってるこの決定的な瞬間はぁっ!!!」

 狭まっていく視界に突きつけられたのは一枚の写真。どうせあのときの写真だろうと思っていたらそれは僕の部屋の風景で、僕の布団の中に結さんが眠っているのである。もちろん、その隣にいるのは僕だ。

 こんな写真に見覚えなんてないはずなのに……薄れ行く視界はあっという間に僕に暗闇を与えてくれた。もはや目の前が見えなくなっており、息もできない。

 ろくな死に方はしないと思ってたけどまさかそうなるなんて思ってなかった……よ。



~終~


下手な鉄砲数撃ちゃ当たるとはよく言ったもので今回で第百六十九話です。今のところ全話読んで一回でも笑ってくれているならばあたりですよ。つまり、残りは全部無駄うちってことになりますけどね。最近ネガティブなことばっかり言ってるせいか今日は二回、事故が起きそうになり、飛んでるトンボにぶつかったり蜂が寄ってきたり、帰りにはお葬式のおばさんを撥ねそうになりましたよ……厄日です。誤字だって結構見つけたんで(というより教えていただきました)それを修正しました。百六十四から百六十八ぐらいまでですね。今後も注意していきますがもしも誤字を見つけた場合よろしければご報告いただけるとありがたいです。では、次回もお暇なときにご一読いただけたらうれしいと思います。十一月九日月曜、二十時三十二分雨月。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ