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◆第百六十六話◆◆

第百六十六話

「……」

 今、僕は浴室で悩んでいる。入っていいのかわからなかったが今こうやって使っているわけである。

 良いって言ったんだから使って良いんだろうけどね、もしもあんなこと言われてないよと後で言われたら警察に連行されても文句はないだろうし。ま、何かをしたってわけじゃないんだからお風呂に入るぐらい問題ないんだろうけど……

 そろそろ上がろうかな、そう思っていると声が聞こえてきた。

「霧之助さん、お背中流しましょうか?」

「え……?いえ、いいです。もう洗っちゃいましたから」

「そうですか……では、お待ちしてますから」

 一瞬だけ脳裏に浮かぶピンク色の妄想を白のペンキで消し去る。な、何だったのだろうか今の幻聴は?

 戸惑いながら脱衣所へと続く扉を注意深く掴み、押す。もしかしてこっちの部屋には女性の霊でも出てくるのだろうか?そして、浴室を使用しようとした男に向かってあんな甘い言葉をかけて背後霊となり日夜その平凡な暮らしを脅かすような存在に……

「……なぁんてね」

 そんなバカなことがあるわけないな……そう思って僕は結さんが待っているだろう廊下の先のリビングのような(実際はリビングではない)場所へと向かうことにしたのだった。しかし、そこには幽霊よりもにわかには信じがたい光景が広がっていたのである。



――――――――



「……不束者ですが…その、宜しくお願いいたします」

「……」

 これはいったいどういったことでしょうか?

 部屋は暗くなっており、二人分の布団が敷かれていて、今結さんは三つ指立てて頭を下げている……そんな状態。

 カメラは何処だ?ドッキリって文字が書かれている看板持った人は何処?どうせ誰かが仕組んだ悪戯なんでしょ?

 ぼけっと突っ立っていたら結さんが立ち上がって僕の腕に自分の腕を絡めてきた。

「え?えぇっ!?これは一体全体どういった状況なのでござろうか?」

「……動揺しているのはよく、わかってます。とりあえず……」

 声を潜めてそう、僕の耳に本当に引っ付くぐらいの近さでこういった。

「事情を説明いたしますので布団の中に入ってください。そこなら盗聴される心配もありませんから」

 盗聴?と聞きなおそうとしたらその口は彼女のすべすべとした手でふさがれたのだった。



――――――――



 一つの布団の中に二人で入り込む。身体はもう完全に引っ付いている状態でさっきから心臓が胸を引き裂いて飛び出てくるんじゃないかといったドックンドックンがエブリタイムでバッキュッボン?自分で言ってて意味がわからなくなってきた。

 これ以上結さんの隣にいたら頭が、というより身体もどうかなってしまったのでさっさと本題に移らせてもらうことにした。

「……で、これはどういった状況なんですか?」

「見たままのとおりですよ」

「これじゃまるで……結婚初日じゃないですか」

「そのとおりです」

 何を言っているのだろうか、この人は?僕はまだ結婚できる歳ではないし……いや、まず第一に結さんとは隣人で仲がいいだけだ。恋人だったらよかったかもしれないがあいにくそんな関係ではない。

「困ったことに……うちの親がわたくしと霧之助さんを無理にでもくっつけようとしているんです」

「へ?」

 それはまた、どういった理由で?いや、その前にどう考えても会ったこともないはずなんだけど……東公彦先生とは会ったことあるけどね。

「……この前のパーティーのときもいました。もちろん、こういったことになるだろうとはわかってましたから……過保護すぎるんですよ、わたくしの両親は」

 過保護も何もこれじゃめちゃくちゃである。

「で、結さんはそれにおとなしくしたがってこういった状況になっていると?」

「……わたくしは……おとなしく従ったというわけではありませんから」

 おとなしくしたがっていたというのならそうだろう……種明かしはしてくれなかっただろうし。

「黙っていたら今頃霧之助さんは……」

 じっとこっちを見てくる。ななななな、何ですかその襲ってたでしょ!って目は!そんなこと僕が……って完全に信用されてない。

「ともかく、この布団の中には盗聴機が隠されてませんから」

「……これからどうすればいいんですか?」

「実はすでに一週間後には婚前式みたいなことが待ってます」

「え?」

 それってあれですか?悠と洋一郎が行ったって……こくりと頷く結さんになんだか死んでくれって言われたような気がした。

「そんな強引な!」

「東家が強引なのはもう知っているとは思ってましたけど?」

「……確かにそうですね」

 言われて見れば確かにそうだった。以前も強引なものだったから僕らが割って入って大暴れ……はしてないか。

 もはやあきらめるしかないのだろうか?だが、結さんはしっかりと僕の手を握ってこういってくれたのである。

「……安心してください。わたくしはこういったものが大嫌いですのでどうにかしてみます……望みは薄いですけどね」

 さすが、結さんだろうか?とても頼りになる女性だ。

「えーと、僕もう帰って良いんですか?」

「……それはちょっとできません」

 何でできないんでしょうか?そろそろ心臓が口から出てきそうなんですけど?

「……今ここで戻ったとしてもここにまた戻されますよ。問題はありません。霧之助さんが我慢してくれれば何もしてないことには変わりありません……おやすみなさい」

 そういって無防備にも僕の隣で目を閉じた。疲れていたのだろうか?すぐさま寝息が聞こえてくる。

「……」

 ああ、この人はどんな状況でも平常心でいられるんだなぁ……そう思うと一人で心臓ばくばくいわせていたことがなんだかバカらしくなってきて……僕も目をつぶって寝ることができた。


今現在部屋の掃除をしている真っ最中です。前回の後書きを完全にスルーされたことは言うまでもないでしょうが、部屋の掃除中に投稿をするというのは部屋の掃除がはかどっていないこと請け合いです。中途半端に片付いていないのでいろいろと大変なわけですよ。まぁ、まだ比較的片付いているほうですよ?きっとゴミ袋が散乱しているとでも思っているでしょうが雨月は埃アレルギーのために汚い部屋には住めないという感じです。つまり、定期的に掃除をしていなければ苦しむのが自分自身というまさに身から出たさびといって良いでしょうね。皆さんもゴミ屋敷と呼ばれないようには掃除をしましょう!では、次回も一つ宜しくお願いします。十一月八日日、九時三分雨月。

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