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◆第百六十一話◆◆

第百六十一話

 リハーサル三十分前、クラスメートたちはそれぞれやる気を見せていた。文化祭一週間前に許可を賭けたリハーサルをやるなど前代未聞だが校長先生が多忙のためにこの時間しか取れなかったのである。あとで気がついたことだが、内容をビデオとかに録画するなりなんなりすればよかったのではなかろうか?まぁ、結局のところ誰一人としてこの演劇の台本に対して違和感を覚えているものはいないようで僕としては心配だ。

 常識人なら絶対に反対するに違いない。

 そして意外にも……悩んでいる男が僕以外にもいたのである。

「……霧之助、ちょっとこい」

「え?」

 すでに衣装を着込んだ僕(学ランである)の肩を掴んだまま引っ張っていき、男子トイレへと引きずり込んだ。

「どうかしたの?」

「…ああ、多分……というより絶対に演劇駄目だって言われるだろうな」

「あ、ようやく気がついたんだ?」

「理解しては貰えねぇだろうなぁ……だけどな、俺だってバカじゃない」

「バカじゃないってどういうことさ?」

 猛は不敵に笑って僕の前から去っていった。しかも、クラスとは違う場所に向かっている。少しだけ気になったのだが別のクラスメートが僕の元へとやってきた。

「……間山、百合さんが呼んでるぞ?」

「え?うん……わかった」



――――――――



「あ~あ、これまで私たちがやってきたことは無駄だったのか……」

 意気消沈するクラス。まぁ、いわないでもわかるだろうがもちろんこんなことを学校側が許してくれるはずもなく……演劇禁止令が出てしまった。途中、先生以外の生徒が見に来ていたようだが終わるのほうでは姿を消しており、一般受けもあまりよくないようだ。

「あと残りで何か代わりを思いつくなんて……無理だよ」

 クラスメートたちがそれぞれ帰るために立ち上がろうとした……そのときだった。

「やぁやぁ、諸君……まだちゃんと台詞は覚えてるかな?」

「猛……そういえば何処に行ってたんだよ?確かに現場監督は演劇でないけど中止が決まっちゃったよ」

「ああ、演劇はあきらめねぇといけないな。実に残念だった」

「「「……」」」

「俺たちはここで辛酸をなめさせられている……それはみんなが知っている事実だ。その悔しさをばねにして人間はこの校舎を飛び越えることができるんだよ」

 わけがわからない……どこかで頭を打ってきたのか中止になったことがよっぽど受け入れがたい現実だったのだろうか?現実逃避をするのは結構だが変なことをこれ以上しないほうがいいのではないだろうか?

「猛、今から別のことをしようにも準備する余裕なんてないよ」

「そんなこたぁわかってる……だから、俺たちの演劇を映画にしようじゃねぇか!」

「「「……映画?」」」

 机に突っ伏していた連中もよみがえるゾンビか不死鳥のごとく(多分前者が殆ど)がばっと顔を開けて教壇に立った猛に視線を送る。

 映画……ねぇ……。

「しょぼいの作るの?」

「カメラで撮ってはい終わりじゃないぞ……ちゃんと機材もそろえてあるからな」

「素人がとっても意味ないでしょ?」

「忘れたか?この高校には映画研究部が存在する……毎度毎度ストーリー、出演者……どれをとってもしょぼい連中だったが技術だけはましな部類だ」

「……まぁ、聞いたことはあるけどさ」

 映画研究部は以前演劇部と一緒に自作映画を作っていたのだがもはや廃部同然の演劇部と何かを作る気はないようで(演劇部は大根役者が多かったなぁ)決裂していたわけだったがそこを猛が誘ったらしい。先ほどのリハーサルの光景を実は見ていたらしくあの人物たちが映画研究部だったとは知らなかった。

「なるほどな……」

「演劇禁止令は出てるけど映画は駄目って言われてないからなぁ…」

「メイド喫茶を黙認している学校側だからな……映画ならいいだろ」

 まぁ、僕としてもせっかくあの台本を覚えたんだからやったほうがいい。

「そういうわけで、これから様々なところでシーンをとりまくるぞ!気合入れろ!文化祭はあっという間に俺たちのもとへとやってくる!さらに当日は映画をただ放映するだけだから自由時間が多いぞ!!気になるあの子とデートも可能だ!!!」

「よっしゃやるぞ!」

 そう掛け声を上げたのは百合ちゃんだった。

「「「おおおっ!!!」」」

 主に男子生徒たちがうなり声をあげまくる……やれやれ、立ち直りの早い連中だ。

「じゃ、映画研究部の人たちどうぞ入ってくれ」

 こうして、僕たちの文化祭は新たなスタートを切ったのだった。


お笑い系小説を書いている雨月ですかたまにシリアスな小説も書いてみたいと思うんですよ。最初はええ、もう、結構シリアスに書けるはずなんです……気がついたらあお笑いに走っている……そんな感じなんですよ。さて、そんなことはおいておくとしてもしもこの小説がファンタジーに傾倒したとしたら……どうなったでしょうか?おいおい、ファンタズィーはもうおなかいっぱいだぜ……そう思っている方もいるかもしれません。身も蓋もない言い方すればどうでもいい魔王が大体出てきますからね。ゲームにいたっては殆どが魔王よりも強い奴がいて魔王の存在意義を問われます。井の中の蛙……魔王なのに……ああ、きっとそんな魔王は内政面で優れているに違いありません。下克上風潮が強ければ、または待遇が悪すぎれば下っ端の魔物どもは労働組合でも作ってまず間違いなく勇者側につくと思うし……ぶつぶつ。そんなこと言い出したら創作物って突っ込みどころ満載ですね。先日、感想をいただいているので後書きが元気ですよ。応援とは非常に心強いものですねぇ…。では、今回はここらで終わらせていただきます。十一月五日九時三十一分雨月。

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