◆第百六十話◆◆
第百六十話
ハッピーエンドは何処ですか? ~愛と憎しみの△刑~
~(前略)~
「霧之助……その女は誰?」
霧雨降る五月、付き合っているはずの男が用事があるといったので先に一人で帰っている途中でその男を目撃する主人公。そこには自分の見知らぬ女と一緒にいる彼氏がいるのだった……
「あ、百合ちゃん……いや、この人は……」
「友達よ……宮川さん。私と間山君は友達……今はね」
そういって不敵に笑い宮川の隣を男を引っ張るようにして過ぎていく。
「あなたみたいな女にはちょっともったいないぐらいの男じゃない?あんたみたいな女、どうせ間山君には不釣合いよ」
「……ちょっと……」
「間山君はちょっと黙ってて」
そういわれて男は静かになった。押しが弱い駄目で、優柔不断で、気がついたら八方塞となっているかわいそうなどこかの主人公みたいである。
「あんたは間山君には似合わない……すぐさま消えてよ」
「覚えてろ!」
捨て台詞を残し、主人公は逃げ出すのであった。
――――――――
「……お兄ちゃんこれ……」
「言わないでそのまま続きを読みたくなかったら台本を閉じればいいんだよ」
「……」
由美子は台本をめくるのであった。
――――――――
~(中略)~
「霧之助、私は……私はあなたのことが大好き……」
「僕も……だよ、百合ちゃん……」
抱きしめあう二人。だが、轟音が響き二人は音のしたほうへと視線を移す。
「待ちなさいよ!」
屋上の鍵が壊され、そこに女子Aが入ってくる。
「……間山君の……嘘つ…き」
「……ごめん、だけど僕は百合ちゃんが好きなんだ」
「……霧之助……私も、同じ気持ち……」
「……許さない……」
ポツリと、そんな小さな声のはずだったが他の二人にしっかりとその声は聞こえていたのだった。
「絶対に許さない!!」
柄の長いナイフをかばんから取り出し、構えてそのまま女子Aは主人公の隣を通過……その後、男のわき腹へとナイフを突き立てるのであった。
「あんた……何をっ!!」
――――――――
「これ、本当にやるの?」
「僕は……反対したんだよ」
「……校長先生とか見たら何ていうか……」
「明日、試写会やるんだってさ」
「……」
「最後のほう、読んだら僕は泣きたくなってきたよ」
――――――――
「霧之助、今まで私に嘘、ついてたんだな?」
夜の学校、二人が出会った教室……そこでは密会のような張り詰めた空気が流れている。
「嘘……?僕は百合ちゃんに嘘は……ついてなっ……ぶほぁっ!?」
男が気がついたときには遅かった、彼の胸には深々とナイフが突き立てられており……銀色に輝く月光がナイフの刃に鈍く反射している。
崩れ行く男を女は抱きしめる。
「安心しろ、お前はずっと……ずっとずっと私だけの恋人だ……これでようやく、お前は私だけのもの……」
銀に輝く月はそんな二人を永遠に照らし続けるのであった。
――――――――
「……」
「……」
実に後味悪そうな表情である。
「なんっていうか……夢に出てきそうだね」
「そうだね、これ読んだら僕もうドラマなんて見れなくなっちゃったよ」
残酷なシーンを見た後にお肉なんて食べれない。そんな感じだ。
「あのね、お兄ちゃん……この男って優柔不断で八方美人で……確かに死んじゃっても仕方ないかもね」
「……僕の役なんだけどね」
「……あ、そうなんだ」
「……」
「……」
そしてまた、ものすごく居づらい雰囲気に。
「け、けどっ!お兄ちゃんは実際にそういった人じゃないよ……ね?いや、刺されないように気をつけて」
そういって部屋へとふらふらしながら戻っていってしまった。
「え?何?僕の将来って刺される運命!?」
いや、そんなことはないはずである。大体、彼女だっていないし……と、ともかく明日のことだけを考えるとしよう。
三角関係とはラブコメの基本に違いありません。割合1:1のラブコメなんて夫婦漫才だと思われますよ、絶対。1:1で書いたよ!という人がいたら是非教えてください。探してでも読んで見せますから。自分で書いて読んでおもしろいと思っても傍目八目という言葉があるとおり当事者よりも第三者とかのほうがわかりやすいんですよ。つまり、面白いと思って書いているこの小説だって第三者から読んだら……ってなことがあるかもしれません。不安です……明日から二学期、まだ宿題も三分の一残っている……そんな心境ですね。では、また次回お目にかかりましょう。十一月四日水、十六時五分雨月。よろしければ……感想なんかいただけると非常に有難いです。