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第十六話◆

第十六話

 百合さんからぼこぼこにされた次の日、僕はどういった顔で百合さんに挨拶すればいいのかわからなかった。

「おはよ、霧之助」

「……おはよう、百合さん」

「どうした?元気ないな?」

 長い髪を手ですいて微笑んでくる。

「そ、そんなことないよ…百合さん」

 失礼だが、百合という名前がぴったりだと感じてしまったのはこの瞬間だろうな。そういえばどんな風に告白したのだろうか?昨日の夜はそんなことを考えながら眠ってしまったため、夢の中にまで百合さんと謎の女性が出てきて僕の前でずっといちゃいちゃしていた。そのせいで寝ていたという感覚が薄い。

「お前、何か変なことを考えてないか?」

「か、かんがえてないヨ」

「……本当かぁ?」

 したから覗き込むようにして百合さんの整った若干こわもての顔が迫る。愛想笑いをうかべながらあらぬ方向へ顔を動かしてため息。

「ああ、わかった」

 両手をぱんと叩いて百合さんが納得したようにうなずく。

「お前、Mだったのか!」

 ぎゃーはっはっは!そんな笑い方をしながらこちらを指差している。クラス中の連中が僕を見ていた。

「ち、違う!僕は……僕はMなんかじゃ……」

「ひーっひっひ!腹いてぇ!」

 床を転がりまわり、スカートがめくれて黒下着が覗いていることにも気がついていないようだ……百合さんに馬鹿にされていると考えているとものすごく恥ずかしくなってきた。

「僕は…僕はMなんかじゃないやいっ!!!うわーん!!」

 扉を開けて、教室から逃げ出す。先生がやってきていたが無視してそのまま屋上へ……



――――――――



 一時の気の迷いとともに意味不明な行動をしてしまった自分に恥じてこれからどうしようかと考える。

 屋上を出ようとすると女子生徒がちょうどやってくるところだった。今の時間帯はまだ朝のHRのはずだ。

 なんとなく罰が悪かったのでよけて階段の踊り場へと向かおうとしたのだがよけた方向へ身体を動かしてきた。知り合いだろうかと思い顔を見たのだが知らない人だった。ああ、もしかして身体を動かしてわざわざ動いてくれたのだろうかと思って空いた方向へと身体を動かす。

「………」

「……」

 相手はさらに僕の前へと立ちはだかり、こっちを見ていた。

「あの、どいてくれませんか?」

「君、宮川百合の知りあい?友人?恋人?」

 こ、恋人だ何ておそろしい……大体、あの人はその名前のとおりなんじゃないのか!?そんなことを思って驚いていると相手は僕を突き飛ばし、校舎と屋上をつなげている扉を閉めた。

「あいたた……あんた、何なんだよ」

宮川雪みやがわゆきって名前。百合姉さんの妹よ」

 なるほど、目元が似てる……じゃなくてだ!

「何で妹がここにいるんだよ!百合さんは一年生だろ!」

 そういうと思い切り馬鹿にしたような目をされる。

「あのね、あの人は留年してるのよ。一切年下なの、わたしは」

「あ、あぁ、なるほどね」

 僕と悠子はその逆を行く存在だろうが…もしも、留年してしまったら僕は下級生になってしまうだろう。妹のほうが上級生ってどんな話だよ!

「君、百合姉さんのこといじめたでしょ」

「はぁ?何言ってるんだよ!百合さんからいじめられてるのが僕だろ!」

 昨日なんてぼこぼこにされたし……まぁ、あれはあれで情報を得た対価なんだけどね。涼しい顔で僕のにらみ顔を流してため息を再びつく。あきれた仕草は首をすくめるといったものまであった。

「……百合姉さんは自分に普通に接してくれる友人が欲しいだけ。前はそれで近づきすぎちゃっていろいろと問題になったんだけど……あなたには期待してた。あなたは百合姉さんの友人失格」

 とんだ期待はずれだとばかりに再びため息をついていた。その仕草が悠子に似ているような気がしたが、悠子はここまで馬鹿にはしない……はずだ。いや、そういえば初めて会話を交わしたときにあんなふうに罵倒された気がしないでもないが……もはや記憶があいまいになってきている。

「あんたに決め付けられる筋合いなんてない!それでも僕は百合さんの友人だ!」

「……じゃあさ、試してみる?」

 宮川雪はすっと近寄ってきて僕をいきなり押し倒す。だが、今の光景だけを見たらどうみても僕が宮川雪を押し倒した感じだ……さらに、タイミングが悪いことに屋上と校舎をつなぐ扉が開いて、そこには百合さんが立っていた。


宮川百合のシリアス編……コンセプトは些細なことでも問題に発展するというものです。ものすごく些細なことでなにやら大変なことに。価値観とかそういったものの違いがどれだけ人とと違うかっていうのが伝わればなぁと思っています。これから結構続きますのでその辺、よろしくお願いします。あと、できましたらこの宮川編が終わって感想なんかいただけたらなぁと思っています。

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