◆第百五十九話◆◆
第百五十九話
両手いっぱいのぬいぐるみ……しかも殆どブタのぬいぐるみだ。百合ちゃんはブタがお好きなようでせっせせっせととってくれた。ちょっとしたギャラリーができるぐらいだったから結構すごいのだろう……もちろん、僕にはそんな超人的なスキルはないために一回だけ挑戦して駄目だった。まぁ、僕が失敗したので百合ちゃんが取ってくれたというそんな情けのない話につながっているわけだけどね。
「……」
両手いっぱいのぬいぐるみたちは雪ちゃんがくれたぬいぐるみの隣に鎮座される。ああ、増えたなぁ…お部屋に飾られているぬいぐるみたち。そして、近くの棚の上には悠子がくれた謎の置物……この部屋の方向性について誰かに問いただしたくなってきた。
「考えてても仕方がないか……」
一人でため息をついて立ち上がり、今日の夕食を作ることにする。そろそろ由美子も帰ってくるころだろうし。
魚料理を作ることにしようかな……冷蔵庫の中身を確認してそんなことを考えているとチャイムが鳴り響いた。
「はーい!」
返事をしてコンロの火を消しておく。揚げ物なんかしているときに電話や接客するときは絶対に消しておかないといけないのである。非常に危険でこれで家を焼いてしまうという……『焼肉やいても家焼くな』なぁんてフレーズが前にあった気がする。
鉄製の扉を開けるとそこにいたのは結さんだった。
「あ、夕飯ですね?今日は結さんの好きなお魚料理にしようと思っていたんですよ」
「そうですか……ではお邪魔しますね」
そういって結さんが中に入ってくる……ううん、結構いいご近所づきあいじゃないかなぁ?今時ないでしょって……お隣にチャイムを押されてすぐさま内容がわかる僕も僕だけどね。
「そういえば最近また来ませんでしたけどどうかしていたんですか?まさか、ご飯がおいしくなかったから飯抜き反抗してたんじゃ……」
「違いますよ、相も変わらず霧之助さんの料理はおいしいですけど……ちょっと東本家のほうから呼ばれたりしていたので」
「へぇ、何か面白いことでも起こったんですか?」
「ん、まぁ、ちょっと面白いといえば面白いんですけど……」
「ただいま~」
由美子が帰ってきたようで扉が開け放たれる。
「あ、結さん来てたんですか……お久しぶりです」
「ええ、お久しぶりです……とりあえず、席につかせてもらいますね」
そういって廊下を通って僕ら二人より先に席に着いたようだ。
「何かあったの?」
「いや、別に…何もなかったよ?」
「ふ~ん?」
あ、そのふ~んは信じてないね?
何か言い返そうとしたのだが不毛な争いになると思ったのでやめておいた。
―――――――
「で、さっきなんて言おうとしたんですか?」
「……」
由美子と二人で結さんはテレビを見ている。その最中に話しかけたのだが聞く耳を持たないようで返事をしてくれなかった。
「じゃあ、そろそろわたくしは失礼させていただきますね」
そういって戻っていってしまったのだった。
―――――――
「あ、そういえばさお兄ちゃん」
「何?」
「文化祭ですることって演劇だったよね?台本って言うか……そういったもの見せてくれない?」
愛憎渦巻く台本が気になるようであるがあれを見て楽しいと思う人なんているのだろうか?
「当日見に来ないの?」
当日見られたって問題あるだろうが今ここで読み終わった後由美子が申し訳なさそうな顔をするというのも見ていて気持ちいいものではないだろうと思って先延ばしにしてみる。
「う~ん、多分見に行かないと思うからさ」
「そっか……しょうがない、ほら、これが台本だよ」
台本の一ページには台詞以外のあらすじが書き込まれていたりするのである。
「じゃ、拝見しま~す」
愛憎渦巻くあの台本……きっと中身が気になっていることだろう。
朝起きたら……すごく寒いことに気がつきました。外に出るととても寒く…ああ、そろそろ雪でも降るんじゃないかなぁそう思いましたよ。さて、次回で百六十話目です。作者自身も十話ごとに騒ぐのはやめておいたほうがいいだろうということで……騒ぎませんとも!ええ、二度と騒いでやりますか!んじゃまぁ、次回は台本のあらすじなんかをやっちゃいます。期待してないときにやってくる感想が一番うれしいんですよ……次回もお暇なときにお読みください。十一月三日火、九時二十一分雨月。