◆第百五十八話◆◆
第百五十八話
『宮川百合捜索部隊』……即席で出来上がった部隊の隊員数は二人であり、僕が隊長でその後輩となる名古時羽は後ろの守りをがっちり固めてくれていた。
「あの、先輩…宮川先輩がトイレに入っているのなら教室で待っていればいいんじゃないんですか?」
女子トイレ前でどうやって中に入ろうかと考えていた僕はその一言で自分が間違いだったことに気がついた。
「……いや、僕も考えてたよ?」
「嘘言わないでくださいよ……やっちゃったなって顔してますよ」
「……してないよ、してないもん」
「じゃ、あたしもう教室帰りますね」
無常にも去っていこうとする名古ちゃんの肩に手を置き、引き止める。
「名古ちゃ~ん、一人にしないでよ」
「気色の悪い声を出さないでくださいよ」
「じゃ、わかったよ……名古ちゃ…いや、時羽ちゃん……まだ僕と一緒にいてくれよ」
「……先輩」
「霧之助、一緒にいてくれって……女子トイレの前で何してるんだ?」
「……」
さびた首が声の下方向へとゆっくりと、そう、ゆっくりと動いていき……そこにご光臨召された魔王様の姿を瞳に映す。
邪気か、オーラか、はたまた必殺技を繰り出す前の格闘家宜しく身体の周りに金色ともとれる謎の発光体が舞っている……そんなものが一瞬だけ見えた気がした。
「正直に、私にもわかりやすく教えてくれ、何をしようとしたのかを!」
「……えっとねぇ~」
頭をかいているうちにちらりと名古ちゃんのほうへと顔を動かすも彼女も百合ちゃんの身体からにじみ出る恐怖を捉えたのかかすかに震えているようだ。死なばもろとも……そんな言葉もいいかもしれないがこれって仲間に使うべき言葉じゃないね、うん。
こういった殺気漂う教育上よろしくない光景を和やかにするためにはギャグを飛ばすとかジョークを飛ばすとかそういったことをやっておかないといけないだろう。
「ちょっとナンパを…可愛い子がいたから♪」
「「え?」」
その場が凍り付いてしまった。な、なれないことはしないほうがいいみたい。
「じょ、冗談だよ、冗談!僕がナンパなんてできるわけないでしょ!」
「「あ、あぁ……」」
そして妙に納得している百合ちゃんに名古ちゃん。自分で穴を掘ってそれに埋まっている気分だ。
そんなバカなことをしていたおかげで休み時間が終わるチャイムが鳴り響く。
「あ、やばっ!!じゃ、先輩さよなら」
急いで戻らないと!そんな言葉を残して名古ちゃんがさっさと姿を消す。
「百合ちゃん、僕たちも行こうよ」
「……ああ」
未だ不機嫌そうだがとげとげしさが消えているような消えていないような……まぁ、よくわからないけど近づいて喰われるということはなさそうだ。
二人して教室へと廊下を走っていると百合ちゃんがこっちを見ていた。
「何?どうかした?」
「ん?いや……ちょっとつっけんどんな態度とって悪かったなって……思っただけだよ」
ぷいっとあさっての方向を見ながらそんなことを言う。
「気にしないでよ」
「……霧之助……今度、二人で駅前のゲーセン行かないか?」
「え?いいけど……どうかしたの?」
「……私のほうが雪よりもすごいってことを見せてやろうと思ってな」
不適に笑う百合ちゃん。謹んで辞退(金欠病のため)させてもらいたかったのだがせっかく誘ってもらっているんだからついていくべきだろうなぁ……。
「楽しみに……待ってるよ」
「そっか、じゃあ今日の帰り行こうな」
僕の人生ってきっと漂流しているだけなんだろうね。オールとか何もない周りの波によってきっと進路が変わるに違いない。
ストックはできれば十話ほどあったほうが気休め程度にはなります。もちろん、一日に会の更新でそれも大体一週間で消費されちゃいますけどね。はっきりいってストックがあれば先でちょっとした事件が起こっても対処できますしさて、これからどうしようか?なぁんて悩みも余裕をもって悩むことができます。つまり、一日一話プラス半話分を書けば二日で三話分……といった具合に理論上はなるものなのですが現実とはいつも厳しいものであんなにたくさんあった(一時期二十話分)ストックはあっという間に消え去って今では明日更新できないんじゃないか?といった日々を送っています。いや、まぁ、無茶をするのも体に毒だとわかっていますので休日の日に溜め込むように努力しています。さて、大分前置きが多くなっていますが第百六十話にて台本の話となります。台本?なんじゃそりゃと思う方もいるかもしれませんが……読んでのお楽しみということで。感想、感想、感想……お待ちしております。十一月二日月、八時六分雨月。