◆第百五十七話◆◆
第百五十七話
百合ちゃんのご機嫌が四十五度ぐらいの傾斜であるときがついたのは次の日のことだった。
「百合ちゃんおはよう」
「……(ぷいっ)」
挨拶すると首をまわされて無視されてしまうのである。何が原因かわからないが、このままこのご機嫌斜めが続いてしまったらいろいろと大変かもしれない。第一に、劇の練習に支障だって出るかもしれないからだ。
回りこんで挨拶しようとすると席をたち、教室外へと行こうとする。ついていこうとすると『トイレ!ついてくるなっ!!』そういわれてしまった。
「どうすりゃいいんだろ……」
「女子トイレに侵入することか?」
「違う、百合ちゃんの機嫌が悪いみたい」
トイレで機嫌が悪い…か。いや、なんでもないさ、何でも。一つ、僕はため息。隣を見ると猛が困ったように、だがどこか面白そうに僕のほうを見ていた。いいよなぁ、こいつは。いっつも面白そうな表情してるし…
「けどよ、百合さんのご機嫌がよろしくないのはいただけないわけだ」
クラスメート全員がため息をついた。僕らのクラスはここが一つらしい。
「そんなの、僕もわかってるよ」
「間山、お前しか百合さんの機嫌をよくできる奴は存在しないぞ」
「勇者様だなうらやましい」
そんなことを言うクラスメートに僕はその権利をあげてもいいかもしれないと思ったのだがやめておいた。ここで反論したら単なるおバカさんである。
「ああ、そういえば間山昨日百合さんの妹とデートしてただろ?」
「デート?デートなんてしてないけど?」
「え?じゃあ隣にいた女の子は百合さんだったのか……駅前のゲームセンターにいなかったか?」
「ああ、いたよ。うん、百合ちゃんの妹と一緒にいたよ」
そういった瞬間、クラスの雰囲気が非常に悪くなった……主に、それは僕にむけられていると思われる。
「ど、どうしたのさ?」
猛が一つため息をついてこういった。
「俺、百合さんが機嫌悪くなった理由わかった気がしたよ」
「「「奇遇だな、俺たちもだ」」」
僕の肩に手を置いて猛はぼそりというのだった。
「……今すぐ百合さんのご機嫌をとってくるべし」
「…え?僕が?」
「お前以外の適任者がこのクラスのメンツの中でいると思っているのかっ!」
そういってざっとクラス中を見渡すがなるほど確かに誰もが僕と目をそらしている。お前が犠牲になれよ……そんな空気を肌で感じることができる僕たちは仲がいいクラス。
「え?もう一度聞くけど僕がご機嫌とってくるの?」
「ご機嫌とるも何もお前が発端、元凶、カビ発生源だからな。俺はこのクラスが仲がいいときが居心地がいいけど一人でも悩んでいたらそれはそれでよくないと思うんだ……そうは思わないか?」
「まぁ、そうは思うけど……思うけどね」
「つべこべ言わずに行ってこいよ」
背中をドンと押されてクラスから放り出される。戻ろうにも戻れないし……腹をくくるしかないみたいだ。
さて、それより百合ちゃんは何処に行ったのだろうか?さっきの言葉が本当なら女子トイレにいるってことだろうけど…さすがに忍び込んで確認するのはまずいよ。
「あれ?先輩こんなところで何してるんですか?」
「……」
天使って表現使ってあげてもいいかもしれない……僕は名古ちゃんの手をとってこういってあげたのだった。
「君は天使見習いだ!」
「は?」
とにかく、百合ちゃんを見つけることを第一と考えよう。
文化祭から派生した何度目かわからない宮川百合編。この小説の隠れたヒロインということで人気があるかもしれません……。聞かれちゃいませんが作者の中でも結構上位に食い込んでくる登場人物です。気がついてみれば十一月ですよ。この小説が投稿されてからあと少しでええと……三ヶ月ですね……よくもまぁ、ここまで行ったものです。予想をはるかに超えていくこの小説、一体全体どこまで続くんでしょうか?十一月一日日、十四時三十四分雨月。