◆第百四十九話◆◆
第百四十九話
「じゃ、今年は文化祭何をやるか決めるとするか……手を上げて発言しろよ?」
猛が教壇に立ってそんなことを言う。ああ、もうそんな季節かぁ……去年の文化祭はいろいろな意味でエキサイティングなことが起こったっけ?
物思いにふけっているとどうやら決まったようでチョークで何かに丸をつける。
『演劇』
それだけしか書かれておらず、黒板のほかのどの部分を見ても他の文字は書かれていなかった。
「よし、じゃあ今年もえんげ……」
「ちょっと待ちなさい」
待ったをかけたのは我がクラスの担任だ。まるでサンタクロースのような風体だがこれでもちゃんとした教師である。
「……去年起きた騒動で演劇は却下されておる。演劇にかこつけてまた暴れる生徒がいるかもしれんからな」
「「……」」
僕と猛は黙り込んだわけだが他の生徒はぶつくさ文句を言っていた。もはや耳が遠くて聞こえませんといった具合で窓の外を見始める担任教師をもはや誰も見ていなかった。
「じゃ、今から五分後また決をとるから決めとくように!」
そういって自分の席に座っていくのをボーっとみているとお隣から声がかかった。
「何がしたい?」
「え?僕は……みんなとなら何でもいいよ?」
「そういう態度が世界を破滅に導くんだぞ、霧之助」
「いや、世界も何も文化祭なんだけど……」
「ところでさ、空港のハブ化ってどういう意味だ?大体、ハブって何?」
「ああ、あれって自転車の車輪についている真ん中の部品のことらしいよ?」
「へぇ、知らなかったなぁ~」
そんな雑談をしていたらあっという間に五分経ってしまった。特に二人で意見も出し合っていないためにどうしようか?なんて他力本願の視線を百合ちゃんに向けるとウインクが返された。え?嘘、百合ちゃんのウインクにドキッとしてしまうなんて……
バカなことを考えているとさっさと手を上げた百合ちゃんがこんなことを猛に、正確には担任に言ったのだった。
「……先生、非暴力的なものだったら演劇やってもいいんですよね?」
「む?それは……」
「オリジナルの台本で作成して学校関係者、校長先生や教頭先生に先に見てもらってそれを固定で何度かやります。それなら暴力事件に発展することはないと思いますけど?」
おおっ、そんな声があちらこちらから聞こえてくる。すごいなぁ、百合ちゃんはさっきの短時間のうちにそこまで考えていたのか。
「だが……」
「先生は生徒がこれだけ頼んでも首を縦に動かしてくれないんでしょうか?」
「……」
すごい、いつもは暴力に訴えかけそうな百合ちゃんなのに今日はものすごくきらめいて見える……いつもは死に掛けの不死鳥(死にそうで死なない)みたいだと思っていることを悟られないようにしておこう。
結局、その後は百合ちゃんがじきじきに校長先生の部屋へと向かって交渉を成立させた。ネゴシエーター宮川百合、そんな名前をうちのクラスは忘れることはないだろう。
さぁ、やってきました文化祭の準備。正直、文化祭は文化祭よりも準備が楽しい。いろいろと想像ができますからね。もちろん、霧之助たちの文化祭が普通に終わるとは思っちゃ……まぁ、大人しく終わらせるというのも一つの方法かもしれません。ホラー映画だって来るか?来るか?……こない、が一般的手段ですからね。どうでもいいところで行方不明になって気がついたらその人が死んでいたなんてよくありますから。文化祭、始まって霧之助たちはいつものメンバーで肝試しを行っているクラスへと向かう。そこで、彼らは……。ってホラーに変わってますね。話はぼちぼち考えるとしましょう。では、次回もお時間があればご一読ください。十月二十四日土、十二時三分雨月。