◆第百四十八話◆◆
第百四十八話
九月に入ったとは言っても未だ暑い日々が続いている……残暑。夕飯を食べ終え、バラエティー番組を見ながらあはあは笑っているとお風呂に入っていた由美子が出てきたようだった。またいつものように下着のままで出てきてそのまま部屋へ直行するかと思いきや僕とテレビの間に陣取ったのだった。
谷間を見せるような感じでポーズをとる。
「どう?セクシーでしょう?」
「のぁっ!!成美たんの水着シーンが由美子の所為でみれなかったじゃないかっ!!」
急いで立ち上がって別の場所から見るも、時すでに遅し。カメラはすでにスタジオ風景を写していて他の芸能人たちが『セクシーだった!』『すごいっすね』といった感想をもらしている最中だった。ああ、僕もその輪にお茶の間から加わりたかった。
「ほら、さっさとパジャマを着てきなさい!」
「……ふんっ!!」
まるで親の敵を見るような目つきで僕をにらみつけて部屋へと入っていった。あれ?何で由美子が怒ってるの?
さっぱり理由がわからないので無視しておこう。どうせいつもの些細なことで起こっちゃう性格が出たのだろう。
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『PIPIPIPIPIPI……』
「朝……か」
布団からはみでそうな状態で目を覚まして机の上におかれている目覚まし時計をOFFにする。そしてそのまま部屋を出て朝食を作りに向かうのだった。今日はいつものように味噌汁とご飯、焼き魚でいいだろう。
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異変に気がついたのはいつも由美子が起きてくるはずの時間帯になっても由美子がおきてこないことだった。由美子の部屋から目覚まし時計のアラームが鳴っている。
「由美子?まだおきてないのか?」
由美子の部屋へと通じる扉を開けて目覚まし時計を止める。布団のほうを見るともぬけの殻のようだった。
頭の中に誘拐という文字がふっと浮かんでしまった。
「……まさか……ね…」
もしかしたらいつもより早く起きたので朝シャンをしているかもしれない。そう思って脱衣所近くまで行ってみるも気配はなく、また、シャワーの音なんてしなかった。実際、開けてみても使用された後など残っていないようで急いで由美子の部屋に戻ってベッドに触ってみるが人のぬくもりなんて残っていない。つまり、由美子は長い間ベッドから抜け出したままとなっているはずなのだ。
その後は再び由美子の部屋、今は使われていない悠子の部屋、押入れ、脱衣所、浴室、ものすごく短い廊下、ベランダ……何処を探しても見つけることが出来なかった。探している間に朝食を食べているかもしれないと思ったが最終的に戻ってきて朝食が冷めているだけだったことに気づき、由美子が未だここにはいないということを知らされた。
こうなったら警察に連絡するしか……
頭の中がパニックになっていたのだろう。慌てて受話器を取り上げてボタンを押す。コール音が鳴り響いている間、どこかの部屋の音がした。後ろを振り返ると僕の部屋から由美子が出てくるところだった。
慌てて受話器を下に置いたことはいうまでもない。
「由美子……僕の部屋にいたのか?」
そういえば自分の部屋を調べていないことに気がついた。人が隠れるようなスペースは何処にもなかったはずだし、朝部屋を見たときも誰もいなかったはずだから探さなかったのである。
眠たそうに目をこすることもなく由美子は僕のほうをじっと見ていたが、すぐさま頬を赤く染めるのだった。何でしょう?何故、そんなに頬を染めるのでしょうか?
「お、お兄ちゃんが悪いんだからね」
「何が……悪いんでしょうか?」
「とりあえず、朝食食べようか?そろそろ行かないと遅刻になっちゃうから」
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事の顛末はこういったことだった。昨日のあれでプライドを痛く傷つけられたらしい由美子は僕が寝静まった後、僕の部屋にしのびこみ、さらには布団の中にも忍び込んでいたらしいのだ。朝になったらびっくりするだろう兄に向かって『責任取ってよね!』と嘘をつこうとしたらしい。
だが、朝になって目覚ましが鳴り目を覚ました僕は由美子を完全にスルー。気づきもしないで朝食を作りに行ってしまうというイレギュラーな事態へと陥ったわけである。さて、これからどうしたものだろうか?出るに出れない状況になった由美子は遅刻ぎりぎりまで粘ることにして扉からそっとうかがっていたそうだ。
「……で、お兄ちゃんの必死そうに探す姿に免じて姿を見せてあげたの」
「……うれしそうに言ってるけど、本当は警察来ちゃったらやばいって思ったからでしょ」
「あ、ばれた?」
ばれるに決まっている……。
「やれやれ、朝から騒動なんてやめてくれよ……」
「私は……うれしかったから。あんなに一生懸命私のことを探してくれてたし」
「……本当、誘拐かと思っちゃったよ」
寿命が縮んでしまったかもしれない。そう思いながらふと、テレビのほうを見ると昨日見そびれた成美たんの水着姿がまた映っていた。
「おおっ!!」
「……お兄ちゃん!!」
「何……あべしっ!」
強烈な張り手を左頬に叩きつけられたのだった。
霧之助と悠子ではありえないが、霧之助と由美子だったらありえそうな話でした。いかがだったでしょうか?個人的には一番好きな話かもしれません。って、自分で言っていたら世話ないですけどね。先日、某ゲーム店に行くといつも売り切れだったポケモ○が売られていました。それでも、まだSSのほうは売り切れており、もう片方を買うことに。いやぁ、久しぶりにやってみれば面白いものです。一番苦戦したのはやっぱりあの乳牛でしょう。雨月のカマキリが、鬼雀が、棘Pが、鰐の次が、蝶が、そして大尾立ちが無残にも転がるという怠惰な技で撃沈です。結局、カマキリに玉子を産ませそれを赤い何か(無視ではない何か)に進化させてそれを育成。見事に突破し、四天王を赤い何か一匹で制覇。レベルが気がついたら一匹だけ突出して高くなっていました。っと、妙に熱くなってしまいましたがまったく関係ない話でしたね。さて、次からいよいよ文化祭のお話スタートです。十月二十三日金、十六時七分雨月。