◆第百四十二話◆◆
第百四十二話
スーパーのほぼ中央部分に聳え立つ子どもたちの牙城、お菓子売り場。基本的にそこにいるのは小学生ぐらいで、がんばって中学一年生ぐらいの子どもたちだと思われるわけだが、僕が通っている高校の近くにあるスーパーには高校一年生の女の子が出没するのである。
名を、名古時羽という。彼女は自分のことをコレクターと呼んでくれとぼくに言ったのだった……
「で、何をもめているのさ?」
「あ!先輩!ちょっときいてくださいよ!この子があたしが先に目をつけたお宝をとろうとするんです!」
「うぅ……」
その手に握っているのは食玩の箱のようだった。どうやらそれを奪い合っているようだが……僕は無言でそれを取り上げると男の子に渡したのであった。
「ああっ!先輩なんてことをするんですか!?」
「はい、これをもって急いでお金を払ってくるんだよ?……名古ちゃん、ちょっときなさい」
むんずと名古ちゃんの首筋を捕まえて引っ張っていった。野菜売り場まで戻ってくるが結さんの姿はないようだ……まぁ、いいだろう。あまり人には知られたくない趣味だったようだし、この前の海じゃ仲良く遊んでいたのだから……けど、相手の趣味を知って離れていくのもちょっと人としてどうかなぁって思うけどね。
不貞腐れてしまっている名古ちゃんにさて、どのように話をしようかと思ったのだが先に言い分を聞くことにしたのだった。
「じゃ、言い分を聞かせてくれないかな?」
「言わせて貰いますけどね!あの中には激レアのスィークレッツがはいっていたはずなんですよぉ!」
そういってどうしてくれるんですかぁっ!と叫んでいた。周りの人からの視線が痛いが……ともかく、名古ちゃんは自分の仮説を信じてやまないというわけである。こういったコレクターさんのことをどうすればいいのか想像もつかなかったので自分の仮説を実行してみた。
「ちょっとついてきて」
「何ですか?もしかして箱であたしに買ってくれるとでも?」
「いいから!」
名古ちゃんの手を強く引いて、僕はお菓子売り場ではなく、出口方面へと向かったのだった。
――――――
「ごめん、ちょっと君いいかな?」
「んぅ?」
こちらを向いた洟垂れの子ども。その子の手には先ほど僕が無理やり名古ちゃんから奪って手渡した食玩の箱が握られている。
「先輩、もしかして一度は渡しておきながら恐喝で返してもらうという昔的な手法で……」
「そんなことするわけないじゃないか……」
まったく、一度でいいからこの子の頭の中を探してみたいものだよ。きっと面白い世界が広がっているに違いないね。
男の子の目線とあわせるために腰をかがめて僕はお願いのポーズをとった。
「ごめんね、できればここで箱の中身を見せてくれないかな?」
「いいよぉ!」
即答してくれたことが普通にうれしい。最近はこうやって話しかけているだけであまりいいうわさはたたないからね……そんな素直な子は五歳児ぐらいだろうか?ともかく箱をべりべりと開けており(隣で名古ちゃんがなんと開け方が汚い!と叫んでいたりするが放っておこう)中身を確認する。
「……あ、これもう持ってる奴です」
「そっか、とりあえず無駄なお金使わなくてよかったでしょ?ありがとう、ここで開けてくれて」
「うん!ばいばい!カップルのお兄ちゃん、お姉ちゃん!」
こっちに手を振りたくって去っていき、僕は名古ちゃんの手を引いてお菓子売り場へと向かっていた。
「なにぼけっとしてるの?」
「え?あ、いや、さっきの子が……」
「どうかしたの?」
「い、いえ……何も、ないです」
僕はもはやそんな話を聞いておらず、先ほどの男の子が持っていたパッケージを探し出してレジへと向かう。
「何してるんですか?」
「取り上げてあの子に渡したんだからさ、僕が一個買ってあげるよ」
「せ、先輩……気持ちはうれしいんですけど適当に選ぶのはどうかと……」
そんな言葉も無視してさっさとお金を払う。シールだけ貼ってもらい、それを名古ちゃんに渡した。
「はい、もう子どもとケンカなんてしないでよ?」
「してません!」
「いいから、はい、今日はおとなしく帰るんだよ~」
スーパー出口まで送っていき、僕は名古ちゃんに手を振った。
「ぶぅ、先輩のばーか!」
何故、バカ呼ばわりされなければいけないのかわからなかったがまぁ、いいだろう。名古ちゃんを見送ってから僕は結さんを探すことにしたのだった。
最近めっきり夜が寒くなってきました。いまだに雨月の部屋には扇風機が陣取っているわけですが夜中トイレに行こうとするとそれに引っかかって扇風機の一部がもろみぞおちにヒットするという事件が発生。もだえながら這うようにしてトイレへと向かったりします。そんな危険な扇風機を放置しておくのも問題ありすぎですがまだ片付けるべきではないと考えております。だって、片付けるの大変だもん。さて、名古編始まるよ♪なぁんていっていた気がしますがどっからどうみても名古編じゃなくて由美子編が始まることに気がついてしまいました。途中までは名古変だった気がするんですけどね……どこで間違えてしまったのでしょうか?ま、まぁ、気持ちを落とさず一生懸命やっていればいずれ努力は報われることでしょう。そろそろ霧之助たちの夏休みも終わりを迎えると思われ再開される学校生活。学校生活なんてマンネリの繰り返し……けど、振り返ってみたら懐かしいっていうのが常道です。よろしければ感想をお願いします。十月十七日土、八時五十分雨月。