第十四話◆
第十四話
百合さんのことが若干気になったのだが追いかけることもできず僕は図書館から静かに出た。話を聞いてみて肩透かしを食らった気がしないでもない。時間を確認してみるともう生徒は帰る時間だ。この前帰宅時間を告げる放送があったのにのこっている生徒を先生がしかっているところを目撃したのだが、時間をちゃんと守るのも人として必要なことだということだ。
つまり、今の僕も見つかってしまったら怒られる可能性が高い……というより、怒られる。
こそこそ帰っていると後ろから誰かが走ってくるのがわかったのでなんとなく振り返った。
「あ、霧之助」
「悠……」
そこにいたのは白衣を着けている飛び級少女野々村悠だった。方で息をしているところを見ると走っている途中だったのだろう。
「どうしたの?」
「いや、別に霧之助を見つけたから走ってきたってわけじゃないんだけどさ……今から帰るの?」
「ん、まぁそんなところかな」
そういうと満足したようににこっと笑う。かわいいということは認めておこう。念のため。
「じゃあさ、一緒にかえろうよ」
「別にいいよ」
特に帰る相手もいないというわけで僕は悠と帰ることにした。
―――――――
「あのさ、ふと思ったんだけど悠って呼び捨てにするのもどうかなぁって思うんだ」
「え?そう?」
百合さんのことだってさん付けで呼んでいるのだ。年下なんだけど、同級生だし別にいいんじゃないのかって思うかもしれないけどそれもおかしい気がする。
「悠ちゃんって呼んだほうがいいのかな」
「……う〜ん、どうだろ?あんたが好きなように呼べば……けどさ、あの女のこと呼び捨てで呼んでなかった?」
「まぁ、妹だから」
そういうとスイッチが入ったらしい。僕の目の前で両手をグーにしてこういったのだ。
「それなら!あたしのこともやっぱり呼び捨てで呼んでよ!」
「えぇ……だって、悠子は妹だし……」
「あたしだってそんなに変わらないじゃん!あの女と歳一緒だし!」
いや、結構変わってくると思うよ?立場的にはお互い飛び級の同級生だけどさ。大体、悠は妹じゃないし。そんなに悠子のことが嫌いなんだなぁと思っていると首をかしげる。
「あれ?よくよく考えてみたら僕と悠子は同じ中学だったし……ということは悠も僕と同じ中学だった?」
そういうと目を見開いてこっちを見てくる。心なしか、顔が赤いような気がしないでもないが夕日のせいだろうか?
「そ、そうだけど……」
「一回も会わなかった?」
「さ、さぁ?あたしは覚えてないっ!用事思い出したから帰る!」
今も帰っていたのに明らかに挙動不審に走り出す。途中、こけたが(パンツが丸見えでああ、どじだなぁと感心してしまった)急いで立ち上がって姿を消してしまった。
「なんだったんだろ?」
何をあせっているのかわからないが急ぐ用ができてしまったのだろう。哀愁漂う姿を後ろにさらしながら仕方なく、一人で帰ることにした。
わかっているとは思いますがメインヒロインは悠子です。意外に思う方もいるかもしれませんが、メインヒロインだけが幸せになるって言うのも酷な話です。せっかくなんだから他の人たちも幸せにしたいものですね。大団円は無理だとしても、極力円に近づく努力はしていきたいと思っています。感想なんかありましたらお願いします。